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懐刀

アス「私の懐刀はお兄ちゃん♪」


ベ「……」

エレスナーグVision




「会食?」


「うん。でも、会食って名前の自慢話」


ちょっと前にとどいた手紙の内容を、彼の膝の上で話す


「ふ〜ん……それで、俺は護衛として付いて行けばいいの?」


ふわふわと、優しく撫でられる。はぁ〜、この時間がたまらない……


「もちろん♪どうせ向こうが自慢話してくるなら、私もおもいっきり自慢してあげるんだ」


「自慢って、何を自慢するんだ?」


「それはね――」


ゼレカに向き直って顔を近づける。ちょっと前はこうするのが恥ずかしかったのに、今はもう恥ずかしくない


「私の大切な人、だよ」




―――

―――



「うぁ……デカイ城だな」


「ここの魔王は見栄っ張り……ううん、小物なの」


それでも私の友達だけどね


「大丈夫なのか……相手さんのホームまで来て小物呼ばわりなんて」


心配しているんだろうけど笑ってる。さいしょから心配なんてしてないよね?


「っと、ここだよ」


財宝で飾られた廊下を歩いていくと、もっとたくさんの宝石が埋め込まれた扉があった。この扉を開けると友達、悪友って言うんだっけ?とにかく友達が待ってる


カチャ


ノックなんてしない。そのほうがおもしろいからね♪


「あ〜ら、ノックも無しに入ってくるなんて無作法ね」


玉座から久しぶりの声がする。だから私も構わずに言い返す


「あっゴメンゴメン、壁なんだか扉なんだかわかんなかったからさ、設計ミス?」


それに負けないように再び返してくる


「そうかしら?ちゃんと扉って分かるようにノブがあったはずだけど、見えてた?」


「ノブってあの針がねみたいなの?欠陥住宅かと思った」


「な、なぁエレス、大丈夫なのか?……」


私達の言い合いをみて、流石のゼレカもちょっと心配になってる


「これが挨拶だよ」


「ええ、そうね」


「あー……」


すっかり展開に付いてこれなくなって唖然としてる。カワイイ♪


「さてとまあ、久しぶりねエレスナーグ」


「久しぶり、シャクガ」


一通りの挨拶が済んだとこで一息。お互いに反応が楽しいから、ついつい熱くなっちゃうんだよね


「それと、ゼレカ君だっけ?」


「え?ああ、はい」


「むぅ」


なんとなーくゼレカの目線がシャクガの胸あたりをみた気がする


ドグッ


「痛ぃっ!」


「ゼレカ、挨拶挨拶」


お仕置き代わりにちょっと力いれて足を踏んでみた


「えーっと、ゼレカ・シュテイルです」


なんで踏まれたのか分からないって目でアイコンタクトを送ってる


『なんでもないよ♪』


こっちも返事を送る


それにしても、本名を名乗らないなんてゼレカらしいや。私を含めたアークテスタメントとソルにしか教えてないんだよね?なんかうれしい


だから踏んじゃった足を足でだけど撫でてあげる


「初めまして、シャークルエ・ガメステルよ。『フランディア』の魔王で、エレスナーグにはシャクガって呼ばれてるわ。こっちは私の付き人のテラル」


「どうも、シャークルエ様の御前を預かるテラルだ」


いつみても硬そうな人だなぁ……ゼレカとは大違い


「それよりもエレスナーグ!私あんたに言いたい事があるのよ!!」


むぅ、やっぱりきたわね……


「へぇ……体重が増えたとか?」


「あっはっはっは、そんなわけないじゃない。胸よ、胸が膨らんだのよ!あんたの洗濯板とは違うのよ!!」


『確かに、揉んでるのに大きくならないな』


バキッ


「あたっ!」


『ゼレカ?何か言った?』


『い、いいえ、何も……』


シャクガがひたすら話してる間に失礼な事考えてたゼレカとアイコンタクトで話す


今夜にでも攻め倒そう……


「っ!?」


あっ、わかっちゃった?


「ねえ、聞いてる?」


「うんうん、それより身長縮んだ?」


私より小さいシャクガにとって、これは爆弾そのもの♪


「なんかさー、この前より小さくなったんじゃない?」


「そ、そんな事…」


「お胸の養分が、身長まで吸い付くしてるの?」


皮肉タップリに笑う。楽しい〜


「あー、あの、エレス?俺外で待ってようか?」


「へーきへーき」


ゼレカのこういう気遣いも優しさだね


「……ぶよ」


「え?聞こえない?」


「勝負よ!エレスナーグ!!」


くふふふ、今回はシャクガの負けだね。やっぱり身長の事言うとすぐ怒るんだから。これって耐久勝負でもあるのにね♪


「いいわよ」


「お待ち下さいシャークルエ様。もしもの事があればこのテラル、先代に顔向けできませぬ」


「私が負けるって!?」


あははは、相当きてるね


ゼレカも、顔には出してないけど笑ってるのバレバレ


「いえ。そうではなく、姫様をお守り出来ない近衛隊長として一生の後悔、私の為にもどうか鎮まり下さい」


「……近衛隊長……そうね、そうだわ」


あ、やっと治まった


「エレスナーグ、あんたのゼレカ君と私のテラル、どちらが強いかで決めましょ」


な〜んだ、そういう事。さっきのしたり顔はだからか。でも……


「やだ。ゼレカは道具じゃないもの」


その言葉に、ちょっと痛みを覚える


「逃げるの?負けるのが怖いから?」


……


「そりゃあそうよね、私のテラルは最強だもの。例え魔王だって倒せるわ。賢い判断ね」


……どうしよう。ここで断れば負けを認めたようなもの、だけど……ゼレカは、道具じゃない!!


私が葛藤していると、ポンッと肩を叩かれた


「まあ俺も、魔王騎士として来たはいいが退屈だったんだ。暇つぶしにはちょうどいいや」


『君が悩むんだったら、俺が決めるよ』


ゼレカ……


「ありがと……」


「どう致しまして」


私達にだけ聞こえる大きさで、短い返事をする


「ふふふ、じゃあここでいいわよ」


「玉座の間でやる気?」


「ええ、どうせすぐ決着つくわよ」


「そう……」


私も勝負の邪魔にならないように玉座まで移動する。さっきのゼレカの言葉で、もう怒りも何も冷めてた


「フランディア王族近衛隊隊長、テラルだ」


「ニンブルケティック魔王騎士、ゼレカ・シュテイル。押して参る」


「準備はいいみたいね。それじゃあ、開始!!」


シャクガの掛け声と共にテラルは一撃で決めようと動いた。隙も無く剣を振りかぶり振り下ろすまでの動作は、近衛隊長として十分すぎる技量。これでその辺りの魔王騎士だったらホントに一瞬だろうね。その辺だったら……


キンッ


「おっと、随分素早いな」


「何……?」


「その様子じゃあ、一撃にこだわって持久戦に弱いってわけでもなさそうだ」


鍔ぜり合いをしながら、余裕を見せて話してる


「嘘……テラルが一撃で決められなかった……?」


シャクガは相当動揺してる


「当然だ。戦場とは、予想外の連続、例え相手が弱者でも常に二手三手先を考えるものだ」


「へぇ……中々の心根だ」


ゼレカが鍔ぜり合いを解き、間合いを取る


「今まで私に間合いを取って勝てた者はいない……が貴殿は別格のようだ」


「そりゃあお褒めに頂き恐悦至極だな」


繰り出される突きを、最小の動きでかわしてる。さっさと勝負に出ちゃえばいいのに……何してるんだろ?


「そなた、戦う気があるのか?先程からのらりくらりと逃げてばかりだ」


「もちろんあんたを倒す気でいるさ。よっ、と」


小さいナイフが飛んでいく。ゼレカが牽制に使うナイフだ


「ぬ、飛び道具とはな……」


「卑怯とは言わせないぜ?ルールも何もないんだからな」


ん……何を考えてるんだろ?とっくに倒してもいいはずなのに……


隣にいるシャクガはその事に全く気付いてない


「成る程、貴殿の言う通りだ。私の流儀に反するが、全力を出さないのはもっと反する。後悔するなよ」


魔力……じゃあ、魔法か……


「エレスナーグ。ゼレカ君、ボロボロになっちゃうわよ?今なら降参すれば止めてあげる」


得意げに自慢してくる


「負けないよ」


だから私も答える。その短い言葉でね


「……安寧の、平穏の、救済の為の罰を。これが私の全力だ!『グリードバスター』!!」


猛る火が波を象りゼレカに向かう。その波をつまらなさそうに眺めるゼレカが見えた


「……終わりだ、強き者よ。願わくば後悔を残すな……」


「ほら見なさい!!だから降参を薦めたのに!!」


はぁ……何と言うか、レベルが低い?普段アークテスタメントの皆といるからたいしたことない魔力なんだよね


「そう?よくみてみれば?」


私はその煙りを指差す


「うーん……いくらあんたでも、自分の全力で勝てないってのを考えてなかったのはちょっと残念」


「!?」


「嘘!?」


煙りが晴れて、そこにいたのは汚れ一つないゼレカ


「馬鹿な……私の、私の全力だぞ!?」


「エレス、カウントお願い」


笑顔で秒読み宣言。私は言われた通りカウントを始める


「わかった♪10……」


「っ、うぉぉぉぉお!!」


キンッ キンッ


「9……」


さっきよりも激しい剣撃が飛び交う。でもそれはゼレカのじゃない


「8……」


「うぉぉぉぉぉぉお!!!」



キンッ キンッ


「7……」


「ちょ、ちょっと、何数えてるのよ」


数えてるんじゃなくて、引いてるんだよ


「6……」


「んー、10カウントじゃ長かったな」


「5……」


「ねぇ、ねぇってば……」

「4……」


「さて、そろそろフィニッシュだ」


「3……」


打ち込んで来たテラルの剣をかわして、初めてゼレカが構える


「2……」


「うわぁぁぁぁあ!!!!」


ズバッ


今までの剣撃の、どれよりも格段に速い『剣閃』


「1……」


ドサッ


それを受けて、床に倒れ込むテラル


「0……」


同時に、カウントも終わる


「あんたの敗因はただ一つ、俺が相手だった事だ」


鞘へと剣を納め、ブイサインを送ってくれる


「えっへへ♪」


負けじと私もサインを送り返す


「完全完璧勝利ってね」


「……」


ただ呆然と立ち尽くすシャクガ。あちゃー、これじゃあもう今日は立ち直れないか。こうなるともうその日は帰るしかないんだよね


「ゼレカ、帰るよ」


「いいのか?会食に来たんじゃ…」


「いいのいいの、ほら」


ゼレカの手を引っ張る


「あ、ああ」


その前に一言だけ


「シャクガ、聴こえてないかもだけど今日は楽しかったよ。また遊びに来るからね」


挨拶だけして、私と私の騎士はその場を後にした

エ「お疲れ様♪」


ゼ「ありがと」


エ「ところでゼレカ、なんであんなに時間掛かったの?」


ゼ「手加減するのが難しいからさ。少しでも間違えたら……真っ二つにしたりとか考えるとおっかないじゃん?」


エ「あ〜、だからか」


ゼ「あの程度に苦戦しないよ」


エ「そっか〜、じゃあ今夜もらくしょうだね」


ゼ「楽勝楽勝……ん?今夜?」


エ「今夜だよ〜♪」


ゼ「……おっと、これはさっきの悪寒か」

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