勇者と共闘 封印
アラ「はぁ……」
アラクネVision
「そうか、とりあえずの危機は去ったと見て間違いないか」
「そうとも言えないんじゃない?あくまで私の見解だけど、多分また来るわよ?」
「メフィストもそう思った?」
「……明らかに陽動だろ」
「とりあえずまとめて倒して来たけど、油断はしない方が良いみたいだね〜」
『魔獣』……か。今回も手掛かり無さそうだわ。連携の執れてる魔獣だから今度こそって思ったのに、収穫無し
つい二、三年前の事が、昨日の様に思い出せる……
――
―
『はぁっ!!』
狼に似た魔物の頭に槍が突き刺さる。その後ろから穏やかで静かな声が奏でられた
『今ので最後か?』
『勇者』という称号が良く似合っている彼は、見ているだけで勇気を貰えたわ。そして、それに続いて優しくしっかりとした声が流れてくる
『馬鹿が、もう一匹だ』
『戦士』という言葉が服を来た彼は、不器用ながらも皆を助けてくれた。勿論、私も例外ではなくね
『ったく、戦場で油断すんな。俺がいなかったら死んでんぞ?』
『大丈夫、僕がいるさ』
『今気付いてなかったろ』
『そ、それはだな……』
『ふふふふ、ソウシ必死になってる』
『お前もだアラクネ。一々カッコつけて大振りになるな』
『はーい♪』
『……ホントに分かってるか?』
『隙あり!!』
『痛て、ソウシ!!』
『甘いなランダ。戦場で油断してると死ぬぞ?』
『上等だコラ、そこを動くなよ!』
『おい、待て、抜き身は反則だーー!』
『知るか!』
『二人とも、頑張って』
『てめ、魔法は卑怯だぞ!』
『勇者の魔法を受けてみろ!』
―
――
結局あの後私が止めるまでずっと鬼ごっこしてたっけ。全く、ソウシもランダも本当に楽しい人なんだから
「……もう少し残って様子見るか」
「それが良いね。ケラギアにいえば泊めてくれるよ」
「はい、私としても心強い限りです」
三人で魔物の巣に迷い込んだ時も、買い物した時も、学校に行ってた時も全部楽しかった。初めて魔界で会った日は驚いたけど、私達は変わらなかった
――
―
『お前が魔王か!』
『ええ、私がこのケルムノイドの魔王よ。ゆっくりしていってね』
『あ、どうも……』
『他に言う事あんだろ馬鹿が』
『悪事をナスお前を、僕は…』
『ナスがどうした、そりゃ野菜だド阿呆』
『ふふふふ、面白い人ね』
『僕は《アウグスト》の勇者、ソウシだ!』
『ランダだ』
『………え?宗矢と嵐打?』
『……ん?』
『……はぁ?』
『私よ、アラクネ』
『……』
『……』
『えぇぇぇえ!?』
『何だとぉぉお!?』
―
――
二人とも毎日会ってたのに私だって気付かなかったな。楽しい事は鮮明に思い出せる、だから『思い出』って言うのかしら?……なんて、現実から逃げてばかり
……いつからだっけ、私達が会えなくなったの。確か、アウグストが襲われた日
――
―
『だから何度も言ってんだろ。アラクネが悪くないと証明すんのには、戦いの根源からぶっ潰してやりゃあいい』
『それじゃあ駄目なんだよ!争わなくてもいいように、皆で相手をわかりあおう!』
『じゃあ何か、今は見過ごせって言ってんのかよ!!』
『言ってない!!気に入らなかったら全部潰して、それでどうする!?誰が喜ぶんだ!!』
『二人とも……止めて……』
『アラクネ、お前はどっちがいい?俺とソウシの考え、どっちが正しいと思う?』
『……そうだね、僕とランダが言ってても拉致があかない』
『私……私は……』
『邪魔な奴らをぶっ潰すのか』
『皆でわかりあうのか』
『どっちだ?』
『どっちがいい?』
『私は……』
二人のどっちが合ってるかなんて……
『……選べないよ』
『……ふんっ』
『そっか……痛っ!?』
『ソウシ!?』
『クソッ、魔物……いや魔獣か!?ソウシ!』
『ランダ、アラクネ!』
―
――
「誰だ?」
何、この魔力!?突然感じた異常な魔力で一気に現実に引き戻された
「これはこれは魔王の皆さん。お初にお目に掛かります、マーベル・ベンクと言う者です」
茶色の髪と黄土色の瞳……地系の魔力ね。見たところまだ20代くらいの男性だけど、人間じゃなさそうだわ
「へぇ……お前があの魔獣どもの親玉、って解釈で良いのか?」
「あんな下手な陽動に何の意味があったか知らないけど、のこのこ出て来てご苦労様」
「……お前は気付いてなかったろ」
「いやいや、陽動は下手でなければ意味がない。それだと気付かれない可能性もありますからね」
「……」
無言で距離を詰めたベルゼブの剣を受けて、マーベルは後退した
「ぐっ!流石は大魔王……洒落になりませんね」
「……終わりだ」
「ですが……」
「ベル兄ちゃん、後ろ!」
アスタノトの声に反応して即座に背後を防御
「危なかった……」
「……ふっ、こっちには幻覚のエキスパートがいるんでな」
「成るほど……それなら、これでどうでしょう」
今度は身体丸ごと消えて見えなくなった
「消えた……?ううん、魔力は感じる」
「今度は幻覚じゃないな……」
ゼレカとエレスが警戒しながら辺りを見渡している。それが……どうしてもソウシとランダを思い出しちゃう……。私が、ソウシと……
「アラクネ!上!!」
メフィストの声が聞こえた時には、完全にトリップしちゃってた
「この魔法、試させて貰おう」
だから、上を向いて光を認識する事は出来ても、避けるなんて出来なかった
トンっ
誰かに、押された気がする
「ぐっ……!?」
その勢いのまま、私は倒れる。だけどそれとは別に声が聞こえた
「『夢幻』に当たったか……これは面白いデータが撮れそうだ」
何が起きたかわからない。何がどうなったのか、頭の中がゴチャゴチャで考えられない。何でゼレカが倒れたのか、何で自分は無事なのか、何でソウシはいないのか、何でランダはいないのかわからない……
デ「今回もランキングにしようと思ったのですが、急遽違うネタにします」
エ「ゼレカは今意識がないから私がアシスタント?です。それでは早速、アラクネの過去に出て来た『ソウシ』と『ランダ』の二人についてですね」
デ「せっかくこのタイミングなんでねー、言っちゃいましょう。もう二人とも出て来てます」
エ「ゼレカから聞いた話しだと、『ソウシの方はちょい前かいつぞやの対談見ればわかる。何をトチ狂ったかいらん程解りやすい伏線ばらまいてた』って言ってましたね」
デ「はいゼレカ君、今度罰ゲーム」
エ「ランダについては何も言ってませんでしたよ」
デ「ランダは……喋り方でわかるかもしれません」
エ「喋り方ですか?」
デ「喋り方です」