四.新校舎四階一年一組美術専科教室
「んで、左右逆の場所から開始って感じなんだけど、問題無さそ?」
曲が後ろの椿に問えば、曲を見上げた椿は「大丈夫。」と答えた。
「どうせ旧校舎三階は真ん中の壁で抜けられない。回り道しないとだから。」
「オッケー、オッケー。じゃ、ちゃっちゃと調べて椿が見た影でも探しに行こっか。」
「うん。」
僅かに口角を上げた椿に、ニンマリ曲がりが目元を曲げた。
「じゃ、一組から失礼しアース。」
曲が戸を開けたのは一年一組の教室だ。
「うぉ、机少な。」
「ここは美術専科の教室だからね。人数からしてかなり少ないよ。」
教室内には十二の机が奥に三、横に四列で並べられていた。
その上授業の為か、机は全て手前側に寄せられていて、椿達が入った後ろ側は伽藍として何も無い。
「置き勉も無ぁし。え、置き勉してないの?まっじめ~。」
「授業内容の差かもね。あとは案外美術室とかの方に置いてあるのかも。」
「あー。……そう言えばさ、CとCに殺されたAって何年生なわけ?教室ここなン?」
ロッカーの前にしゃがみ込んでいた曲がクルッと振り返った。
「いや、C達は全員二年生だよ。Aが美術専科、C以下共犯達は普通科の美術部所属だね。」
椿が資料を捲って確認する。
「じゃあこの階調べてもあんまり意味無かったり?」
「それは分からない。……実はね、Aの殺害の方については分かってない事が多いんだ。」
D達の話によれば、AをバラしたのはCが死んだのと同じ油絵教室内。
しかし彼女達がCに協力した時、既にAは死んでいたそうだ。
つまり、
「Aが実際何処で、どう殺されたか事態は不明って訳だね。」
「どう殺されたのかも分かってないんだ?」
「そう。見つかった身体には死因らしき物は無かったそうだよ。だから推測としては頭部打撲、それか」
「Cと同じ様に、絞首による窒息死、って事か。……うーん、与太話が補強されちゃうね~。」
立ち上がって腱を伸ばす曲に対し、椿は資料を脇に教室を見渡した。
「でも、まぁこの教室は今の所、A殺害の現場では無いと思うかな。」
「なんで?」
首をかしげる曲。
「ここってC達がAをバラしたって言う油絵教室まで一番時間がかかるんだよ。向こうは別棟一階、こっちは四階端で二つの教室は建物のほぼ対角線上の位置にある。それに此処は他学年の教室だからね、殺すまでも、殺した後も見つかるリスクがかなり高い。運良くって事も考えられるけど、まぁ可能性は低いと思う。」
椿が左人差し指で外を、右人差し指で床を指し、それを寄せてくっつけた。
「ほぉん。てか、今の話なら順当に考えて油絵教室で殺されたって可能性が一番高くない?」
曲の疑問に「それなんだけどね、」と椿。
「証拠が出てないんだよ。油絵教室、なんなら学校自体から。」
「……血痕とか、凶器も、……証言も?」
頷く。
「それが殺し方のせいなのかどうかは分からない。でも証拠が無い以上、油絵教室以外で殺されてる可能性もある。」
「……ちなみに、何処で殺されたか分かったらイイ事ある?」
「ある、かも。」
「かも?」
一拍、椿が黙る。
何かを、どう言えば良いか、迷った様だった。
「AとCの魂もそこにあるかもしれない。二人の魂はまだ、回収されていないから。」
当人達の魂が回収されていれば、そもそもこんなに話は大事になりはしなかったのだ。




