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8話 修理

明けましておめでとうございます!

今年も頑張って書いていきますので、よろしくお願いします。

 避難所に到着すると、六花は皆に毛布を配り始めた。

 皆が六花にお礼を言い、嬉しそうに毛布を受け取っていく。寒さに身を震わせることがない。ただそれだけのことなのだが、今の彼らにはありがたかった。

 しかし、まだ完全ではない。最終目標は、一人に一つずつベッドがあり、不自由の無い環境作りだ。まだまだ出来ることはたくさんある。

 六花は自分が皆の役に立てていることが嬉しく、思わず表情が緩んでしまう。そんな六花を見て、他の皆まで表情が緩んでしまう。

「……」

 そんなふわふわとした空気を横目に、零は黙々と毛布をリュックから取り出す。無理矢理に押し込んだせいで小さくなってしまった毛布を、零は丁寧に広げていく。

 広げた毛布を六花に手渡すと、六花は緩んだ表情で毛布を受け取りに来た男に手渡す。渡された男は六花と同様に表情を緩ませた。

 何が起きているのか理解が出来ず、零は作業に集中するしかなかった。

 一通り配り終えると、六花は空になったリュックを片付ける。毛布を手渡す度に、自分が役に立てているという実感が持てる。今の自分が頑張れるのは、きっと皆の笑顔が見たいからだ。六花はそう考える。

 まだ数は足りないらしく、あと十数枚は必要だろう。明日も廃デパートに向かい、持ちきれなかった毛布を回収しなければ。

 明日の計画を練っていると、不意に後ろから声をかけられた。

「天川さん、調子はいかがかな?」

 佐倉だ。上から指示を出すだけの彼が現れたのは珍しいことで、六花は返事を忘れて呆けてしまう。その呆けた六花を見て、佐倉は首をかしげる。

「なぜ呆けているんだ?」

「あ、すいません」

 六花は慌てて真面目な表情を作る。佐倉はゴホンと、若干大袈裟に咳払いをすると本題に入った。

「無線機を拾ったと聞いた。それは今どこにあるのかな?」

「無線機なら零さんに渡しました。損傷が激しかったので、零さんに修理を依頼しました」

「そうか」

 六花から報告を受けると、佐倉は顎に手をあて、いかにも考えているというようなポーズをとる。若干間をおいてから、再び口を開いた。

「それと、もう一つ。物資調達をするには、リュックでは難しいだろう。手のあいている者に手押し車を作らせたから、それを使うといい」

 佐倉が右を指差す。そこには廃墟で集めた木材を使って作られた手押し車があった。

「あ、ありがとうございますっ!」

「いやいや、お礼を言うのはこっちだ。物資調達をいつもありがとう」

 佐倉に感謝され、六花はさらに気分が良くなる。自分だって役に立てる。そんな自信が高まり、六花は喜んだ。

「手押し車は少し重いだろうから、必要があれば誰か力のある者を連れていくといい」

「はい、ありがとうございますっ!」

 六花は佐倉と別れると、自室に向かう。今日の仕事は全て終わり、特にすることもなくなってしまった。

「まだ十時……ふわぁ」

 腕時計を確認しながら、小さくあくびをする。まだこんな時間なのだが、今日は睡魔が早く現れたようだ。

 眠気には逆らえず、六花はベッドに倒れ込んだ。




 静寂に包まれた室内に作業音が響く。中に居るのは零一人だけだ。六花から受け取った無線機の損傷はかなり酷いが、直せないレベルではない。

「……」

 黙々と作業を進める。修理に必要な材料や道具は倉庫にあったため、作業環境に不自由はない。

 物資調達から帰ってきてから五時間もの間、零は自室に込もって作業をしている。既に皆は寝静まり、起きているのは彼くらいだろう。

 作業に集中しているせいか、額を汗が伝う。手で汗を拭い、再び作業を再開する。微調整を終えると、ようやく無線機の修理が完了した。

 修理が完了したため、後は生き残りがどれくらいいるかだ。たとえ無線機があったとして、他に無線機を持った集団がいなければ意味がない。

 今生き残りがいるか探してもいいが、皆が起きている時間帯の方が都合がいいだろう。佐倉がいなければ決定は出来ない。

 眠気は大してないが、長期的に考えれば寝ておいた方がいいだろう。突然の襲撃に備え、武器を装備したまま寝る。零の部屋にはまだベッドは無く、毛布を被るだけだ。

 零は毛布を羽織るように被り、壁に寄りかかって眠りについた。


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