十九.〜美術棟前
「珍しいね。普段ならそんなにぶつけたりなんてしないのに。もう、鋏下ろしたら?あんまりあっちこっち打つけると駄目になっちゃうよ?」
「でも背負ってないと、なんか背中スースーするから……」
「スースーさせときなよ、鋏が可哀想だから……」
またベルトを外して外へ出て、それから鋏を背負い直す椿に助言するも、テキトーに断られる。
まぁでも椿の持ち物だしなとそれ以上は何も言わず、箱小屋の戸を閉める。
「にしても、結構証拠品残ってんね。アレにしろ、コレにしろ。」
曲が持って来たペンダントを掲げる。
「二年の教室側、関係者の荷物がゴソッと無くなってたから、てっきりこう言うのも回収された口かと思ったよ。」
「……さっきの石膏像は兎も角、それはまだ証拠品確定じゃないよ、曲。」
「でも、その可能性は高いんじゃない?被害者の梓ちゃんと同じ名前の花の絵。そんなのが入ったロケットなんて、無関係と思う方が難しい。」
ネックレスを手で遊びながら宣う曲に、溜め息一つ。
だが、確かに無関係とは椿も思えなかった。
顔の無い男生徒の絵、花の絵の入ったロケット、それに不自然な欠けと飛沫のついた石膏像。
椿の中で話は組み立ってきていた。
あとは、
「じゃ、部室棟、行こっか。」
ハッと顔を上げれば、遊んでいたロケットを仕舞って曲が笑っていた。
「……そうだね、行こう。」
「あいよ。」
それ以上は特に言及せず、曲は素直に方向転換した。
足先は部室棟へと向けられた。
それから二人は部室棟、武術棟、旧校舎と新校舎の残りの教室をそれぞれ回り、次いで来たのは
「美術棟。って割にはホント、コンクリート打ちっぱなしで、簡素過ぎて面白味無いねぇ。」
「美術の名前がついてるからって、芸術的である必要は無いと思うよ、曲。」
「ま、それはそだね。……にしても、」
曲が後ろを振り返る。
「此処まで、全くアレに会わなかったね。影も形もってどころか、気配も無かった。俺らは条件外って事だな。」
散々梓を追いかけ回していたあの頭の群れには遭遇しなかった。
もしかしたら図書室周りにでも張り付いているかと思ったが、見る限りそれも無い。
シンとした学校は、居ると知らなければ本当に何者も居ないかの様に静まり返っている。
けれどそこには確かに妖怪異が居る。そしてその中にアレらも居る。
「相変わらず不気味だねぇ、アレらは。人からすりゃあ俺らも同じ部類なんだろうけど、一緒になんて、されたくねぇや。」
「曲、言ってないで早く入ろう。もう十一時過ぎてる。此処見たら一回図書室戻ろう。梓さん達も流石に草臥れてきてるだろうしね。」
「おん、……ん?でもまだ美術室と体育館、見てないよね?他は全部回ったけどさぁ。」
順繰りに見て来てはいたが、それでもまだ見てない箇所を上げる。
「それは後で。ちょっと気になる事と確認したい事があるから。」
「ほーん、分かったぁ。」
椿がそう言うならと曲は美術棟の入り口に手をかけた。
「じゃ、続きまして美術棟、お邪魔しまーす。」




