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残響(連載版)  作者: yashiki2005
19/20

第三部 第一章:終わりなき拍

深夜の渋谷。

クラブの壁に貼られたポスターの一枚に、印字の薄れた文字があった。

──**“ZANKYOGAI Memorial Session・出演:RION and GUESTS”**

そこに“GUEST”として書かれた名前は、すでに伝説となった五人のものだった。

宮城タカコがこのイベントを企画したのは、芸屋ヒロシの訃報から一年後のことだった。

彼の遺した最後のデモ——

たった二分の未完成曲〈Infinity〉。

録音の最後に、微かな声が残っていた。

「音は消えても、拍は終わらない。」

その一言に全員が動かされた。

岸は再びベースを抱え、平はスティックを持ち直す。

大谷は時折空を見上げて言った。

「こいつ、また勝手に締めやがったな。」

当日。

会場は立ち見の観客で埋まっていた。

凛音のオープニングステージが終わり、

暗転したフロアに再生されたのは——芸屋のギター音。

ノイズ交じりの歪み。

それが“過去”ではなく“今”を鳴らしているように感じた。

そこに生ドラムが重なり、

ベースがうねり、

大谷のギターが泣くように応える。

ステージの上には宮城と凛音。

二つの声が、それぞれ違う時間の“残響”を歌っていた。

サビで照明が開く。

背景スクリーンには、若かりし日の芸屋が弾く姿が映し出される。

そして、凛音が静かに囁いた。

「——この音を、未来へ渡します。」

その瞬間、観客の歓声が爆発した。

涙を流しながら拳を上げる年配のファン、

スマホのライトを振りながら合唱する若者たち。

誰もが知った。

“残響街”という名前は、もう一家族のようなものだと。


ライブが終わったあと、

宮城は控室で一人、ステージの光を見つめていた。

「終わったね。」と平。

「いや、始まったんだ。」と彼女はつぶやく。

「だって、今日は私たちだけじゃなく、会場全体が“残響街”だった。」

岸が静かに頷く。

「音は受け取った人の中で続く。俺たちの役目は、それを信じることだ。」

大谷がギターを置き、出口のほうを見た。

「……ヒロシ、今頃どこで笑ってんだろうな。」

宮城は微笑んだ。

「たぶん、拍を刻んでるわ。どこか別の場所で。」


翌日、SNSにはひとつのハッシュタグが広がっていた。

#残響街_続く音(The Sound Goes On)

「音は生き続ける。誰かが歌う限り。」

その波は世界中に拡散し、動画配信サイトでは

“残響街カバーセッション”が次々と投稿された。

凛音のコメント動画の最後にはこう記されていた。

「音に終わりはない。

 それが、残響街の証明です。」

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