2つ目の遺跡と足場作りと銀の魔力眼
朝起きたら、肩と首が凝り固まっていた…ソファーでゴロ寝のツケは大きい。
うたた寝する寸前は幸せなのに…
痛む首を擦っていると、ピヨ太が肩に飛び乗って来て、ピヨピヨ腹が減ったと言ってきた。
ソファーの前にあるローテーブルに、朝食用の焼きたてくるみパンとハムエッグ、スープを出していく。
ちょ、ピヨ太、ハムエッグ…卵も食うのか?
なに?自分は鳥と似て非なるものだから大丈夫?
いや、いいけど、その台詞キャッチフレーズになりそうだな。
相変わらずシュールだ… 共食い…ゲフンゲフン、なんでもない…
腹が膨れてダラダラしつつ、先日のことを思い返す。
そうそう、扉の無いあの遺跡の中から、外へは出れないかあの≪水晶柱に聞いてみたら、『イジェクト』との言葉で外に出れるそうだ。
ただし、結界内なので、結界の外には出れないから、外に出た意味がないのだ。
そうか、例え結界がなくても、アレ、扉がなかったのか。
どっちにしても外からは入れないじゃん。
結界を破るには、同じ光魔法のディスペル(全ての魔法効果を無効にする魔法)を使うしかない。
だが、ディスペルを使えば自分の魔法効果も全て消えてしまうし、魔力も結界と同じく100弱くらい食うので、普通は乱発出来ない。
そして、肝心の話、この遺跡の外の神殿に貼ってある結界は、永続的に流れる魔法?もしくは魔道具みたいな感じで、打ち消しても消した瞬間また結界が被さるというものだった。
一瞬消えたその隙に出れないことはないが、面倒だ。
神殿を覆う結界のオンオフは、白の大陸にある神殿こと中央施設で、≪入り・切り≫が出来るという。
その中央施設へは、亜人の大陸へ行かねば、行く手段がない…
う~~ん、あかん、又ふて寝したくなったよ、面倒くせーっ
さて、非常に面倒だが、先送りしても滞るだけだ、遺憾だが進もうと思う。
2つ目の遺跡は、今居る温泉施設のある領、グランハイムだ。
遺跡は、前世の賢者たるユリウスの実家である、グランハイム城の裏庭にあるという。
此処へも一度来たことがあるので、転移で跳んだ。
だが行ってみると、肝心の当主様は放置というか無関心みたいで、ひっそり隠微を掛けた王家の諜報が見守っているという状態だった。
まあ、グローリアも監視がいたし、こっちの監視は索敵の色が、味方の色の緑だった。
グローリアよりは心証良く思われているのだろう。
裏庭には長閑な畑や果樹園が広がり、その隅にある遺跡の廃墟跡は見向きもされない状態だった。
例によって、隠微、サイレント、そしてまた幻身でこの風景を監視の居る方向に見える様に転写してから近づいた。
マップが示す水色の箇所、遺跡のすぐ傍にある楡の木の前を、地魔法で掘り返す。
『スネア、石版を掘り返せ』
2つの石板を回収する。
一つ目石板に魔力を流し、現れた魔法陣に魔力で書き換え転移、前回と似た様な遺跡内に転移出来た。
だが、これは足場を作る為なので、すぐに自分の転移魔法で元の遺跡跡に戻る。
そしてすぐさま、もう一つの石板に魔力を流し、現れた魔法陣にやはり魔力で書き換え、転移した。
そこは、ブルック領国境添いの山にあった例の奇妙な神殿?に似た建物の目の前だった。
こちらもやはり、結界があり入れない、此処は?
«亜人の大陸だ、神殿の付近はドワーフ領だったと思う。
足場は出来た、今は引き返した方がよい»
分かった。
元の楡の木の前に戻り、石板二つを元あった土の中に戻しておく。
こうして地道に足場を着々と作っていく。
だが、遺跡の中こと、神殿内に、今度は自分の魔法で転移する。
此処はたった今、作った足場の遺跡内だ。
そうそう、先程の石板だが、ユリウスが最初調べに行った時、無造作に2つ並べてあったという。
遺跡内へ転移する方は、書き換えないと、踏んでも大丈夫な状態だったが、亜人の大陸へ転移する石板は、書き換え済みの起動状態にあり、うっかり踏んだユリウスを転移させてしまったという。
空間魔法を持ち転移できるユリウスだったから良かったものの、普通の人間が踏んだら大変なことになってしまうと焦ったそうだ。
危険だと懸念したユリウスは、魔法陣の文字を一部消して、2つの石板を、地中に埋め戻したという。
話は戻すが、転移した遺跡の中を早速マップのスキルを使い、脳内で展開する。
『マップ、遺跡内展開』
前回と似た様な広い長方形の内部は、椅子や机はなく、壁一面にぐるりと棚のようなものが並び敷き詰められていた。
ユリウスの話では、魔法や技術を記した石板が、棚に立てて並べてあったという。
その中で、当たり障りのない物、だけ、報告と共に王家に提出したそうだ。
例えば、
○下水道、浄化施設、建築技術、ゴミの処理
○紙の製法、ゴムの製法、砂糖の製法
○料理のレシピ、菓子のレシピ、調味料の製法
他にも山ほどあるが、こんな感じの、まるで前前世の正志の世界のような、便利なモノをこの世界に伝えて行った。
他にも、魔法や魔道具で、伝えても良いと思ったものだけ伝えたという。
反対に破棄したものも結構あったようだ。
自分にそれを決める権利があるか悩んだそうだが、やはりどうしても危険だと判断したものは処分した。
例えば、
○『天変地異』※大陸を割り壊す、大陸を水で沈める、
○『メテオ』※天からの燃える星の雨を降らす、
○『灼熱業火』※地表を全て焼き尽くす、
などなど、他にもあるが、俺が聞いても、多分処分すると思った…
余談から話を戻そう、マップに重要と思われる水色の箇所は一つ。
空の棚の上の、壁に当たる一部に、マップの光が点っている。
その部分に魔力を流したが何も起こらない。
だが、思わず手で触れたら、壁にポッカリ空洞ができて、中には銀色に光るポーションがあった。
俺の脳内で、ユリウスが驚愕の声を発している、どうした?
«それは、魔力のポーションか?!!»
ん?
『鑑定』
【魔力のポーション】
※その者に必要な魔力を与えるポーション
その数値は、資質、状況、必要に応じて変化している
え、なにそれ?
«アロイス、私の魔力は、そのポーションによって拡大した。
最初は500くらいだった魔力が、1万になったのは、それを摂取したからだ。
私の時は、ただ棚の上に置いてあった。
そうか、必要な者が現れれば、その都度提供されるのだな»
マジか、どうしよう、飲んだ方がいいのか?
«お前が判断せよ»
«いっき、いっき、いっき♪»
やめろ、正志、居酒屋じゃねえんだぞーっ
う~~ん、
男は度胸だ、飲むぞーっ!!!
グビリッ
まずっ、味をどうにかしてくれ。
うっ、なんか気持ち悪っ、腹の中で魔力がグルグル回ってる?
肩の上のピヨ太が心配そうに顔をつついてくるが、反応できんでいる。
しばらく気持ち悪くて蹲っていたんだが、漸く立ち上がることができた。
«大丈夫か?
立てるなら、鑑定で魔力を調べてみよ»
分かった。
『鑑定、魔力把握』
アロイス・リヒト
魔力:1001269/1001270
!!!!!!っ、
「なんだこりゃっ!」
«100万だと?!»
«すげーな、アロイス»
ど、ど、どーなってる?
«落ち着け、気の毒だが、今世の状況はそれだけ危機的なのかもしれない。
それよりも…
多分だが、お前の目の色が変わってるやもしれん»
???
«私の元々の目は青だった。
魔力のポーションを飲み、銀色に変わってしまったのだ»
マジで?
急いで収納から鏡を出すと…
お、俺の目、銀色に変わっとるーっ!!!
◇◇◇
ピヨピヨッ
「ん、大丈夫だ。
ショックだったけど、嫌なら幻身で色変えすればいいだけの話だ」
俺は今日も心の癒し、温泉施設の露天温泉にゆったり浸かっている。
ピヨ太はさっきまで、スイスイ泳いでいたのだが、のぼせたみたいで、俺の頭の上のタオルに乗っている。
それにしても、魔力が100万が必要になる危機的状況ってなんだ?
やめよう、考えると嫌になるからな。
あれから、実はショックを乗り越え、俺は遺跡の外に出たのだ。
『イジェクト』
そこはやはり山頂にある、奇妙な神殿というか建造物の前だった。
結界が相変わらず貼ってある。
『マップ地名を表記できるか?』
試しに、そう尋ねてみると、答えが表示された。
地名:島国ガリオン
ローレル伯爵領、山頂
古代の神殿(現地人の呼称)
そう、そこは、島国ガリオンだった。
こうなったらやるか!
『ディスペルマジック』
結界を消した瞬間を狙って、転がり出た。
出た瞬間、また結界が神殿を覆っている、セーフ。
失敗しても、中か外に弾き出されるだけだと思うんだが、ちょっとビビった。
ふう、これで、ガリオンに足場が出来た、帰ろう。
と、いう訳で、只今温泉に浸かっている。
今晩何食おうかな、収納に仕舞ってある料理のリストを思い浮かべながら考えてる。
2月も中頃、もう早春なんだけど、まだまだ冷えるしな。
コトコト煮込んだビーフシチューと野菜サラダ、焼きたてロールパン、うん、いいな、それにしよう。
セラ、みんなもゴメン、もちょっと足場作ったら、一旦かえるよ。
うん、頑張る、待っててくれ!




