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The end of memory

ゼ「運命の歯車は再び動き出す……」


デ「過去話ラストです」

エレスナーグは治療室に運びこまれて、治療を受けることになった


止血した意味がないらしく、徐々に傷口が拡がってるらしい


その原因は、さっき彼女から言われた通りなのだろう


赤血をもつ者の宿命、か


吸血悪魔である彼女にとって赤血以外を摂取できないというのは致命的だ


だけど、それは『悪魔』での常識……




カチャ


エレスナーグはベッドの上で右腕を点滴につながれていた


ソルーティアも医務係のひと達も赤血を探しに治療室からでている


相当エレスナーグの容態が悪いらしく、もって今日か明日が限界だといっていた


「……ゼレカ?」


「ああ」


「バハムートは?」


「約束通り、ちゃんと倒したよ」


「そう……ありがとう」


「いや、俺が勝てたのは君のおかげだ。『魔王化』しなきゃ勝てなかった」


「そんなことないよ。ゼレカは、私の願いを、約束を叶えてくれた。まるで神様みたいに」


「神じゃなくて魔王じゃないのか」


「ん〜でも、ゼレカは魔王じゃないし……そうだ!ゼレカの場合は『魔王』よりも『大魔王』よりも強くて、神様みたいだから『魔神』だよ」


「『魔神』か……カッコイイな」


「でしょ?」


……危険な状態だっていってたのに、こんなに明るいのは自分がもう永くないってわかっているからなのか?


「エレスナーグ…」


「エレスでいいよ。ゼレカにはエレスって呼んでほしい」


「そうか。じゃあエレス」


「なぁに?」


「教えてあげるよ。俺は一度死んだんだ」


「……え?」


「俺は大天使に殺された、ただの人間なんだ」


「人……間……」


「だから、この世界の常識は全く知らなかった。これが俺の全て」


俺がこの話をしたのは、君が今から死ぬからじゃない


「……そう、だったんだ。私と似てるね」


「似てる?」


「うん。私はお父さんとお母さんを大天使に殺されているんだ。それからは周りの大人達の態度が変わって、みんな私を狙った。赤血目当てでね。そして私のお兄ちゃんがその大人達を追放した。でもお兄ちゃんも王を継ぐってときに……」


「ごめん……辛いこと思いださせちゃって」


「ううん。ゼレカに聞いてもらってすっきりした。王になってから、ソル以外の誰にも頼らなかったから。全部私がどうにかしないと、って」


……思いもよらなかった


俺がエレスをほっとけないって思ったのは、華娜衣に似てるからじゃない……俺に似てるからなんだ


「……君は俺に似てるな」


「私があなたと?」


「うん。なんでも自分でしょい込むところも、他人に心が開けないのも、本当は臆病なところも」


「そっか……」


「俺は君のことが好きになったよ」


「私も。あなたが大好き」


「それはよかった。……さて、そろそろ寝たほうがいいよ」


「……怖い」


震えてる手をとる


「大丈夫。起きるまでずっと放さないから」


「……うん!約束、だよ?」


「約束だ。だから、安心しておやすみ」


「おやすみ……」


もう体力の限界だったのだろう……


「それじゃあ……」


俺が握っているのは点滴をしているほうの手だ


その点滴の基の方の管を外し、針をつける


そして……


ブスッ


「ぐっ」


俺の左手首の血管に突き刺した


ドクン


ドクン


俺の血が、管を伝ってエレスの中に注がれる


「お前はまだ生きなきゃいけないんだから」


さっきの言葉をもう一度言う


「はぁ……人間の血は赤いんだぜ。だから、君の宿命はもう終わり。これで普通に暮らせるさ」


ドクン


ドクン







…………

…………いつの間にか寝てたみたいだ


エレスの顔を見る


「よかった。顔に生気が戻ってる」


俺とエレスの管を抜き取り、包帯を巻いた


流石に流血が激しく魔術がつかえない


「……あれ?私……」


「気分はどう?エレス」


「ゼレカ……ってことは、私まだ生きてる?」


「当たり前さ。ちゃんとここに生きてる」


握っている手を見せる


「手、ずっと握っててくれたんだ」


「約束だからな」


「………」


ポタ


手の上に一粒の液体がこぼれ落ちる


「ゼレカ……グスッ、ありがとう……」


「そんな大袈裟な事でもないよ」


「グスッ……私、今までソル以外のひとから……グスッ、こんなに優しくしてもらったことないから」


ぎゅっ


手は放さず、優しく抱いた


「落ち着くまでこうしてるから」






「ありがとう。もう落ち着たよ」


「そうか」


手は放さずに解放する


「まだあんまり動かない方がいいよ。他人の血を大量に輸血したんだから」


「他人、って赤血のひと居たの?」


「ああ」


「でも、まだソルは帰って来てないみたいだけど?」


自分の人差し指を噛む


じわりと血がでてきた


「それはそうだよ。だって、俺の血を輸血したんだもん」


キョトンとした顔になった


「えっ、でも、私赤血じゃなきゃ輸血なんて……」


人差し指を見せる


「こういうこと」


「えっ!!?」


「人間はみんな赤血なんだよ」


「そうだったんだ……」


じ〜っと俺の指を見つめてくる


ああー……


「飲んでもいいよ」


「ふぇっ!?い、いや、いいよ!!」


「もう何年も飲んでないんでしょ?回復力をあげるって意味でも飲んで損はないと思うよ」


「……そ、それじゃあ///」


なんで赤くなったんだ?


かぷっ


「ひゃあ!」


「にゅ?どうひはの(ん?どうしたの)」


「いや、なんでもない……」


思いっきりなんでもあるよ


血を吸われる時、めちゃめちゃ気持ち良くなる


やっば……クセになりそう


チュウッ チュウッ


「もういいや」


「はぁ…はぁ…もういいの?」


俺的にはもっと吸ってほしかった


「これ以上飲むと久しぶりだから酔いそう」


「酔うんだ……」


人間でいうところの酒みたいなものだからか?


「ゼレカ……お願いばっかりしてわるいけど、もう一つお願いしていい?」


「ああ、いいさ」


「じゃあ……ずっと一緒にいて」


期待と不安が込められた瞳で見てくる


俺の答は決まってるけどね


「もちろん。ゼレカ(俺)の居場所は此処だけだから」


俺の答に満足したのか満面の笑みを浮かべている


「改めてよろしくね、ゼレカ!」


「こちらこそよろしく」


「ふふふっ」


「はははっ」


ガチャ


不意に扉が開かれた


「エレ…ス?」


ソルーティアが帰ってきた


「あっ、ソル。おかえ…」


ガバッ


「よかった……助かったのね……」


「うん……」


こうして見ていると姉妹のようだな……二人って……


「でも、どうして助かったの?」


「ゼレカが私に血をくれたの」


「え?だってゼレカさんは…」


「俺は赤血だよ。流石に身体の半分近くの血をエレスに輸血したから証拠はみせられないけど」


「そうですか……」


ソルーティアがエレスの方を向く


「あっそうだ。ゼレカはこれからもここにいてくれるって」


「!!そう……」


すごく穏やかな瞳でエレスを見ている


……あれ?本当に姉妹なんじゃないのか?


「ソルーティア、もう…」


「ソルでいいです。エレスが認めた方なのですから」


「そうか?ならソル」


「はい」


「もうエレスも安定してるみたいだから、俺は休ませてもらうわ」


身体の半分程は失血してるからな。そういえばよく死なないな、俺


「わかりました。ゆっくりお休み下さい」


「じゃあ、またあとでね」


「ああ。というかエレスも、半分程は俺の血なわけだから慣れるまで安静にしてなよ」


「うん」


ガチャ


………


………


「ここが……俺の居場所。とても暖かい……安らぐ場所。復讐に取り付かれた俺を正気にもどしてくれた」


大天使の事は一回忘れよう


けど、忘れちゃいけない


その時がくるまでは忘れよう


だって今は……


「こんなにも嬉しいから……」



――

―――


………そうか。そういえばそうだったな


『どうだ?ゼレカ。魔神化に必要なことはわかったか?』


「ああ……。全て、思い出したぜ」


『そうか』


「守る気持ちと煉帝剣、この二つだ」


『そういえばお前、煉帝剣ずっと使ってなかったな。どうしたんだ?』


「ちゃんとあるさ。大切にしまってある」


『ならばもどれ。お前の世界に』


「ああ!!」

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