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残響(連載版)  作者: yashiki2005
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第三章:歪んだ共鳴

それから数ヶ月、平は新しいバンドに誘われながらも、どれも長く続かなかった。

どの音にも「魂」が感じられない。どんなに技術があっても、あの二人のようにぶつかり合って生まれる“熱”がなかった。

一方、大谷はライブハウスを渡り歩いていた。

「天才ギタリスト」と噂されるようになっても、共にステージに立つ仲間はいなかった。セッションが終わるたび、どのミュージシャンも離れていく。

ある夜、酔った観客が言い放った。

「お前の音、すげぇけど……虚しいな。」

その言葉が、頭から離れなかった。


岸もまた、別のバンドで活動していた。演奏は堅実で、評価も高い。

だが、本番前のリハーサルで「グルーヴが軽い」と言われるたび、胸の奥がざわめいた。

彼の耳にいまだ残るのは、あのドラムとギターの“暴れるような生音”だった。

そんなある晩、ライブハウスの掲示板に見覚えのある名前があった。

——大谷烈 ソロ出演。

岸は無意識にそのチケットを買っていた。


その夜。

ステージの上でひとり演奏をする大谷を、岸は客席から見つめていた。

曲の中盤、ギターの音がふと迷ったように揺れる。和音の奥に、“届かない何か”を探すようなフレーズ。

岸はその瞬間、悟った。

——こいつ、まだ“探してる”んだ。

演奏後、岸は裏口で大谷に声をかける。

「相変わらず勝手なやつだな。」

振り向いた大谷が、少しだけ驚いたように笑う。

「お前も相変わらず、文句言いに来たのか。」

「いや、……次は、合わせてみるかと思ってな。」

短い沈黙。

それだけで、過去の喧嘩や別れの夜がすっと遠のいていった。


数日後、平のスマホが震えた。

〈明日、スタジオ取った。三人でやらねぇか。〉

送り主は岸だった。

翌日、スタジオに三人が揃った。

最初の音を鳴らすまで、誰も言葉を発さない。

そして、一音目——。

平のスネアが鳴った瞬間、岸のベースが唸りを上げ、大谷のギターがそれを突き抜けた。

音が絡み合い、かつての衝突が、今度は渦のようにひとつへと収束していく。

互いの個性を押し潰すのではなく、折り重ねるように響く。

スタジオの天井が震えるほどの音圧の中で、平は叫んだ。

「これだよ! お前らとじゃなきゃ出せねぇ音だ!」

その言葉に、二人は短く頷いた。

静かに息を吐き、再び音を放つ。

——不協和音は、ついに共鳴へと変わった。

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