↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/100

過去との決別と管理人が語る世界

そこには、あの人が、あの美しいエルフが佇んでいた。



純銀のようなキラキラ滝の様に流れる美しい髪、滑らかな浅黒い肌に完璧に整った美貌の(かんばせ)

長い睫毛から覗く瞳は、セラと同じ金の瞳、今は驚いた様にこちらを見つめているのだが…


俺が驚き過ぎて何も言えないでいると、何を思ったのか、笑顔で話し掛けてきた。


「あら、あの温泉施設に居た坊やとお嬢ちゃんね、ふふ、こんな所で会うなんて」


「 ……………………………… 」


「相変わらず仲が良いのね」


「…… 貴女は、なんで…なんで………」


「え?」

 

「貴女は此処で何をしていたんですか?

その手に持っているのは何ですか?」


美しい彼女が持っている、その水晶柱を、俺は指差した。



「…これは、貴方には関係無いでしょ!」


「そんなモノで≪災害≫を引き寄せるつもりですか?

沢山の人が死にますよ、分かってますか?」


「…………それが、何?

そんなの知らないわよ、人間がいくら死んだってどうせ、また増えるでしょ」


「今ならまだ間に合う、水晶柱を渡してください。

引き寄せるなら、海中の極小島にすればいい」


「陸の殆ど無い所で≪災害≫を降ろせば、海の≪災害≫となって返ってくるわ!

それじゃ駄目なのよ」


「だからって故意に差し向けるなんて酷くないか?

五千年もそんなことするなんて卑怯だろ!」


「…貴方、賢者ね?

何処まで知ってるのか知らないけど、これは渡せないわ!

ふふ」



美しい顔を歪ませて、嘲笑する彼女は、持っていた水晶柱を魔力で砕いた。



パリンッ



「レティシャぁぁぁあああーーーーーーーーーッ!!!」


この叫びは、俺じゃなく、前世の賢者たるユリウスの叫びだったのかもしれない。


「な、なんで、人間が私の名を知ってるのよ…

なんで、あ、貴方、目が… 銀の魔力眼…あの人と同じ大賢者の瞳…

う、やめて、そんな目で見ないで、そんな失望したような目で私を見ないで!」


身を震わせ、ポロポロ涙を零し泣き叫ぶと、レティシャさんは、転移で逃げてしまった。


ああ、間に合わなかった…


どっとショックや、無念が押し寄せて来て、膝を付いてしまった。

俺は、何も出来なかった…

セラに帰りましょうと囁かれて頷いた。




◇◇◇




帰ってからセラに、あのエルフの女性は、ユリウスの恋人だった、という話をした。

それを聞いて、セラも聞いたことがあると言っている。

大賢者ユリウスの恋人の話を。

フィオレの貴婦人、銀の乙女、麗しの黒真珠。

当時社交界を賑わした伝説の少女の説話は有名なのだそうだ。


だが、肝心の脳内のユリウスは、ショックだったと思う… 何も言ってこない。

そりゃあそうだろう、生涯かけて愛した女性の、あの言動、あの表情…


ユリウスの一番嫌いな人を嘲笑するような歪んだ顔…

見たくなかったに違いない、失望もしただろう、俺も失望した。



しょんぼりと、失意でガックリ来てる俺に、幻獣達の喝が入る。

左右に幻獣猫と幻獣犬が、ミャウミャウ、バウバウ、ガ鳴り立ててくる、やめて。

ピヨ太も頭の上でピヨピヨつついて来るし、痛えよ、こら。


何々、一々落ち込むな、元気を出さないと、寝てる時に顔に飛び乗る?やめろ。

そんな俺等を、セラがくすくす笑って見ている、恥ずいぞ。

まあ、でもモフモフに埋もれてると癒されるよ。


そうだ、落ち込む暇があったら考えんと。

セラが入れてくれたお茶を飲みながら、俺はあの司令塔の管理室の存在を思い出していた。




□■□




翌日、俺達は、改めて転移で司令塔施設に訪れる。

セラにも話したんだが、あの2階の管理室に行ってみようと思う。



一番右の水晶柱に音声を送った。


「2階に行きたい。

許可をくれ」


【拒否。

2階ハ賢者シカ入室出来ナイ】


「くっ、…賢者未満じゃ駄目なのか?」


【肯定】


「賢者未満ってのは何なんだ?

どうしたら、賢者になるんだ?」


【説明難解…

人ノ言語デ言ウ、≪自覚≫ ガ最モ近シイ】


「≪自覚≫ だとぉっ!

何だよそれ、ユリウス、あんたも教えてくれ。

俺は賢者になる」


«お前と言う奴は…

そもそも、お前は自由気ままに、ダラダラ、隠居の様に暮らしたいと願っていただろうが。

今の奔走も、筆頭聖人の指示で嫌々動いてるだけではないか»


「ぐっ、しょうがないだろ、嫌々なんだから。

でも、何か掴めることで、助けになるなら、何でもやりたいと思ってるよ!」


やけくその様にそう叫んだら、脳内に電子音が響いた。



ピコーンッ



『おっめでとう!!

≪賢者未満≫ から、≪賢者(仮)≫ になったよ~ん』



間の抜けた声が響く、ムカつくな。

って、誰だよお前?


«馬鹿者!

詮索はいいから、さっさと許可を聞け»


へいへい、分かりやしたよ。

元気に怒鳴ってるってことは、こいつも復活したか。

再び許可を聞いてみることにした。


「2階に行く許可は降りるか?」


【許可】


よかった、とにかく何でもいい、情報が欲しいんだ。

俺はセラに向き直ると言葉を掛けた。


「セラ、ちょっと2階に言ってくる。

何かあっても転移の水晶柱で戻れるから大丈夫だ」


「分かりましたわ」


そう言うと、目を瞑って顔を上げている。

これは、ちうの催促ですね。

こ、この、さくらんぼの様な唇が俺を呼んでいる。


ん~っ、ん?、???



グニャリッ



ちうをする前に飛ばされただと!

けしからん!


アレ???

ここ何処?


そこは、何も無い空間だった。

ここが ≪管理室≫ なのか?



『そうだよ~』


「うわっ、ムカつく声だな。

あんた誰だ?」


『んもう、怒ってばっか、ちょっと短気過ぎないか。

そうだなあ、何て言えばいいだろう、≪管理人≫? が適切かな』


「≪管理人≫ か、分かった。

≪管理人≫ は何を管理してるんだ?」


『ん~、世界?』


「ふざけてんのか!」


『君、短気すぎ、カリカリしない。

世界といったら、世界だよ。

何でも聞いて』


「お前は神なのか?」


『違うよ、でもある意味神より権限あるけど。

神っていうのは、人間独特の、作り上げた尊称なるモノだね。

土地神の様に、人の願いや念での集合意識だったり、上の次元の存在の総称だったり、そういうモノを神と呼ぶようだけどね。

っていうか、君、神なんて信じてないでしょ。

でも、そういう信仰を否定しないし、敬意も払ってるのは好ましいよね』


「お前…よく喋るなあ。

じゃあ、世界を作ったのはお前か?」


『いやいやいや、違うって。

あくまで ≪管理人≫ だから。

しかも、君らと同じ次元に住んでた経験がある者だったから。

君の中の、前前世の正志くんの世界に居たこともあるし。

ただ魂的に、上から降りて来て、また上へ帰る時に、頼まれたっていうか、押し付けられただけ。

正直面倒なんだけどね』


俺の脳内で、正志が、ぴくっと反応している。

うん、確かにこの感じ、アノ世界のちょっとクールな女子学生みたいな喋り方だな。


「じゃあ、世界の何を管理してるんだ?」


『色々だよ、生き物の管理とか、ダンジョンの管理とか、色々」


「生き物? ダンジョン?」


『うん、例えば、人間とか、亜人とか創ったのは私じゃないけど、管理、細かい設定の有無は権限があるし、魔獣や魔物の設定もそう。

ダンジョンなんかも、枠組み創ったのはわたしじゃないけど、イベントや宝物、罠、ドロップ品とかね、色々工夫してるよ』


「マジか、そうだ、亜人の歳の取り方が人間と違うのは、お前の設定なのか?」


『あれは、定番というか、セオリーというか、こんなもんかなあ?って感じ。

あ、怒らないでよ、私だって、よく分からないから、正志くんの世界のゲーム等とか参考にしたけど、しょうがないじゃん。


君が亜人に腹を立ててるのは知ってるよ。

あれは設定の歪みだろうね。

長寿、美貌、純血主義、優越感、差別、難しいよね、肉体を持つ生ける者って。


でもね、彼らは時をかけて淘汰されていくよ。

え?なぜって? 繁殖が上手くいかなくなっている。

もう、数が大分減っているはず、可哀想だけどね、純血も過ぎると、子が生まれにくくなってしまうからね、自業自得かな』


「そうか… 

世界を創ったモノは、お前より上の存在なのか?」


『う~ん、そもそも私も高次のモノだから、優劣はないんだけど。

次元を下げて、下にも体験に行くし、終わったら帰るし。


アロイスは世界の成り立ちを知りたいのかな?


まあでも、だいたい知っての通りだよ。


この世界は魔素に溢れていた。

それを中途半端に無くすことは出来なかった。

だから、魔素を活かした世界か、魔素を全部撤去した世界かに、選択した所から始まる。

魔素は、魔力となり魔法を生み出した、魔法世界だね。

ただ、なにしろ量が過剰に多かった。

大量発生する南は、ああしておくしか出来なかった。


浄化施設を造ったのは苦し紛れかな。

え?魔獣魔物をどうにかしろ?

うん、人間は困るよね、でも瘴気をああいう形にしてるのは、浄化の為だ。

魔獣の中で浄化作用が行われているんだよ。

それを倒した者は、浄化した魔素を吸収して、能力アップできるでしょ?


瘴気を魔獣化しなかったら、ずっと瘴気のままで、その淀みが解消されないまま、世界に充満したら困るでしょ?』


「この世界は、歪だな、もっと上手く回せよ」


『ええ~~、酷いなあ、頑張ってるのに。

まあ、試行錯誤の繰り返しかな。

文明が根付く前に、繰り上げして早めようとして、現地の ≪管理者≫ を置いたことがあるんだけどさ、みんな嫌がったり、飽きちゃったりで、逃げちゃったんだよねえ』


「それって古代文明の支配者達のことか?

はあ、いい加減だな…


なあ、この世界について言いたいことはあるけど、まず今は、南から来る ≪災害≫ について、なんとかしたいんだ。

出来れば人間の被害者を出さないで、浄化、消滅させたい。


頼む、なんとかしたい、どうしたらいいか教えてくれ」



『君はやっぱり賢者なんだね。

ふふ、思うまま、力をふるいなよ。

え?もっと具体的に言え?


分かったよ、その前に、私の事はミルでいいよ』


ミル?

そういうと、今まで無人の場所で空気と会話してた俺だが、いつの間にか、正志と同じ日本人?の女の子の姿が目の前に現れた。

うん、女子学生の制服が可愛いなって、そんな場合じゃない。



「ミル、頼む、教えてくれ」



ニコっと笑ったミルにもう一度頼む。

とにかく俺は必至だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。