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第四話 不老不死の魔女は自由と魔法を愛する

私が師匠と出会ってから13年が経った頃。


アスティル王国内全域で病が流行し、師匠もその病に侵されていた。


病は現在の治癒技術では完治までに何年もの時間がかかるとされており、完治寸前で感染者の命が尽きた事例も多くあるらしい。


私と師匠の開発していたポーションがあればこの病も治るかもしれない。


しかし、そのポーションは残り少しの段階のところで開発が行き詰まっていた。


「ラティルス、すまない。俺はもうすぐ死ぬ」


「は?何言っているの?エーデル?」


「お前ならわかるだろう、俺の体から魔力が減っていっているのが」


「っ、、でも!」


そう。実は私たちはこの病の正体を知っていた。この病は感染したものの魔力を吸い取り、生命力を奪うものだった。


魔法を使うことの出来ない者も、実は僅かながらも魔力を持っており、ただその微量の魔力を生命活動に使っているため、魔法として具現化する事が出来ないだけなのだ。


そして、魔力を吸い取るこの病によって微量の魔力すら失い、生命を維持出来なくなり、死亡する。


本来、師匠ほどの魔力保有者であれば、少し体調を崩す程度で済むはずだが、師匠ももうかなり高齢であるため、魔力も徐々に少なくなってきているのだ。


「私を捨てないって約束したじゃない!私に自由と手段を教えるって!私の理解者になってくれるって!あの時約束したじゃない!」


「ああ、そうだな。本当にすまない」


「っだから!私は謝って欲しいんじゃなくて!」


「なあラティルス」


「、、、何よ」


「昔、お前が試作段階のポーションを誤飲した事があっただろ?」


「ああ、あったわね。けど、結局特に何の不調も訪れなかったし、それがどうかしたの?」


「あの時のポーションの効果、ずっと疑問だったんだ。研究の最中で効果が打ち消されて結果的にポーションに何の効果も残らない事はよくある話だが、それにしても何かが引っかかったんだ。」


「そして、それが最近やっとわかったんだ。お前も薄々気づいてはいたと思うがな」


「?何なのよ、その効果って」


()()()()だ。」


「は?」


「10年前、お前がポーションを飲んでから、お前は一度も病にも呪いにもかかっていない。俺は研究の影響で何度もかかっていたのにだ。」


「他にも、風魔法での飛行訓練の時だって、何度もお前は上空から落ちていたのにその怪我も一日経たずで完治していた。」


「何より、その姿。15歳の時から少しの変化もない。身長も、髪の長さも、何一つとして変わっていない。」


「ちょっ、エーデル、何言ってるの?私が不老不死?そんな訳無いじゃん。ほら、鏡を見たって私の体は成長して、、、」


師匠の言葉が信じられない私は、鏡の前に立って、自分が不老では無い事を証明しようとしたけれど、そこに映った私は、15歳の時から何も変わっていない姿だった。


「嘘、嘘よ。そんな、、なんで?」


「ラティルス、すまない。俺がもっと早くに判断していれば効果を打ち消すポーションだって作れたかもしれないのに、お前が傷つくと思って見て見ぬふりをしていた。本当にすまない」


「どうしてエーデルが謝るの?だってこれは、私の自業自得で。それに私も自分で気づいてたはずなのに、ああ。ごめんなさいエーデル。貴方を悩ませていたなんて知らなくて、、」


「ねぇ、エーデル。もっと生きてよ。一緒にポーションを作りましょう?

この病を治すポーションが出来たら、ゆっくり時間をかけて、私の不老不死を解くポーションを」


「ラティルス、すまない。今までありがとう。お前のおかげで魔法の研究がより楽しい時間になった。どうかこれからも自由に生きることだけは諦めるな。未来に希望を持ってくれ。お前は俺の自慢の弟子だ」


「いや!ねえエーデル!最期みたいに言わないで!どうして!?いやよ、お願いもう一度目を開けて!私を一人にしないで!エーデルお願い、、」


師匠は、エーデルは死んだ。


それから私は師匠との最後の研究開発作品のポーションを死ぬ気で完成させ、匿名で王城に届け、国に平和は戻り、私は師匠を小屋の横に作った墓に埋葬し、またいつもの日常に戻った。


鍛錬を行い、日が落ちるまで研究を続け、少し前と比べてかなり静かな小屋の中で日々を過ごす。


私は師匠に魔法を教えてもらう時間が好きだった。師匠と研究をする時間が好きだった。


師匠が死んで、魔法を学ぶことや、魔法を研究することに意味を感じない時もあった。


けど、思い返してみれば、師匠が死んでポーションを1人で開発していた時も、悲しみはあったものの、やっぱり研究を楽しんでいたと気づいた。


だから、師匠が死んでから2年後、私は過去を引きずることをやめた。


師匠の願いの通り、未来に希望を持つ様にした。師匠のように、物事をあまり重く考えすぎない様にした。


不老不死の私にとって、未来というものは尽きることがないものだけれど、考え方を変えた私にしてみれば、希望なんて何だっていいと思う。


もしかしたら、明日びっくりする様な魔法を思いつくかもしれない。明後日には苦手だった炎属性魔法が得意になるかもしれない。


もっと小さなことだっていい。明日買い物に行ったら市場の果物がセールになっているかもしれない。


好きなことを自由に、そしてこの長い人生(時間)を使って好きなだけ。


私は過去に、エーデルに救われた。


私は過去に、不老不死の魔女となった。


そして私は今、前世の記憶を思い出した。


私は不老不死の魔女ラティルス・オドーラートゥス。


自由と魔法を愛する者の名だ!





コンコンッ


玄関扉からノックの音が響く。


ラティルスは朝早くの突然の来客に驚きながらも扉に向かう。


ここから始まる波乱に巻き込まれることを知らぬラティルスは扉を開く。


そして、後にラティルスより「厄介お邪魔虫野郎」とあだ名付けられる男と目が合う。


「貴方がこの小屋の家主でしょうか?私、ルドベック・アスティルと申します」


ラスティルの背中に冷や汗が走った。

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