第一話 小鳥が願うは籠の外の自由
厳しい両親,期待の眼差し,無駄に広く豪華な家,陰口を叩く周囲の人間,そして何より大嫌いな制限された自由。
私の人生を一言で表すのならば「籠の中の小鳥」。
父はどこかの会社の11代目社長で,母はまた別の会社の社長令嬢。
兄弟はおらず,幼少期から父の会社の後継になるべく教育を施され,親の愛を与えられる事なく生きてきた。
仕事人間の父は,よく言えば真面目で誠実な人間で,悪く言えば合理性や効率的な社会生活を追い求めた末の,道徳心のかけた現代社会を象徴するような人間。
令嬢としては完璧な母は,行儀マナーや仕事の補佐能力には長けていた一方で,溜まったストレスを解消するように男癖が悪く,毎晩夜の繁華街を遊び歩いている。
今時古いお見合い結婚で結ばれた二人の間に愛なんてものは無く,義務を遂行するかのように私を産み,将来の駒として使えるように従順なことして育ててきた。
別に両親のことを恨んでいるわけではない。
確かに,「どうして私をお前らの子として産んだんだ」と声を大にして反抗してやろうかと思ったことは何度もあるけれど,
私自身としても,この運命からは逃れることは出来ないんだとほとんど諦めていたこともあって,そんな些細な反抗心を一々剥き出しにする意味もないと思い,やめにした。
それに,あの人たちが私に施した教育が無ければこの頭脳は手に入れることは出来なかったと思うし,その点では感謝している。
けれど,やっぱり私はこの家が嫌いだ。
高度な教育を施してくれたこと以外に感謝する点が見つからないことが何よりの証拠だろう。
窮屈で退屈なこの家の何よりも最悪なは自由が制限されていることだと私は昔から考えてきた。
学校や交友関係,習い事や外見まで全てに一定の制限が課せられ,さらにイヤラしい所は,その制限の中では一切の干渉も制限もなく,完全な自由的環境である所だ。
ギリギリ過干渉と言われない程度のラインで制限を貸してくる為,こちらとしても反論できず,ただ微量のストレスを日々溜め込んでいく一方となる。
きっと私は将来,父の会社を継いだ後も,両親のように好きでもない人と結婚させられ,仕事に打ち込み,産んだ子供に今の私のようにストレスを溜め込ませ,ただひたすら両親に言われるがままに人生を過ごし,適当なときに死ぬだろう。
そんな生活絶対に嫌。
だけど私には反抗する術なんて無い。
気も弱いし,人に流されてばかりだし,きっと言いくるめられてお終い。
宗教はあまり信じてないし,輪廻転生なんて本当にあるのかわからないけれど,
もし,生まれ変わることができるのなら。
こんな都会の大きい家なんかじゃなくて,森の中で小さな小屋を建てて,
義務になんて追われず,好きなことを好きなだけ学んで,
両親や周囲の人間から解放された自由な生活を送りたい。
もしも,神様が私に慈悲をくださるのなら,こんな我儘な願いでも叶えては頂けませんか?