十四.質疑応答
ふむ、と曲は不安そうに身を縮こまらせる梓から椿へと視線を流した。
とうの椿は口元に指を当て、何か考え込んでいる様だ。
—こうなると、耳は聞こえてんだけど、喋んなくなるからなぁ。
不安そうな少女にそれは酷だ。
曲は態と戯けて「りょーかい。」と笑った。
「んじゃ、こっからは俺らからの質問ターイム、って事でそだな。まず初めに、」
梓の視線が自分に向く様に、机に殆ど寝そべる様に頬杖をつく。
「千夏ちゃんと梓ちゃんって結局の所元友達って認識でオッケー?」
梓が曲がりの方を見る。それから首を横に振った。
「ともだち、とは言えないと思います。同級生ってよりは関わりあったけど、別に一緒に遊んだりとかはした事無かったし。」
「ほぉん、じゃあ、仲間?」
「……中学の時は、まぁ、そうかも?です。でも……、うぅん、美術部ってその、基本的には個人活動なんで、仲間っていうのも正直、あんまりしっくりは来ない、デス……。」
「ほぉん……。そっかぁ……」
難しい関係性だなと感じた。
関係性の濃さが曖昧で淡い。薄くもなければ濃くもなく、他人と言うにはよく知っていて、だが確かに、仲間や友人と言うには知らなさ過ぎる気来がある。
逆にそれが引っ掛かる。
—まぁ、ここまで言われりゃ、あとは椿が考えるか。
曲は早々に推理を放棄して、他の自分が引っ掛かった部分を尋ねていく事にした。
「じゃあ次、すず先生って誰?」
「え?あ、すず先生って言うのは美術科の先生、なんですけど」
「捕まった女性教師がすず先生です。鈴井 吉乃と言います。」
戸惑う梓に変わって、隙間の司書が答えた。
「あー、オーケーオーケー。ごめん、俺あんま資料読み込んでないもんでさぁ、困らせちゃってごめんね。」
「いえ、大丈夫です。」
「お仕事ですよね?それでイイんですか?」
「全く、ホントにね。」
「え、椿それには反応すんの?」
畏まる梓の一方、鋭く刺してくる司書の言葉に同意した椿を振り返る。
椿はシレッとした顔をしていた。
「ぉーん……、まぁいっか。じゃ次の質問。梓ちゃん、さっき四日くらい前に美術準備室に気付いたら居たって言ってたけど、それより前、というか、梓ちゃんが殺されてから四日前までの事ってホントに何も覚えてない?」
その問い掛けに、「ちょっとお時間ください。」と梓も俯いて考え込む。
沈黙。急かさず焦らせず、曲はブラブラと下駄を揺らしてただ待った。
程度にして二分程後、「すみません、」と声が上がった。
「覚えてないです。ホントに、一瞬チカッとしたら、すぐにパッと準備室に居た感じで。他は、何にも、特に出て来ないです……」
「うん、分かった。それならそれで大丈夫、ありがとう。」
更に身を小さくしようと固くなる梓に、片手で丸を作ってみせる。
「あとはぁ、そだな。司書さんの第一印象とか、聞いてもいい?」
「第一印象?」
「そ、第一印象。司書さんってさ、曲がりなりにも怪異な訳で、人だった君からしたら結構怖い存在だと思うんだよ。どうなってるのか解らないから。でも、君は割合落ち着いている。最低数日の期間があったとは言え、恐怖ってそんな簡単に拭えない。だからさ、気になるよね。」
のべっと机に伸びる。
「第一印象から決めてましたってヤツ?それとも人情満載な何かがあって変わってったクチなのかなぁって。ま、余談みたいなもんだし。梓ちゃん自身、色々混乱してた時に会ったろうから、覚えてないならそれでも大丈夫だよ。」
「第一印象から決めてましたは結婚申入でしょ。」
「お、お帰り椿。んで、そこんとこどうよ。」
「ノリが完全にオジサンのノリですね。」
「歳はとっくにジジィだけどね。」
「そこ二人ー?五月蝿いよー。」
和気藹々と曲を言葉で刺す椿と隙間の司書を他所に、曲がニヤニヤと梓を覗き込む。
微妙に梓当人も嫌そうに顔の表面を隆起させた。
「……ッツゥー……。真面目な話をするなら確かに怖かったですけど、なんか、なんか詳しく話すのイヤですね。」
「あ、コレ俺がホントに悪いヤツだ。」
「謝りなよ曲。」
「すみませんでした。」
呆れた顔の椿に促されて、曲が机スレスレまで頭を下げた。




