表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
13/20

第13話 プレイヤーの追憶1

 右に見える木製の扉を開いて食堂へ入った。


 酒場の活気とは違い、こちらは談笑をしながら果実酒を飲むくらいの人が主のようだ。

 食事時からは少し遅いかもしれないが、それでも多くの人で賑わっていた。宿泊客以外も利用できるそうなので、近隣の憩い場になっているのかもしれない。

 プレイヤーもいたが、一人か数人で静かに食べていた。


 席を見回すと、空いている所があった。


「あそこが空いてるな。注文はカウンター…じゃないな、ウェイトレス式か。」

「えぇ、少し高い宿だから給仕は備えてるわ。」


 カウンターで注文し受け取る方式だと、席を確保しておく必要があるため、一人では注文し辛い。今は二人だが、今後の事を考えるとありがたかった。


「お金無いんじゃなかったのか?」

「必要経費よ。安い宿屋は…安いのよ…。」


 ハルカが何やら遠い目をしながらつぶやいている。

 まだ見たことはないが、耐え難かったらしい。流石に日本の中流層の生活環境は、世界的に高いレベルなので一定のラインは必要なようだ。


 席に座りメニューを探す。厨房に出入りする入り口の横に品書きが貼られている。


「懐かしい…。」

「え?何が?」


 ユウキがそれを見て思わず呟いた。


「あの品書きだよ。チェーン店だけでなく、個人店でも今は写真入りの電子ペーパーメニューだったりするだろ?」

「あぁ、そういうこと。でもどういう料理か名前だけ見ても分からないわよ。」

「幸い食材の名前は大きく違わないみたいだから、何とかなるんじゃないか?」

「試してみなさいな。」


 ハルカが自身有り気に勧めてくる。


「注文はあの人を呼ぶんだよな。すみません、注文お願いします。」


 ユウキが給仕に向かって手を挙げ呼ぶ。すぐにその人がやって来た。


「お待たせしました。ご注文を伺います。」

「ギムリの焼魚定食と、ホーロー鳥の串焼き、アスラ茶を。ハルカは?」

「グラン鳥の唐揚げ定食と、アスラ茶で。」


 給仕は紙に注文を書き留めた。


「ギムリの焼魚定食、ホーロー鳥の串焼き、アスラ茶で、55Sになります。」


 給仕はユウキの注文を復唱し代金を請求した。

 会計は最後ということはなく、その場で支払うようだ。よく見るとレジのような会計場所は無い。


「銀貨なんですが、お釣りありますか?」

「はい、大丈夫ですよ。」

「では、これで。」


 給仕に銀貨を渡す。給仕は服のポケットからお金を確認すると、お釣りを渡してきた。


「大銅貨4枚、銅貨5枚のお釣りになります。」

「はい、確かに。」


 お釣りを受け取りインベントリに入れる。


「では続いてのご注文が、グラン鳥の唐揚げ定食と、アスラ茶で、45Sになります。」


 ハルカはインベントリからお金を取り出そうとするが、動きが止まった。


「あ、私も銀貨だけど大丈夫かしら?」

「少々お待ちください。……。はいっ、大丈夫です。」


 給仕はポケットのお金を確認している。あまり多くはポケットで持ち歩けないので、厨房に戻る都度減らしているのだろう。


「じゃあこれ。」


 ハルカは給仕に銀貨を渡し、お釣りを受け取る。そのままインベントリに入れた。


「では、出来上がるまで少々お時間を頂きます。」


 給仕は一礼し厨房へ向かった。


 注文が一段落し、ユウキは待っている間何を話すべきか考えていた。


(流れで一緒に食事する事になったが、そもそもさっき会ったばかりだ。何を話せばいいんだ…。)


 飲食店で相席いいですか?と聞かれ、相席することになった時のような気まずさが湧き上がっていた。プレイヤー同士である事や、事前に話しをしていた分まだマシだろうが。


「なんで行き成りヨソヨソしくなってるのよ。人のことはるるん言った癖に。」


 バレていた。そして根に持っていた。


「あぁ、よく考えたらさっき会ったばかりなのに、なんで一緒に食事する事になってるんだろう。」


 開き直ってぶっちゃける事にした。


「……。なんでだろう?」


 ハルカも気づいたようだ。途端にソワソワし出した。からかいたくなってくる。

 元々はハルカが声を掛けてきて、能天気呼ばわりしたのが始まりなのだが。


「ま、まあいいわ!とりあえず今の私達プレイヤーの現状について確認しましょう。」

「そうだな。何から確認する?」

「色々聞きたいことはあるけど、1日早くこっちに来ている私達の状況から言うわ。」


 ハルカは姿勢を正して語りだした。


「ギルドでも大筋は話したけどね。私達は初日に次々とグランポリスのポータル周辺にログインしたの。そこでチュートリアルクエストを探したのだけど、見つからなくて。」

「あぁ、頭の上にアイコンもそれっぽい目印も見当たらなかったな。」

「チュートリアル無しなんてありえないわ。私達はイベントで神殿で転職する説明を受けたから分かったけど。システムの説明がなければ他の人は全く分からないのに。」

「そうだな。だがそれは、ここにいるプレイヤーが全員優待者だからということも考えられる。」

「事故じゃなくて、故意って事?ここはわざと独立しているサーバーで、一般参加者はチュートリアルのある別サーバーに接続しているって?」

「可能性はありえる。」

「……。まぁ口論したい訳じゃないから、可能性としては覚えておくわ。」


「それで、見つからなかったんだろ。どうしたんだ?」

「とりあえず他のゲームと一緒かなと思ってメニューと念じたのよ。そうしたらメニューが表示されたのね。

 他の人は直接スキルやステータス、インベントリを開いているらしい人もいたわ。」


「そうしたら…、武器が無い事に気づいて声を上げた人がいて。それからは周りの人と確認して、全員持って無いことが分かったわ。」

「なんで無いんだろうな?」

「ミスだろうって事になったんだけど。生産系を宣伝してた事から、全部プレイヤーで作るためにそうしたんじゃないかって意見もあったわ。」

「全部って、防具はあるのに?」

「キャラクターじゃなくてプレイヤーの姿そのままだから。下着姿とかで放り出すのはまずいからじゃないかって。」

「…なるほど。でもそれじゃあ、お金稼いだらNPCから武器買えるじゃないか。」

「そうね。それで、後で店を確認したんだけど、この街の武具店にはやっぱり色々なランクの装備が揃ってたのよ。」

「ランクってLv制限のことか?」

「えぇ。店主のNPCに聞いたらクラフターの鍛冶スキルにLvがあって、それに対応したものまで作れるみたい。Lv制限はその鍛冶スキルのLvに対応してるって。Lv1は無制限、Lv2は制限Lv10、Lv4は制限Lv20ってなるらしいわ。」

「Lv3が抜けたぞ。」

「間に1つ挟むみたい。Lv3は制限Lv10のアイテムの上品質が、たまに出来るようになるって。Lv2だとどれだけやっても普通のしか出来ないらしいわ。」

「なるほど。鍛冶スキルについては良く分かったけど、結局装備は普通に売られてたんだな?」

「えぇ、だから結論としてミスだろうって事になったの。その結論が出たのは昨日の夜なんだけどね。」


------------------------------------------

九条結貴 Lv10 [メイジ]

  ジョブリンク [クラフター]

  ファイター:Lv01 スカウト:Lv01 メイジ:Lv08 クラフター:Lv08


  お金: 0(BG) 0(G) 5(BS) 5(S) 8(BB) 5(B)



三島遥歌 Lv02 [クラフター]

  ファイター:Lv01 スカウト:Lv01 メイジ:Lv01 クラフター:Lv02


  お金: 0(BG) 0(G) 0(BS) 0(S) 7(BB) 5(B)


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ