墓参り
ゼ「鬱だ……」
――人間界・零花の家
「久しぶりに来たな……」
とは言ってもまだ一ヶ月も経ってないのか。見栄えが悪いので郵便受けに詰まった物を取り出す。近所のゲーム店のチラシ、電気屋のチラシ、スーパーの特売チラシ、ファーストフードのクーポン券、等々見慣れた物ばっかだな
「最初に言っとくけど、元々俺しか住んでないから狭い上に暫く掃除もしてないし散らかってるぞ」
「うん♪ゼレカの家って楽しみ〜」
そう、一緒に来てしまったんだ。墓参り、と言う名の里帰りに……
「……ふぅ」
鍵を開け、ドアノブに手を掛ける
カチャ
「おじゃましま〜す♪」
目に見えてウキウキしてるな……てっきり墓参りって言ったから気まずい空気になると覚悟してたのに、一緒に来るとは驚きだ。そもそもお互いに両親が死んでるって言ったときはあんなにしんみりしたはずだったよな?
ま、その方が俺は嬉しいけど……
「えーと……なんかあったっけか」
冷蔵庫の中を漁ってみる。炭酸、紅茶、コーヒー、リンゴジュース、リンゴジュース、リンゴジュース……リンゴジュース多いな。そういえばリンゴジュースが飲みたくなってケースで買った記憶がある
「紅茶がいいか」
いつもミルクティーを飲んでたからアップルティーにするか。というか、またリンゴなのな
「エレス」
「ん?」
興味津々に俺の部屋を漁ってる主にペットボトルを渡す
「ほい」
「ありがとう」
「はぁ……とっと墓拝んで帰りたい」
「そんなに嫌なの?」
「すんげー嫌だ。女になるのとどっちがいいかって言われたら迷わず女になる」
「ホント!?」
「いや、今来てるからね。ならないよ」
「え〜」
残念そうでもこればっかりはやらないよ
「それじゃ、行こうかね……」
――墓地
「……ったく、なんで律儀に来てんだか」
毎年毎年一応は来てる。それはこれからも変わらないだろう
「ここが……」
「ああ。俺の両親の墓だ」
葉月……ふんっ。花をさして、線香を二本だけ供える
「……墓ぁ作ってやっただけでも感謝しろよ、クソッタレ」
エレスには聞こえない程度に言葉を吐き出す
「よしっ、やっと終わった!」
場所も弁えずについ叫んでしまった。反省反省……
「ねえゼレカ、私もうちょっと此処にいてもいい?」
「え!?」
たった今終わったのにか!?
「私だけでいいからさ」
「い、いいけど、何するんだ?」
「うん、ちょっとね」
まあ今のエレスの顔を見る限りなんかあるんだろ。壊しても構わないし、むしろそうしてくれたら来年から来なくて済むぜ!!
「わかった。じゃあ俺はちょっと買い物行ってくるから、終わったらここの入口で待ってて」
「うん!」
夕焼けに背を向けて、一刻も早く墓地から逃げる
「あっ、そうだ。エレス、何色が好き?」
「色?青か黒が好きだよ」
「そっか」
――商店街
ゲーム機を二台、ソフトを二本、その他周辺機器、全部揃ったな
「じゃ戻ろ」
ソルから頼まれてたゲーム機を買って、もう一度墓地へ行く。あっ、帰りに家寄って俺のゲーム機取ってこないとな
「おや?ゾンビもどきじゃないですか」
前から聞き覚えのある声がした
「お、久しぶり」
俺の挨拶はどこ吹く風と受け流された
「どうしたんですか?迷子になりました?」
「自分の町で迷わねえよ。それよりも、サンキューな」
「はい?何がですか?」
「ヴォルケノに手紙渡してくれてよ。助かったぜ」
「その事ですか……別にいいですよ」
得意げになる様子もなく、眼鏡をかけ直して俺に向き直る
「それよりもどうして貴方が此処に居るんです?」
「両親の墓参りだよ。めんどくせぇ、な」
「そうですか、それはご愁傷様です」
「お前こそなんでこんなとこに…」
「はぁ……私の上司の仕事で、今はこの辺りに拠点を置いているんですよ」
ウンザリした様な顔で下を向く
「それはそれは……」
「まあこんな所に居るのはやたら強い魔力を追って来たからです」
「魔力?」
「二つ程、雑魚とは掛け離れた大きさのね。一つはもう確認済み、二つ目も今確認しました」
「ああ、俺とエレスか」
そういう事です、と眼鏡をかけ直す
その動作に釣られてあいつの影に目をやる。そこには目の前の奴には一つだけない物がある
『翼』だ
「生えてますよ、貴方も」
やべっ、心読まれた。一応俺の影も見ると、ホントに翼が着いていた
「少し今捜し者をしているんですよ」
それだけ言うと、何事もなかった顔をして通り過ぎて行った
「またな」
俺もそれだけ言ってエレスのとこに戻る
秘密
――私は貴女
――貴女は私
――理由?
――それは、貴女と私に流れるものが同じだから
――そんな貴女にも話せない
――貴女と私が同じだと