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6話 日常品

すいません、ケータイを修理に出していまして、更新がしばらくできていませんでした。

ケータイは帰ってきたのですが、中に入れていた書き溜めやプロット、設定集が消えてしまい……

励ましていただけると嬉しいです。

 部屋に戻ると、六花は自室のベッドに腰かけた。ベッドといっても簡素なもので、木で長方形の箱を作って布を敷き、その上に寝転がって布団を被るだけである。

 今でこそ慣れたものの、以前は木の固さに体が慣れず、毎朝節々が痛かったくらいだ。自分もこういった状況に慣れてきたのだと、六花は喜ぶに喜べない微妙な感情を抱く。昔寝転がっていたフカフカの布団が恋しいが、弱音は吐けない。

 六花はまだ子どもだということから、大人たちは優先して六花にベッドを作ってくれたのだ。今でも、全員が布団にありつけているわけではなく、半数近くが雑魚寝をしている状況だ。自分はベッドがあるだけ恵まれている。

 だからこそ、皆が快適に過ごせるように、調達班として物資を集めなければならない。

 明日は、少し遠出になるかもしれないが、日常品が多くありそうな場所を回ってみるべきだろう。

 明日の朝にでも零と話し合うことにしようと立花は考えた。

 のんびり思考に耽っていると、コンコンとドアがノックされた。

「六花、いるか?」

 ドアの向こうから声が聞こえた。

「あ、はいっ! 今行きますっ!」

 扉を開けると、案の定、そこには零が立っていた。

「壊れた無線機はどこにある?」

 そう聞かれて、六花は零が先程無線機を直すと言っていたことを思い出す。六花は棚の上に置いてある無線機を取ると、零に手渡した。

 彼は無線機を手に取ると、細かく見回し始めた。無線機は損傷が激しく、素人の六花が見ても、かなり痛んでいるように見える。一通り見回すと、零は小さく頷く。

「外傷は激しいが、内部は思っていたよりマシみたいだ。持っていくぞ」

「あ、はい……」

 六花の返事を聞く前に、零はスタスタと去っていく。

 なかなか零のペースには慣れないなと、六花は苦笑した。

「凄いな、零さんは……」

 意識せず、そんな言葉が漏れる。

 確かにそうだ、零は魔族を倒せるほどの実力があり、なおかつ機械を修理できる。まだ知らないだけで、まだまだ特技があるように見える。

 六花も人一倍の努力はしており、凄く役立っているとまではいかなくとも、十分に手伝えているはずだ。

(私も頑張らなくちゃ……)

 六花は気合いを入れ直し、明日の物資調達の計画を練る。




 翌日。

 六花は目を覚ますと時計を確認した。

「六時、ふわぁ……」

 口元を押さえながら、小さくあくびをする。計画を練ることに夢中になっていたせいか、気付くと時計は四時だった。慌てて眠りについたのだが、やはり眠気がひどかった。

 ドライアイ気味の目をごしごしと擦ると、六花は身支度を整え始めた。いつも通り、ジーンズとTシャツを着て、その上に厚手のコートを羽織る。厚手のコートは暖かいが、固さもあって重いため、あまり六花のような少女には向いているとは言えない。

 しかし、六花が大切に扱い毎日着ているのは、崩壊が始まったあの日からだった。

 両親と共に過ごしていた休日。何気ない日常を壊したのは、どこからともなく現れた魔族たちだった。逃げ回るには窮屈なこの町で、六花はすぐに魔族に追い詰められてしまう。その時に両親は、六花にこのコートを渡し、自分は囮となって道を開いたのだ。

 悲しいが、そのせいで立ち止まってしまったら両親に申し訳ない。

 六花は眠い目を擦りながら、基地の出口へ向かった。時間はまだまだ余裕があり、零もまだ来てはいないだろう。

 六花はそう考えていたが、零は六花の予想を裏切り、短刀のようなものの手入れをしていた。

「おはようございますっ!」

 元気良く挨拶をすると、零が「ああ」とだけ返事をする。素っ気ない返事だが、会話が出来ただけで六花は嬉しかった。

 今はよくわからないが、恐らく、自分が零に抱いている感情は強い憧れだろう。出会ったばかりで会話もあまりしていないのだが、六花は彼がどのような人か、頭の中で思い描いていた。

「行くぞ」

「はいっ!」

 そんな彼に連れられて、六花は物資調達へ向かう。

 外はいつもの通り暗く、六花の不安を煽る。しかし、隣には零がいる。そんな安堵からか、六花は恐怖を少しも感じていなかった。

 零は注意深く周囲を見回しながら歩いていく。

「今日はどこまで行くんだ?」

「今日は北へ四キロ行ったところにある日常品店です。少し遠いですが、日常品が不足しているので」

「そうか」

 零は頷くと、再び周囲の警戒を始める。

 会話が続かないせいか、六花は気まずくなる。

「きょ、今日はいい天気ですねっ!」

「空は真っ暗だが」

 慌てて捻り出した言葉は失敗に終わってしまう。なんとか会話をしたいが、話題が浮かばないために沈黙が続いてしまい、余計に気まずくなってしまう。

 再び六花が口を開こうとするのと同時に、零が人差し指を立てて静かにするようにと合図を送ってきた。

 六花が口を閉じると、零は前方を指差す。六花がその方向を見据えると、犬に角が生えたような生き物が数匹いた。動き回っているせいで数は把握できないが、中央にいる二頭を持った角犬がリーダーだということは六花にも把握出来た。

 角犬はこちらを見て興奮しているのか、威嚇するように吠えている。

「昨日はいなかったのに、どうして……」

「やけに警戒されているな」

 恐らく、彼らの縄張りなのだろう。しかし、自分達が目指しているのはその先にある日常品店だ。どれだけの範囲かもわからない角犬の縄張りを、時間をかけてまで避ける必要はないだろう。

 零の考えを理解して、六花は頷く。

 零は銃を両手に一つずつ持つと、前へ突き出すように構える。その動きを戦闘体勢と理解したのか、角犬たちはこちらに向かって一斉に走り出した。

 零は落ち着いた様子で角犬たちを見据える。ある程度距離が詰まってきた辺りで、零の体に赤い光が浮かび上がった。六花を魔族から助けてくれたときと同様に、赤い光が模様を作り出している。零が数回引き金を引くと、幾つかの閃光が走り、角犬たちが次々に倒れていく。

 向かってきた角犬を一掃すると、リーダーだと思われる二頭を持った角犬が飛び出してきた。一蹴りだけで五十メートルはあろうかという距離を詰めてきたのだから、相当な脚力を持っているのだろう。人間の体では、一蹴りと耐えられない。

 体長は三メートルはあろうかという巨大さで、それが動物ではなく魔物なのだということを理解させる。

 しかし、零は臆するどころか自分から向かっていく。

 体の光をさらに強めながら、角犬に向かって飛び出していった。迎え撃つように角犬が前足を振り上げるが、それが振り下ろされる前に零が懐に潜り込んだ。零は右足を大きく上方向へ突き出す。腹部に強烈な蹴りをくらった角犬は、その巨体を空中に放り出される。

 もはやただの的と成り果てた角犬を、零は無言で撃ち抜いた。落下してきた角犬はピクリとも動かず、すでに命を絶っていることが窺える。

 「行くぞ」

 零は、まるで何事も無かったかのように歩き出す。

 「はいっ!」

 頼りになる人がいるお陰で、六花は安心して物資調達に向かえる。

 どれくらいか歩いたところで、目的地が見えてきた。

 「デパートか」

 魔族の襲撃に遭ったにも関わらず、そこはまだ、原型を留めていた。


間が開いたせいで文章力が落ちているとかは……ありませんよね?

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