同盟締結〜アラクネ〜
アラ「やっぱり好きな人と居るのが一番だわ〜」
アラクネVision
現在よりも前の時間
私、倉中アラクネは人間として育ってきた。名前や外見もハーフだからだと、私自身を含んだ誰もが思っていた。小さいころからずっと一緒だった私の幼なじみですら、或いは、だからこそ気が付かなかったのか
私が十歳の頃、『決して開けてはいけない』とお母さんに言われてた『扉』を開けてしまった時から、私を取り巻く世界は変わってしまった
そこは、『人間』の代わりに『悪魔』が存在していた。だからこそなのだろう、半分『人間』である私はそこが怖かった。そして同時に、一つの事実が、私と顔を合わせた……
「私は、『悪魔』……?」
――
「……あ」
夢、か……
なんだか懐かしいな……
「アラクネ?」
不意に懐かしい声が聞こえてくる
「あ、メフィスト!お久しぶりね。貴女もエレスナーグに呼ばれたの?」
「まあ、ね。それもあるけど……」
「あっ、ごめんなさい……」
「あんたが気にすることないわよ。それより、早くいきましょ」
すぐに作り笑いを浮かべ、軽快に歩いて先に行ってしまう
……悩みやトラウマは、誰もが持っているんだ
メフィストの作り笑いが、私自身の過去と重なる
コンコン
「エレスナーグ、入るわよ」
カチャ
「久しぶり、二人とも」
『!!』
そこには、エレスナーグだけでなくアスタノトとベルゼブまで居た。それに、明らかにエレスナーグの雰囲気が違う。前会った時は死んだ様に暗かったはず、なのに……
「またこうして五人で揃うなんて、何年ぶりだろうね♪」
「……」
あっ、今ちょっとメフィストの口が綻んだ
やっぱり好きな人に会えると嬉しくなるんだわ……はぁ……
「やっと全員揃ったね。適当にすわって」
促されるまま円形のテーブルに着かせてもらう
「それよりエレスナーグ、バハムートはどうしたのよ?私達が集まってるって知ったら、襲い掛かってくるわ」
メフィストは知らないのね
「バハムートはもう死んだよ」
「え!?ベルゼブ、あんたが!?」
「……俺は何もしてない」
「じゃあ誰が……」
そこまで聞くとエレスナーグが痛みを伴い得意げに笑う
「私の、救世主が倒してくれたの」
『……』
全員声が出せない
『救世主』、それが意味するのは『イケニエ』。自分より強い魔王への貢ぎ物
「そう……」
「この話は内緒にしててね。知られたくないから……」
「わかったわ」
知られたくない、その言葉にすぐ同意した
「さぁ、じゃあ本題に入ろうか」
「ちゃっちゃと片付けてのんびりしようよ♪」
「……」
「なら、その本題を教えてよ」
眠くなってきたな……
「『同盟破棄』、それが本題だよ」
……その言葉を理解するのに時間を要したのは、言うまでもないわね
「エレスナーグ、あんたちょっと強くなったからって浮かれてない?」
「やっぱり、そういうと思った。まだ続きがあるんだよ」
やれやれといった顔で手を振るエレスナーグ
「続き?」
「今の同盟は私達の前世代が結んだ同盟であり、『私達』が結んだわけじゃない。だから、より強く、より堅固にする為に今の世代で新しく結び直そうってこと」
今のエレスナーグには、確かな強い意思が宿っていた。昔のエレスナーグは全てに興味なさそうに、無気力だったのに、いつの間にか強くなってたのね……
「……わかったわ。誤解してごめん」
メフィストも今の説明に唖然となっていたみたい
「ううん、必ず誰かはそういう反応すると思ったよ。それじゃあ改めて、『今の』同盟を破棄して『新しい』同盟を結ぼうと思うんだけど、異論はない?」
「ええ」
「うん」
「もちろん♪」
「……同じく」
満場一致でエレスナーグの意見に賛成、これで一つの不安が解消されたわ。後は……宗矢と、彼のことだけ……
何処に行ってしまったの……?
一つの争いがあったとする
争いを止めるのに貴方は言った
『戦いの根源からぶっ潰してやりゃいい』
争いを止めるのに貴方は言った
『争わなくてもいいように、皆で相手を分かり合おう』
どっちが正しいのか、どっちが間違ってるのか分からなかった
『身体』で解決しようとした貴方と『精神』で解決しようとした貴方と決められなかった私
三人で分かり合える時は来るの?