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54話 決意

 零は次のフロアへ向かう階段を降りていた。託されたナイフを強く握りしめ、力強い足取りで道を進む。

 到着した第二フロアは直線で、どこまでも道が続いているような錯覚に囚われる。

 その奥に居るであろう存在を見据え、零は歩き出した。

 その瞳には怒りや悲しみによる強い憎しみの感情が渦巻いていた。

 ウォーライクの自己保身のために、いったいどれだけの人間が犠牲になったのだろうか? どれだけの人間が、今の己のような感情を抱いたのか?

 零は今までの事を回想する。

 ウォーライクを脱出し、暗やみの中をひたすらに歩き続けた日々。道中で出会った惨劇は今も零の網膜に焼き付いたかのように残っている。

 その途中で六花を助けたのは、もともとは罪滅ぼしのつもりだった。

 避難

所での生活も然り。少しでもウォーライクの下で働いていたという罪悪感を消すため、零はそこに残ることを決めた。

 故に、避難所の崩壊は悪夢の体現だった。どうにか救い出せたのは六花と石井の二人だけで、他の皆は息絶えてしまった。

 己の力不足を嘆き、そしてそれを指示したウォーライクを憎んだ。抑えようのない怒りをぶちまけようと考えたところで、止めた。

 自分の横には、涙を流し悲しむ少女の姿があった。その涙の原因を間接的だとはいえ作ってしまった零は、その少女を差し置いて怒ることなど出来なかったのだ。

 零はそのとき強く思った。自分は罪滅ぼしをしなければならない。そのために、六花と石井を守らなければならないと。

 しかし、気づけば二人は零にとって大きな存在となってい

た。

 罪滅ぼしのために同行している訳ではない。共に暮らす、大切な仲間だと思えた。

 今は冷静にならなければならない。大切な仲間を守るために、勝たなければならない。

 帰ったら、また手料理を食べさせてもらおう。そう考えた零の口元はゆるんでいた。

 幾ばくかの時間が経ち、長い通路は終わりを見せた。目の前に立ちふさがるのは、やけに飾られた大きな扉。その奥に感じる二つの気配はこの惨劇の元凶――黒木と菊島のものだった。

 零は深呼吸をすると、刀を抜く。そして、空いた左手に銃を構える。

 ここで全てを終わらせる。

 強い決意と共に、零は扉を蹴破った。


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