お前誰やねん
通報。現場に到着。雨に溶かされてゆく血溜まり。うつ伏せの女。路地裏。壁に背を預ける男。手には血がべっとりとついた包丁。間違いない。こいつが犯人だ。
「動くな!」
男は動かない。というか、元から動いていなかった。ただ、警察っぽいノリをしないとこの緊張に簡単に飲み込まれそうだった。
「警察だ!その包丁は何だ!お前がやったのか!?」
拳銃を構える。単純に。シンプルに。刺されるのが恐かったからだ。超恐い。ここで死ぬくらいなら、後でぐちぐち上司に言われようとも、一発弾丸をお見舞いした方が幾分マシだ。
「警察?ああ。おまわりさん。ようやく来てくれましたね。待っていましたよ。」
男はこちらにニコリと微笑みかける。ややウェーブがかった髪が雨に濡れ、妙に艶かしい。
「どういうことだ!?お前が自分で通報したのか?」
「ええ。だって、こういうことは第一発見者が責任を持って行うものでしょう?」
不敵に笑う男。こいつ、サイコパスなのか?やたらと薄気味悪い。絡みづらいタイプだ。だけど、ここでビビっちゃダメだ。俺はさらに一歩前に、男と距離をつめた。そして、おそるおそる質問した。
「第一発見者って、それってつまり、お前が犯人ってことなのか!?」
「え?違いますよ」
「え、違うの?」
俺は。思わず聞き返してしまった。