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「Guiest」  作者: 木卯 空
第一話「のっぺらぼう殺人事件」

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6/24

六.新校舎三階女子トイレ

「千夏さん、梓さん。……最近亡くなった生徒お二人の名前で?」

「そうよ、そう。ご存知無くて?」

「……昨今は個人情報の取り扱いとやらには厳しいモノでして。」

「まぁ、そうでしたの。では、そうねぇ。」

 小首を傾げて片手を頬に当てていた花子さんは、何かを思い付いたのか足を組んで指を組んで、そこに可愛らしく顎を乗せた。

「お二人が話していたAとC、どちらが千夏さんで、どちらが梓さんか当てられましたら、私の知っている事、教えて差し上げますわ。」

 椿の目が細まる。

「本当に、よろしいので?」

「えぇ、ちょっとした遊びですもの。嘘を言う必要は無くってよ。」

 くすりくすりと笑む花子さんを見下ろして、暫し椿は沈黙する。

 黙考。けれど次に口を開くまでにさして時間は掛からなかった。

「……Aが梓さんで、Cが千夏さんですね。」

「まぁ、正解。どうして分かったのか、聞いてもよろしくて?」

 楽しそうに前のめりになる花子さんに対し、椿は肩を竦めて見せた。

「当てずっぽうです。根拠が無くて申し訳ない。」

「あら、」

 にんまりと花子さんの目が細められる。

「随分とイケズな方。それとも身持ちが堅いのかしら。」

 くすくすくす。花子さんがふわりと浮かび上がる。

「まぁいいわ。正解は正解だもの、教えて差し上げます。まず千夏さんと梓さん、何方の方の話を聞きたいかしら。」

 そうですね、と椿が態とらしく視線を巡らせ、

「では時系列順に、まずは梓さんの方から。」

 そう答えた。

「いいわ。なら其方から。……梓さんは今もこの学校に居らしてよ。」

 瞠目する。

「……見つかっていないと、聞いておりましたが……」

「見つかっていないのは事実よ。でも居るのよ。」

 くすくすくすと笑う。

「それからね、千夏さんが殺された日にね、私、聞いちゃったのよ。」

 嗤う。

「千夏さん、ある子に呼び出されたのよ。あの日、あの油絵教室に。他の子達はそれを止めたのよ。結局聞かなかったみたいだけれどね。」

 くすくすくす。

「随分怯えていたわよ。復讐に来たんだって言ったのは、お友達の……さて、誰だったかしらねぇ。」

 三日月の隙間に昏くぽっかり空いた黒。

 人の死を一通り笑った女怪は、逆さになって椿の顔を覗き込む。

「助け舟になったかしら?」

「えぇ、とても。」

 そう、とても。

「また何か、別の誰かのお話とか、お聞きになりたかったらどうぞいらしてね。偶のお話し相手だもの、お相手するわ。」

 椿は一歩下がって頭を垂れた。

「ありがとうございます。それでは、僕はこれで」

 踵を返した椿に、「あぁ、そうだ。」と花子さんが手を打った。

「図書室には早い目に。ウチの司書さん、あんまり気が長い方じゃないの。」

 振り返った先、既に花子さんは姿を消していたが、それでももう一度頭を下げて、椿は女子トイレから退出した。

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