ハロウィン〜追憶〜
零「合法的にコスプレが許可される日」
「Trick or Treat!!お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ?」
カナの言葉でわかると思うが、今日は10月30日。つまるとこハロウィンだ
「うんうん、魔女コス似合ってるね〜」
牙にマント、ドラキュラみてぇな格好してるのは多矩夜だ。毎年違う仮装、もといコスプレして来てる。今年はマシだが、去年はサンタのコスプレしてた……ハロウィンだっつーの
「ホント、あんた達はコスプレとか好きよね……見てて驚くわ」
確かに、カナと多矩夜の仮装は本物と見間違えるクラスだ。実際深夜にでもあのカッコで歩いたら間違われんだろ
「いや、梨絵。お前はハロウィンだってわかってんのか?」
包帯グルグル巻きになってる脳筋がのそのそ歩いてやがる。驚愕の一言だな
「だってこれぐらいしかないんだもの」
白い肌、白い着物、どう見ても雪女を連想させるな。そして梨絵、お前も中々ノリノリだぞ
「まあ……黒のローブだけの零花に比べりゃあマシか……つーかフードくらい取ろうぜ?」
「そうだね。顔も見えないしただの不審者と間違われそうだよ」
ほぅ……英司、多矩夜、そんなに俺の顔が見たいのか
「零花〜、せめて顔ぐらい見せようよ〜。恥ずかしいのは分かるから」
カナ、お前も気付かない……無理もないか
「……」
いいだろう、ならば望み通りに『顔』を見せてやる
パサッ
俺がフードをずらしたのに全員反応が無い。予想外だったんだろ、フードの下からは『死神』のマスクが覗いてんだ。仮面の方が良い響きだったか?ともかく、散々顔見せろと言われた礼はしてやる。背中から鎌を取りだし一言
「……Dead or Araiv?」
『うおぁぁ!?』
『きゃぁあっ!?』
ハロウィン
「あ、あははは……心臓止まったのを覚悟したよ……」
カナが自分の胸を押さえて震えてる。よっぽど怖かったんだろうが、先に見せろと言ったのは誰だ
「言われた通り見せたぞ」
「……私は言ってないわよ」
そうか、確かにな。梨絵は一人だけ言ってなかった
「悪い、責任は言いだしっぺの英司が取る」
「俺かよ馬鹿野郎!!こちとら腰抜けかけたわ!!」
「お前にも怖いもんなんてあったんだな」
良い勉強になった
「へぇー、随分と手の込んだ仮面だね」
そして出た、俺らの中で一番空気の読める男。さっき叫んでたはずだったよな?やっぱりコイツは動じないんだと仮面を外してため息……
「っ!?零花、この仮面てあの漫画に出て来る…!!」
訂正、エンタメ以外に置いてのみだ
「適当に作ったんで、記憶にあるのを再現した」
「へぇぇ、凄い凄い!記憶だけでこんなに作り込むなんてね……!」
ダメだこりゃ……
「それより、ハロウィンだろ。一応それっぽい物は持って来た」
「おっ、珍しいな。お前が一番興味なさそうだと思ってたのによ」
マントの下に隠した鞄からペットボトルを21本取り出す
「リンゴジュースだ」
「ハロウィンだろ。なんでリンゴなんだよ?」
「家にあるリンゴジュースが大量でな、調度良いから持ってきた」
正直、持ってくんのがしんどかったが
「で、今日はこの後回るのか?」
「予定では一応そうなってるね」
多矩夜が戻ってきた
「はぁ……この歳で近所回りってどうなのよ?」
「いいんじゃね、伝統行事なんだからさ」
「これだから脳筋は……」
「それじゃあ行こっか〜」
「あ、カナ、ちょっといいか?」
忘れるとこだった、これも毎年恒例だ
「なぁに?」
無防備なカナの耳元でそっと囁く
「俺は菓子よりイタズラがしたい」
「ふぇぇぇえ!?///」
真っ赤になったカナを抱きしめる
「うっし、イタズラ成功」
ゼ「うっわ……恥ずかしい事やってたな俺……」
アラ「うんうん、男の子だね〜」
ゼ「アラクネもハロウィンに仮装とかしてたのか?」
アラ「私?私はしなかったな。文化祭なんかではコスプレだったけど、行事ではしないよ」
ゼ「そうなのか……臆面もなくあの格好で街中歩いてた……俺達」