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弓張月の肉まん

 コンビニの肉まんは通年販売ではないことを教えてくれたのはきみだった。冬にかじかんだ手をあたため、空いた小腹を満たすために買った肉まんを、使えるお金が少ない高校生のきみとわたしはいつも半分こしていた。きみが半分に割るときは大きいほうをわたしに、わたしが半分に割るときは大きいほうをきみにあげるような、小さな愛がそこにはあった。あたたかくなり始めたある春の日にコンビニに向かうといつものショーケースに肉まんはなく、もう終わっちゃったかと残念そうに呟いたきみの声を今でも覚えている。次は八月の下旬になるのだと同時に教えてくれて、その年も、その次の年も、八月に入れば二人してそわそわしたものだ。

 歳を重ねるにつれコンビニでフライヤー商品を買うこと自体がめっきり減った。あの頃は覚えていた店員さんも今では覚えていない。仕事終わりに寄ったコンビニで肉まんを目にし、最近買っていなかったなと不意に思い出し、一つだけ買って帰宅した。すでに部屋にあかりが点いていて、リビングの扉を開けるときみの姿と見覚えのあるコンビニの袋が目に入る。きみもわたしも肉まんを一つだけ買っていて、考えることは一緒だねと笑いながら、それぞれ半分に割った。きみは割った大きいほうをわたしに、わたしは割った大きいほうをきみに渡して、せーので一口かじる。

 帰宅するまでの間に冷めてしまった肉まんはわたしたちの指をあたためてはくれないけど、心あたたまる何かがそこにはあった。

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