悪戯夢(あくむ)┨終焉と始まり┠
悪戯夢編終わりです
「はぁ……はぁ……」
………走りながら考える
これは夢だと
でも、本当にあった『葉月零花』の思い出。『葉月零花』の……最後
「はぁ……あそこだ!」
身体は自由がきかない
俺の身体じゃないみたいだ
「華娜衣!」
角を曲がって路地に入る
俺の目に飛び込んできたのは赤い水溜まりだった
「!?」
「あん?誰だお前」
「まぁ誰であっても見逃すわけにはいかないけど」
白い服に身を包んだ男が三人いた
「華娜衣!英司!梨絵!多矩夜!」
皆の身体は紅く染まっている
「なら、さっさと始末するか」
「待てよアシュラ。俺にやらせろ」
「止め給えヴァジラ、アシュラ」
「お前等!いったいみん……な…に……」
ザクッ!
斬られた
アシュラでもヴァジラでもないもう一人の男……いや『天使』に
ドサッ
「どうだい?胸を斬られた感覚は」
「はぁ……んっ……か」
「はっ、ざまあねぇな!威勢のよさはどうした?」
「滑稽だね」
「て……めぇ…ら……みんなに…………何…しやがっ……た」
「ほう、まだ喋る力があるか」
「でも駄目ですよミカエル様。こんなのすぐに死にますよ」
「散り際の気力でしょう」
ミカエルは少しだけ口元を上げる
「おもしろい。最後の気力とやらを見てみたいな」
「はぁ………はぁ………」
ミカエルは華娜衣を俺の前に連れてきた
「彼女を助けたいか?」
「華娜…衣」
「今ならぎりぎり間に合う。早く治療し給え」
………
「まだ……生きて」
「ああ、まだ生きられるとも。今治療すればね」
「くっ……」
全身に力を込める
無理矢理立ち上る
「はぁ……はぁ……」
自分の胸からも出血してる。関係無い
「華娜衣……今…病院に…」
ドスッ
「がはっ!」
華娜衣ごと俺を貫く
そのまま力無く倒れる
「て……てめ…ぇ……」
「おや失礼」
「相変わらず酷い趣味で」
「ミカエル様、他の奴ら全員止め刺しといていいっすか?」
「構わないよ」
「や……やめ…!」
ドスッ
ザクッ
グチャ
「!!」
「ひっひっひ、どんな気分だ?」
「み……んな……」
「そろそろそこの彼女とお別れだよ、葉月零花くん」
「なん…で……俺の…名前………知って」
「だって、君が彼女達の友達だから」
アシュラが憐れむような目で見下す
「君が彼女達と一緒にいなかったから、私達は『今』彼女達を楽に消す事ができた。私達にとっては恩人てこと。その恩人の名前を知らないわけないじゃないか」
「……!」
「私からも礼を言う。君が今、彼女達といたらあと十年は消すチャンスが無かったからね」
「つまりはお前がこいつらを殺したんだよ」
「!!……俺が……殺した……」
「でもお前は運が良い。その罪を償うのに『天使三人』に償わせて貰えるんだからな!」
「………」
ミカエルが剣を振り上げる
「さらばだ、罪人よ」
……この時、俺は絶望した
世界の全てに
自分自身に……
そして始まりの会話へと続く……