52話 空間爆破
「チッ!」
翔のすぐ目と鼻の先にある空間が弾けた。辛うじて躱してはいるものの、激しく体力を消耗しているせいか、徐々に攻撃との差が詰まっていく。
勝負は圧倒的に劣性だった。素早く小回りの利く動きが武器である翔にとって、自在に空間を操り移動を制限してくる黒江は天敵とも言えた。
未だに翔は黒江に傷一つどころか、一メートル以内にも入れていないのが現状だった。
今はひたすら回避行動に集中するしかなく、その回避すら限界が近づいていた。
「なんだ、結構疲れてるみたいだね。そろそろ終わりかな?」
「煩えな」
そう言葉を返すも、その表情に余裕の色は無かった。かれこれ十分近くもの間、翔は黒江の放つ空間爆破を躱し続けてきた。常に集中力をフルで稼働し続けているのだ。
その中で、翔は黒江の空間爆破の分析をしていた。そして、その利点と欠点を正確に把握していた。
戦況を変えられるであろう欠点は三つあった。
一つ目は、黒江の視界に入っている場所しか空間爆破が出来ないことだ。翔が物の影に隠れたとき、黒江は空間爆破をしなかった。
これは死角に入れば攻撃をされないということだった。
二つ目は、爆破までにタイムラグがあることだった。場所を指定し、爆破するまでには僅かながら時間があったのだ。
これは躱すことが可能だということだった。
三つ目は、同時に二つ発生させることが出来ないということだ。連続で空間爆破を引き起こすことは出来るが、同時に二ヶ所や三ヶ所を爆破出来るわけではないようだ。
これも合わせ、翔にもほんの僅かなものだが勝機があるということがわかったのだ。
しかし、攻撃に切れ目はないため、翔は僅かな隙を狙うしかない。それこそまさに、サイコロで同じ目を連続で出し続けるくらい難易度が高く、可能性が薄いものだった。
しかし、翔はその僅かな隙をひたすら待ち続けていた。が――
「――ッ!」
体力の底が見えてきた。既に交わすことすらギリギリとなり、隙を見つけて攻撃、などということは実現不可能な状態となっていた。
翔の疲労は隠しきれず、相手も翔に限界が来ていることに気づいていた。それでも辛うじて躱していられるのは、翔の生への執着心のおかげだった。
(何か……何かねえのかよ……)
考えようにも、生き残る方法は見つからない。もしこの場に居たのが零や夜千夏だったならば、遠距離からの攻撃で反撃が出来ただろう。
しかし、翔は近接特化の戦い方だ。その手に握るナイフは今の状況では頼りなく思えてしまう。
(いや、コイツを……)
次の攻撃を躱すと、翔は体を捻り、遠心力を加えながら飛ぶ。それは相手から見ればただ転倒しただけのように見えていた。
「もらった!」
翔の視界が大きく歪んだ。それは黒江の攻撃範囲が広がったわけではなく、翔の体が空間爆破の位置に入っているためだった。
翔は体に乗った遠心力に任せ、ナイフを黒江に向けて放つ。案の定、ナイフは黒江の胸を捉えた。
刹那、翔の周囲の空間が弾けた。