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トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
18/20

第18話 準備

 宿屋を後にした2人は、西区から中央広場へ向かい歩いていた。

 妙なプレッシャーをまだ感じるが、とりあえず伝えなければいけない事があるため、ハルカに話しかけることにした。


「ギルドに行く前に装備を買いに行きたいんだけど。」

「商店は東区ね。でも今買うの?制限なしの武器買っても意味無いかもしれないわよ?」

「まぁLv20くらいまで素手でいけそうだけど、カモフラージュも必要だからなぁ。」

「なるほどね。お金には困らなそうだから、そっちのが重要なのね。」

「どうだろうな。森で稼いだようなものだし、かなり危険な橋渡ってあの額だったから余裕があるかは分からないな。」

「モンスター倒すだけでもハイペースだから大丈夫だと思うわよ。じゃあこっちね。」


 中央広場から東中央通路へ入る。そのままハルカが先導し進む。


「なぁ、広場から東に入った時点で色々な店があったんだが、素通りしていいのか?」

「中央近くは立地がいいから高級品が並んでるのよ。ジョブがLv10になったら買い換えるだろうし、安いのでいいんでしょ?」

「あぁ、武具店も複数の店があるのか。」

「えぇ、ただのゲームだったら各街に1店でいいんでしょうけどね。」

「そういうことなら適当に安いとこでいいよ。」


 武器屋だけでも複数あり、自分で作って売っている店や、工房から買い取って販売専門の店まで色々とある。そこには競争原理があり、相場が常に変動している。

 ただし、素材が値崩れした場合、供給が減少し影響が大きすぎてしまう。そのために冒険者ギルドが素材の買い取り・流通を占有し、素材価格は定額化しているのである。それにも係わらず供給が減って入手が困難になった場合はギルドで採取依頼を出し、通常買い取りよりも高くすることで補っている。


 東路も終わりに近づいた時、ハルカが1件の武器屋を指差した。


「あの店でいいんじゃないかしら。」


 周りの店と比べても一回り小さく、どうやら自作店のようだ。


「安いのでいいとは言ったけど大丈夫なのか?」

「販売専門の店だったら小さい所だと安い・悪いが並ぶんでしょうけどね。あの店は自分で作ってるから、値段も品質もそこそこで並んでると思うわよ。」

「なるほどな。」


 ある程度の大きさの店だと販売量があるため、仕入れ値や販売価格を抑えることができる。小さい店が値段で対抗するには質を下げざるを得ないのだ。


 その店に近づいて行くと、男の店主らしき人がカウンターに座っている。店の奥は工房になっており、誰かが金槌を金属に打ち付けている音がかすかに聞こえる。建物自体が防音処理されているようだ。


「いらっしゃい。」


 店主が店に入ってきた2人に声をかけた。


「どうも。初心者用の武器が欲しいんですけど。」

「ふむ、無制限の武器だな。種類は何がいいんだ?」

「杖と長剣でお願いします。」

「そっちのお嬢ちゃんは何にする?」

「あ、私は付き添いなので。」

「長剣は彼女用です。」


 ユウキが先に言った武器の内、長剣はハルカの分だと伝える。


「え?私お金ないわよ?」

「それに関しては貸すから、装備を整えてくれ。その方が早い。」


 ユウキは自分だけ装備を持ってパーティーするのは気が引けていた。それに初期装備ならば狩りですぐに返せるだろうとも考えていた。


「う~ん、あんまり借りたくないんだけど…そうね、早く倒せた方が返しやすいわね。すぐに返すわ。」


 ハルカが納得したのを見て、店主は棚から杖と長剣を2つずつ持ってきた。


「無制限は2種類あってな、材質は木だが威力が違う。」



  木の剣 :攻撃力+8

  木の杖 :魔力+8

  堅木の剣:攻撃力+13

  香木の杖:魔力+13



(そういえばこの世界の装備って磨耗するのかな…。)


 ゲームによって装備に耐久度の有無がある事を考え、このゲームはどっちだろうかと疑問に思うユウキ。


(生産と経済をリアル化してるなら消費が必要だし、減る可能性は高いな。修理で耐久度が完全に直らずに最大耐久が削れるのもあるし。)


「この剣はどれくらいもちますか?」

「あぁ木製だからな、削れて折れるまでが寿命だな。ちなみに修理はできないぞ。」


(そこまでリアルにやるのか。まさか修理できないとは…。)


「私はこっちの安いのでいいわよ。」


 ハルカが木の剣を指差す。今の話を聞いて、使い捨てならば借りた物は安いので済ませ、それ以後は自分で買い換えようと考えた。


「そうか、じゃあこっちの安い剣と杖をください。」


 ユウキもLvが上がるまでの繋ぎなので安いのを選ぶ事にした。


「品質はどうする?」


 店主が問いかけてきたが、ユウキはよく分からないので質問することにした。


「品質って何ですか?」

「ん?そうか聞いた事ないか。品質ってのは装備の出来具合で係る補正だ。普通の奴は今出した奴のように名前だけなんだ。ちょっと待ってろ。」


 店主が棚に向かうと、奥の方から同じ木の剣を2本持ってきた。



  木の剣+1:攻撃力+9

  木の剣+2:攻撃力+10



(なるほど、そういうことか。)


「こいつが補正付きの剣だ。無制限の装備はランク1だからな、補正値+1ごとに攻撃力が1上がる。ランク2の場合は2ずつ上がるんだ。粗悪品には-が付くからな気をつけろ。」

「へぇ~、値段はどうなります?」

「剣も杖も+0は800S、+1ごとに+100Sだ。」


 ユウキはハルカにどうすると目配せする。


「私は普通のでいいわ。」

「じゃあ普通の剣と杖で。」


「ハッハッハ、まあ品質の事を知らない初心者ならこれから始めた方がいいだろうな。合わせて1600Sだ。」


 ユウキは代金を店主に渡し、お釣りを受け取った。


「毎度!またどうぞ~。」


 ユウキは木の杖を自分のインベントリに入れ、木の剣をハルカに渡した。ハルカもそれをインベントリに入れる。

 2人は店主に見送られて店を後にし、防具屋へ向かった。


 防具屋は武器屋よりもどの店も大きかった。重装備・軽装備・布装備と種類が多い上に部位ごとに陳列するため、どこも大きいのである。かと言って全ての種類を置いている店は少ない。その店が懇意にしている工房の得意分野を、重点的に置いてある場合が多い。


 目的の防具屋に着き、商品を見て回っている時にユウキがもったいぶった言い方をし始めた。


「俺は布装備だな。ハルカは軽装備か…。え~~大変言いづらいのですが、残念なお知らせがあります。」

「お金が足りないんでしょ。」


 それ以外の理由はないため、直ぐにバレていた。


「財布の中身がバレてる!?」

「いやいや、あなたの唯一の精算現場に居たし、それ以後宿屋にしか行ってないし。」


 ハルカが顔の前で手を横に振りながら突っ込んでいる。


「別に全部買う必要はないわ。ユウキは直ぐにランク上がるし、私も適当でいいし。」

「まぁそうなんだが、マスタリがあるとフルセットで揃えたくなるじゃない?」



    レザーヘルム   :防御力+3

    レザーシャツ   :防御力+5

    レザーゲートル  :防御力+4

    レザーグローブ  :防御力+3

    レザーブーツ   :防御力+3


    コットンキャップ :防御力+2

    コットンチュニック:防御力+4

    コットンホース  :防御力+3

    コットングローブ :防御力+2

    コットンブーツ  :防御力+2



    軽装備マスタリ:軽装備時、防御力・速度・命中率上昇。

    布装備マスタリ:布装備時、防御力・魔法耐性・詠唱速度上昇、自分へのヘイト上昇量低減。



「最初に配布された防具は軽装備みたいだし、私は持って無いヘルムとグローブでいいかしらね。」

「う~ん、俺は詠唱速度上げたいから布装備マスタリなんだが。これって全部布装備じゃなくても効果あるのかな?」


 ユウキは店主に試着出来るか聞いた所、構わないとのことだったので、試しにコットンキャップを被ってみた。

 ステータスを呼び出して何度か着脱を繰り返す。確かにコットンキャップを装備すると詠唱速度が上がっている。キャップを被ったままでコットングローブを着けてみる。それでも追加で詠唱速度が上がっていた。


「1つ1つに効果があるみたいだな。これなら適当でいいか。」


 ユウキも最初に持っていなかった、コットンキャップとコットングローブを買う事にした。


「レザーヘルム300S、レザーグローブ300S、コットンヘルム200S、コットングローブ200S で1000Sになります。」


 代金を支払い、その場で身に着けて店を後にした。



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  九条結貴 Lv10 [メイジ]

    ジョブリンク [クラフター]

    ファイター:Lv01 スカウト:Lv01 メイジ:Lv08 クラフター:Lv08


    装備:木の杖、コットンキャップ、綿のシャツ、綿のズボン、コットングローブ、皮のサンダル

       ミネルヴァの結晶




  三島遥歌 Lv02 [クラフター]

    ファイター:Lv01 スカウト:Lv01 メイジ:Lv01 クラフター:Lv02


    装備:木の剣、レザーヘルム、綿のシャツ、綿のズボン、レザーグローブ、皮のサンダル

    借金:1400S



日刊ランキングに載ってからというもの、毎日ランキングが上がり続けてついに1桁になってしまいました。

普段自分がランキングを使って新しい作品を探しているのに、自分の作品が直ぐに目に入ってくるという衝撃。

読んでくださる皆さんの応援を胸に頑張りたいと思います。

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