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残響(連載版)  作者: yashiki2005
4/20

第四章:沈黙の旋律

再結成から半年。

三人のサウンドは、確かに磨かれていた。

ライブハウスの店長たちも、いつしか彼らを“地場最強トリオ”と呼び始めていた。

しかし、平には引っかかるものがあった。

どんなに演奏が完璧でも、心を揺さぶる“何か”が、まだ足りない。

ある夜、常連客の紹介で一人の女性がスタジオに訪れた。

小柄な体にジーンズ、髪を後ろでまとめた彼女は、マイクを手にして言った。

「歌わせてもらっていいですか? 宮城タカコって言います。」

大谷が軽くコードを鳴らし、岸がリズムを支える。

平がキックを踏んだ瞬間、宮城の声が空気を突き抜けた。

透明でありながら、芯に熱を持つ声。

彼らの“音”がその声に引き伸ばされるように広がり、スタジオ全体が震えた。

演奏が終わると、誰も口を開けなかった。

沈黙を破ったのは大谷の一言だった。

「……やっと、前に進めるかもな。」

その日を境に、四人の新しいバンドが始動した。


間もなく、一人の男が平たちの練習を見学に来た。

仲タモツ——元サウンドエンジニアで、現在は新進バンドのマネージャー。

飄々とした態度の裏で、音の細部に敏感な人物だった。

リハ後、仲は腕を組みながら呟いた。

「お前らの音、いいね。でもな、このままだと“閉じた音”だ。外の世界にぶつけるためには、もう一人——違う視点の演奏者が必要だ。」

そう言って紹介されたのが、芸屋博げいや・ひろし

元・別バンドのボーカル兼ギタリストで、ステージ映えする派手なパフォーマンスで知られていた。

初顔合わせの日、芸屋は場の空気も読まずに言った。

「大谷くんのリフ、悪くないけど……もっと“曲”として作った方がいい。」

そのひと言に、スタジオの空気が凍った。

岸が眉をしかめ、平が即座にドラムスティックで床を軽く叩く。

だが、大谷は意外にも笑った。

「いいね。じゃあ、お前の“曲”に俺の音をぶつけてみろよ。」


次の練習では、宮城のボーカルを中心に、芸屋の構成力と大谷の即興力が激しくぶつかった。

まるで以前の喧嘩の再演。しかし今度は違った。

宮城の声が、二人の音の狭間に立ち、バランスを取る。

岸の低音が地盤を固め、平のリズムが全員をひとつの“拍”の中に束ねる。

演奏が終わると、仲タモツが静かに拍手した。

「これだ。心を掴む“音楽”になってきた。」

彼の瞳には、確信の光が宿っていた。

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