表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

夫の印税にソワソワする専業主婦

印税が入る数日前になると、私は落ち着かなくなる。

稼いでいるのは夫なのに、なぜか私が一番そわそわしている。


「今回は、いくら入ってるかな?」


印税が振り込まれ、預金口座の残高を確認する瞬間は、今でも緊張する。

もう十年以上繰り返している作業なのに、まったく慣れない。

数字を見て安心して、同時に不安になる。

稼いだのは夫。

不安を感じているのは、なぜか私だ。


最近、電子書籍からの印税が右肩上がりに伸びている。

数年前の倍くらいになった。

素直にすごいと思う。

夫が。

私は横で甘い蜜を吸っているだけである。


それでも、人気商売だから、いつ収入が下がるかわからない。

この不安も、私のほうが強く感じている。

当の本人より、たぶん私のほうが怯えている。


一応、家族で贅沢をしなければ、三十年以上は暮らせる預金はある。

世間からすれば、かなり恵まれている部類だろう。

それなのに、漠然とした不安が襲ってきて、

「まだ足りないんじゃない?」と、どうしても安心できない。


いったい、預金が何億円になったら、不安は消えるんだろう。


不思議なことに、預金が増えれば増えるほど、私の散財は収まっていった。

以前は、何かにつけてお金を使っていた。

「今を楽しまなきゃ」

「どうせ税金で半分持っていかれるんだから」

と、大きな顔をして。


今思えば、自分が稼いだわけでもないくせに、何様だよ、である。

恥ずかしさで、過去の自分を正視できない。


一方で、夫はというと、収入が増えようが、私が散財しようが、感情的な素振りをほとんど見せない。

以前、私が推し関連でトータルうん千万円を散財したことを告白したときでさえ、


「預金が0円になってないなら大丈夫。もし0円になってたら、わからないけど」


そう言って、私を責めることもなく、涼しい顔をしていた。


その涼しさが、かえって私の醜悪さを浮き彫りにする。

怒られたほうが、まだ楽だった。


「今まで本当にごめんね」

そう言葉では謝るけれど、行動が伴わなければ、その言葉は空気みたいに軽い。


だから私は、こう言った。


「月に、推し活関連で使っていい金額を、あなたに決めてほしい。

あなたと約束することで、私は自分を抑制できると思うから」


私をここまで言わせた夫は、もしかすると人の心を操る天才なのかもしれない。

あるいはただ、長年、私という人間を見続けてきて、善良な妻としての私を期待をしていないだけなのなもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ