スマホ依存の転生者
道徳で出てきた作品のifルート的な
高校生の由奈は、最近スマホを買ってもらい浮かれていた。
周りが全員持っている中、自分だけが取り残されていると感じていたので、その分喜びも大きい。
スマホを買う際の約束も忘れ、四六時中画面と見つめあっていた。
ある日、仲のいい友人と遊園地へ行くこととなった。
集合場所は駅で、由奈は少し出るのが遅れて焦っていた。
『遅いよ』
『早く』
ホームへと向かう駅の階段へ足をかけ、返事を打ち込もうとしたときだった。
「え?」
足を、踏み外した。
「き、きゃあああああああああああ!」
階段を転げ落ちる。
思考が加速して景色がスローモーションになるが、しかし速度は変わらず、むしろ加速する。
(あ、死ぬ)
下まで落ちると、地面に血溜まりが広がっていく。頭をぶつけ、血が出ている。
急激に体温が失われ、しかしその感覚も消失していく。
世界との繋がりが少しずつ薄れていく感覚に、由奈は恐怖と同時に後悔した。
(あんなこと、しなければ)
しかし過去に戻ることはできない。
「いや、だ・・・・」
由奈は、死んだ。最後に見たのは、駆け寄ってくる友人と駅員の姿だった。
×××××
目を開けたとき、視界に入ったのは見知らぬ天井と整った顔立ちの男女。こちらに向かって何か話している。
(私、死んだはずじゃ?ってきゃあ!)
男が由奈を軽々と持ち上げる。その顔はどこか嬉しそうだ。
(離して、変態!)
そう言おうとするが──
「あぅ、ぁぅぅあ」
口から出るのはくぐもった声。脳に障害でも残ったか、と由奈は考えていた。
ここが異世界で、自分が転生したのだと知るまで、数週間を要した。
◇◇◇◇
「生まれ変わってはや五年。インフラも何もないような世界、もう限界」
これは、ある少女が世界を変え、お約束などぶち破っていく物語。
「この世界で、スマホを作り出す」
物語は、ここから始まる──わけもない。
おわり