《鉄布衫》●ほのぼの短編小説
王堅は鋼鉄のような巨漢で、全身が刀槍不入の強靭な体躯を持つ男だ。
「思いっきり打て!思いっきり叩け!銀両を頂けたらなんでもどうぞ!」
王堅は大きなな声で群衆に呼びかけた。
そこに一人の男が現れ、洋銃を取り出した。男は不敵な笑みを浮かべ、王堅に言った。
「洋銃は怖くないのか?弾き返してみせろ。うまくいけば褒美を倍にするぞ!」
群衆はどんどん集まってきて、王堅に囃し立てた。
「やれよ!やっちゃえよ!」
王堅は喉をゴクリと鳴らし、胸を叩いて言った。
「どうぞ、お好きなように!」
男は引き金を引いた。弾丸は猛烈な勢いで王堅の体を貫いた。
たちまち、驚きの叫び声と悲鳴が響き渡った。
群衆は恐怖に駆られ、四散した。
男も姿を消した。王堅は膝をつき、痛みをこらえながら弾丸を抜いた。
家に帰ると、息子が尋ねた。
「お父さん、今日はうまく稼ぎをしたの?」
「馬鹿なことを言うな。お前元気なら、毎日もうまいんだ。」
王堅は盲目の息子を見つめ、二筋の涙を流した。
銀両:中国昔お金の呼び方
《鉄布衫》(てっぷさん)は、中国武術の一種で、気功によって全身を硬くし、鉄の服を着たかのように防御力を高める技法です。
王堅は、この《鉄布衫》を用いて芸を披露し、生計を立てていました。
しかし、どんな優れた武術も、洋銃の前では無力です。
王堅は、生活のために男の挑発を受け、矛盾に直面します。
タイトルの《鉄布衫》には、二つの意味が込められています。
一つは武術そのものを指し、もう一つは「どんな困難にも屈せず、子供のために強く生きなければならない」という決意を象徴しています。
主人公の名前「王堅」には、「堅強」という意味も込められています。
これは、彼が《鉄布衫》の体現者であるだけでなく、逆境に立ち向かう強い意志を持つ人物であることを示唆しています。