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片手生活

ゼ「良い子は真似するなよ?」

ゼレカVision


……こうなったら


自分の左手を壁にあてがう。そして一気に……


「……ふっ!」


グキッ


「痛って!!」


「ちょ、なにしてるの!?」


「あぁ……もしかしたら、逆向きにもう一度曲げれば元に戻るかなってな。痛たた……」


考え通りの結果だった。結構痛みは残ってるが、一応は動くみたいだ


「もう、無茶ばっかりして」


「ははは……」


軽く笑みを返して、もう片方の腕を壁に押し当てる


また痛いのか……


さっきと同じ要領で右腕を曲げる


バキッ


「………」


「ゼレカ?」


「………痛ってぇぇぇぇ!!」





「もう、馬鹿なことして」


「ははは……返す言葉もございません」


うん、痛かった。今だにジンジンしてるよ


右腕は……率直に言うと悪化した。それも粉砕骨折。痛みなんてもんじゃない、それこそ神経を直に触られたかと思った


「よいしょ、包帯はこんなもんかな。後は……」


俺の右腕に両手を近づけ、詠唱を始める


「……凍てつけ、『コールドブレス』」


包帯の上から冷気が差し込んでくる


「はい、応急処置はできたよ」


「ありがと。しっかし、よく考えたな」


右腕を固定するのにどうするかと思ったら氷で固めるなんて、考えもしなかった


「前にソルが、骨折したら固めるのが一番よ、って言ってのをおもいだしたの」


「流石ソルだな。的確な処置方法だ」


セメント代わりに氷か……こっちならではの対処だな



「エレス、これから…」


きゅるきゅる〜


どうする?と尋ねようとした矢先に空腹を告げる悲鳴が聴こえた


「……とりあえず飯にしようか」


「そうだね。朝から何も食べてなかったっけ」


お互いの顔を見合わせて食堂に向かう。余談だが、腹が鳴ったのは俺である。エレスだったら少し赤面していただろう





「あっ、姫様」


「こんにちはクレア」


ちょうどクレアが居た。結構都合よく調理をしていたらしい


「後少しで出来ますから、テーブルでお待ちください」


「うん、わかった」


機嫌良くイスに座って待ってる


「クレア、何か手伝おうか?」


尤も、今は右腕が使えないから大したことは出来ないが。それにクレアは料理長で、それに見合った腕である。妄想癖は強いのに


「いえ、大丈夫ですよ♪それよりも、右腕どうしたんですか?」


チラッと俺の右腕に視線を落とした


「ああ、ちょっと馬鹿やらかしてな」


「珍しいですね、いつもはミスなんて犯さないのに。いや、姫様とは毎晩過ちを犯…」


「クレア、鍋が噴き零れてるぞ」


適当な事を言って逃げ出す


本っ当に妄想癖が強すぎる……あながち間違ってなさそうだけど。それにしたって毎晩は考え過ぎだ


頭の中でぶつくさ言ってエレスの隣に座る


「出来ましたよ」


クレアが持ってきた料理は、相変わらず食欲をそそられる物ばかりだった


焦げない程度によく焼かれた肉が、コーンスープのような香ばしい香りを漂わせている。色合いの良いサラダが視覚を楽しませてくれ、淡い橙色のスープから立ち上る湯気が暖かさをくれる


あぁ……美味そう。ただその言葉しか出て来ない


「いただきます♪」


隣でエレスが肉を食べ始めた


「いただきます」


俺も空腹なのでいただくことにする


……あれ?よく考えればどうやって食べるんだ?今まで生きて、いや死んでたか、とにかく過ごしてきてずっと右利きだったよな


だが右腕はピクリとも動かない。だったら左腕を使うしかないが、未だに動かすと痛む


「……」


きゅるきゅる〜


……仕方ない、我慢するか


もう痛みを無視してスプーンを持ち、スープを掬い口に運ぶ


「美味いな……」


本当にクレアは料理の天才だ。多少かなり妄想癖があっても許されるほど上手だ


今度料理を習おうかな……


口に含んだスープを飲んで率直な感想を述べる


俺の作る料理は全部向こうの世界のだからこっちだと手に入りづらい。創造できる俺には障害にもならないけどよ


「痛っ……」


美味い物を美味いと感じてはいても、左腕が感じてるのは別のものだ。よっぽど酷い曲がり方だったのだろう


スープを飲む度に旨味と痛みが味わえる。後半いらね


「ごちそうさま。ゼレカ、全然食べてないね?」


「左腕が痛むみたいで、中々思ったように食べられなくて」


実際、スープはスプーンがあるからなんとかなるが、肉は無理がある。片手で切って食べるというのは無理だろう


「じゃあ私が食べさせてあげる」


「へ……?」


自分のスプーンでスープを掬い、俺の前へ差し出される


「はい、あーん」


「ちょ、エレス、待った」


今周りにはクレアを含めて四、五人程メイドがいる


え、なにこの羞恥プレイ


「お腹空いてるんでしょ?あーん」


「……それはそうだけど///」


恥ずかしくて出来るわけないだろ!!何故か俺は風呂やこういったシチュエーションには羞恥心が反応する。ベッドとかだったら全く無いのだが……不意打ちでキスとかするし


と、逃避するも食欲は目の前の物を欲しがってる


「あ、あーん///」


ぱくっ


エレスの手から渡されたそれは、先程よりも美味く感じた


「美味しい?」


「……ああ///」


周りからの微笑ましい視線が痛い!誰も見てなくても恥ずかしいのに、余計に恥ずかしくなるじゃないか!


「じゃあ、あ。次はお肉を食べさせてあげる」


肉を丁寧に一口サイズに切って差し出してくる


「はいゼレカ。あーん」


「あーん///」


甘く味付けられた肉以上に、エレスの行為が甘い


そしてメイド達、微笑ましく笑うのを止めてください。そろそろ顔から火が出そうだから


それから何度がスプーンやフォークが俺の前を行ったり来たりしてる内に、エレスがドSの笑みを浮かべた

ヤバイ……絶対何かある


あの笑みは必ず意味がある、そう覚悟しても特に何もなかった


「これで終わりだよ」


最後の肉を差して口に運ばれると思ったら、自分の口に運んだ


まだ腹減ってたのかな?なんて考えも甘かった


「んっ!?///」


そのまま俺の口と重ねてきた。俺の口を開いて舌と一緒に肉を入れてきた。そのまま肉を噛まずに飲んでいた


エレスの小さな舌が、口内を蹂躙していく。ぴちゃぴちゃと唾液が絡まる音が響き、顔は真っ赤に頭は真っ白になる


「はっ……美味しかった、口移し?」


「……美味かったよ////」


エレスも顔が赤くなっているが、あれは酸欠だろ。対して俺は羞恥でいっぱいだ。最後の肉の味なんて全く覚えてない


「部屋戻ろ」


「あ、ああ。ごちそうさま」


エレスに言われるまま手を繋いで食堂を後にする


クレアの妄想が暴走しない事を祈って。韻ふんじった。頭がおかしくなってる


「じゃあ私、ギガントゴーレムの破片を渡してくるから待ってて」


部屋の前まで来て、てくてく歩いて行ってしまった


落ち着け、ゆっくり深呼吸だ


「ふぅ……」


よし、落ち着いた。これ以上は俺がもたない。考えろ、考えるんだ……






「ゼ〜レカ、右腕動かないでしょ。だから洗ってあげるよ」


「風呂ならもう済ませた」


「え!?どうやって…」


予想通りだ。多分次は風呂に入ろうと言ってくると思ったぜ


「『瞬間装着』使って服脱いで左手だけで洗った」


もう痛みがどうこう言ってられる状況じゃなかったからな


「む〜……私の作戦がやぶられるなんて」


「またあんな羞恥責めされたらたまらないからね」


唸るエレスを優しく撫でる


こういう事にならいくらでも付き合うのになぁ


「……そっか!そうだよ!」


「なにが?」


「片手だけなら力付くで押さえつけられるよね」


「………いや、それは…」


言い終わる前にエレスの服が赤いローブへと変わる


「ふふふっ、覚悟はいい?」


「魔神化も出来ず片手も使えない俺に魔王化なんて多勢に無勢だよな!?」


じりじりと後ろに下がる


「えいっ♪」


「ぎゃあぁぁ!?」


呆気なく捕らえられた


「今回は大人しくしてくれないね」


「前は抜け出せる自信があったからね!でも今回は…」


「その時は自分でMだって言ってたよね」


「訂正、俺はSです!」


「ダ〜メ、私が満足するまで今日は付き合ってもらうよ♪」


「……何を?」


「[自主規制]だよ」


ああ……早く明日になってくれ

デ「クイズです。明日は何の日?」


ゼ「明日?……バレンタインか」


デ「と、いうわけでバレンタイン番外編です」

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