ナイトメア
エ「前の話のちょっと後のお話」
ゼレカVision
「霊花、実験よ」
「……」
母親に実験道具にされる
「霊花、これを飲め」
「……」
父親にモルモットにされる
「あ゛あ゛ぁっ!!」
「こんなことにも耐えられないの?失敗作ね」
母親に失敗作だと言われる
「げほっ、ごほっ!!」
「こんなものも拒否するのか、役立たず」
父親に役立たずと言われる
霊花……葉月霊花、その名前が意味するのは単純にして明解だ。幽霊のように消え、花のように散る
つまり、『要らないもの』だ。実験の為の道具でありモルモットである
人体実験……生きた人間を使って実験を行う事であり、日本では禁止されている。狂った科学者である俺の両親はどうにかそれを行いたかった。そして産まれたのが俺……葉月霊花だ
実験の為の道具である俺に、両親は教えなかった
愛を、優しさを、温もりを……
実験の為の道具である俺は、学んだ
痛みを、孤独を、悲しみを、涙を、恐怖を、絶望を。そして……狂った笑いを
父親も母親もお互いを愛してはいない。結婚すれば互いの研究を盗めると踏んでのメリットの一致だ
俺はそんな中に、『俺』を必要としない中に産まれた
母親の実験が失敗して、火事になった時の母親の最後の言葉
「お前なんか、産まなければよかった」
必要とされない中の存在の否定
父親の実験が世間にばれ、捕まる時の最後の言葉
「消えちまえ、この疫病神」
必要とされない中の存在の抹消
望まれて産まれたわけじゃない、否定はされても肯定はされなかった
もうやだ……消えてしまいたい……
「ねえ、あなた一人?」
そんな時に出会った希望
「……」
「私は叶って言うの、カナって呼んで。あなたは?」
「…………霊花」
「霊花……じゃあレイって呼ぶね」
「……カナ……」
「うん、レイ」
楽しかった
カナと居る時間はとても楽しかった
カナが学校に行く時は、俺も自分で手続きして同じ学校に入学した。両親はその筋では善くも悪くも有名だったらしく、金銭は心配しなくてよかった
中学になる時、英司、梨絵、多矩夜に会った。三人ともすぐ仲良くなり、俺とカナを含めた五人でいることが多かった
その辺りで、俺は自分の名前を『霊花』から『零花』に変えた。いつまでも不確かなら、零にすればいい。そう思って改名した
カナも、『叶』から『華那衣』に漢字を変えた。今でもなんで変えたのかわからない
それから高校に入学した。あっという間に夏休みに突入、って時に……
俺達は殺された
剣が胸を貫く感触、何も出来ない無力を思い知らされ、『死』を見せ付けられた……
―
――
―――
……夢、か。随分嫌な夢だぜ
胸に暖かい感触を感じる
「おやすみ……」
エレスが俺を触ってたのか
よく見るとボタンが全部開いてる
はぁ、全く姫さんは。イタズラ好きったらありゃしない。まぁ、それも含めてこの娘が好きなんだけどさ
エレスの頭を撫で回す
今度は嫌な夢じゃないといいけど……現実では君がいるから、我慢するか
「……おやすみ」
瞼を閉じる瞬間まで、エレスの顔を見てる
アラ「あぁ……もう、待ってよ〜」
メ「ヘタレ……もっと男らしくしてなさいよ」
アス「お兄ちゃん……縛っていいよね?」
ベ「……止めろ、お前達……うぉ!」
エ「えへへ、ゼレカ〜」
ゼ「…………好き勝手に都合のいい夢見すぎだ、全員」