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27話 魔道具

 翌日。東條の研究室を訪れた零と夜千夏は部屋の散らかりように驚いた。丸められたり破られたりした紙が散乱しており、それには複雑に組み合わされた印が書いてあった。その複雑さは零の持つ魔導銃よりもさらに複雑だった。

 辺りには魔道具と見られる武器が散乱しており、研究成果の良さを期待させる。

「こんにちは、零さん、夜千夏さん。どうぞ、座ってください」

 零たちが腰かけると、東條は刀を持ってきた。刀身に彫り込むように印が刻まれており、武器というよりは美術品と言った方が適当かもしれない。そんな美しさを備えた刀を受け取り、零は光を走らせてみる。

 赤い光が走り、刀が妖しく煌めく。魔導銃を持ったときよりもさらに体が軽く感じ、感覚も冴えている。複雑な印が刻まれているのは、それだけ多くの機能があるということだろう。

 刀を鞘にしまう。重さも若干軽くなったように感じた。

「どうでしょうか?」

「凄いな、これを一晩で作ったのか」

 零の驚く表情を見て、東條は安堵する。東條としてはまだ満足したわけではないが、二人にとっては想像以上の代物だった。

「この複雑な印にはどんな機能がある? 身体強化だけではないのだろう」

「えっと……今ある機能は身体強化と斬撃ですね」

「斬撃……?」

「はい。多少体力の消耗が激しいのですが、威力を高めた一撃を放てますよ」

 威力を込めた斬撃は、ある程度ならば応用が利くらしい。夜千夏のように光の刃を飛ばすなどということも可能だ。

「では、僕はこれで。まだ魔道具の研究は済んでいませんから」

 東條はさらに奥の部屋に入っていく。何があるか気になったが、きっと入れてはもらえないだろう。内側からロックをかけたところを見ると、何か大切なものがあるのようだ。

「さて、この後は暇かしら?」

「特に無い」

「そう。なら、手合わせでもしない? 私なら近接戦闘を教えられるわ」

 確かに、夜千夏から近接戦闘を教わればかなりの戦力上昇が狙えるだろう。問題は、夜千夏に熱が入りすぎて、零の身が危ないということだ。

 特に断る必要も無いだろうと考え、了承した。十六夜をうまく扱えれば、以前のような失態はしないはずだ。

 零は夜千夏と共に中央へ向かう。




 同日、昼。石井は南区で瓦礫の撤去をしていた。

「ふう」

 汗を拭い、息を吐く。ここ最近は毎日のように瓦礫を撤去をしているため、体重もだいぶ落ちた気がした。いや、確実に落ちているだろう。

 やや腹周りが気になっていた石井だが、気づけば肉も落ち、体も筋肉が付いてきた。体力も付いたおかげで仕事も捗り、雑談をする程度の余裕はできた。

「おお、石井。調子はどうだ?」

「だいぶ捗ってますよ。丸さんの方はどうです?」

「こっちは微妙だな。若いのがあんまり働かないんだよな。すぐに息が上がって、情けないったらありゃしない」

「ははは……」

 振り返れば、疲労でへたばっている若者たちがたくさんいた。水を飲んだり腕を冷やしたりしながら休憩をとっている。

「石井はよく働いてるからな、頼りになるよ。最近は体つきも良くなってきてるようだしな」

 石井の方をバシバシと叩きながら、丸山はがははと笑う。その力は強く、石井には少し痛かった。

「どうせなら、もっと鍛えてみないか? このご時世、何が起こるかわからないからな」

 確かに、と、石井は頷く。もしかしたら、零だけでは対応できないときがあるかもしれない。そういうときに少しでも戦力に加われれば、零も助かるだろう。

 力をつけるのは、自分や六花の身の安全のため。魔族たちが相手では非力かもしれないが、魔物が相手ならばどうにかなるかもしれない。事実、避難所で暮らしていたときには魔物と何回も戦闘があったが、生き延びることが出来た。大人四人がかりだったのだが。

 それでも、鍛えれば魔物と渡り合えるかもしれない。石井は丸山の提案を了承する。

「お願いします、丸さん」

「おうよ。俺はこう見えても、武術の心得があってな。実用的にするために色んなのを組み合わせてあるから、きっと役立つだろう」

 こうして、石井は丸山に戦い方を学ぶこととなった。


次回から新章です。

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