ゾンビはパスだがデュラハン様は清く正しい?
起きたら翌日の朝5時だった、マルッと一日寝てたのか?
仲間達も、大体そんな感じで、みんな寝貯めをしたのがよく分かる。
朝食を食べながら、セラ達がチラチラ俺を見ているのは、何か言いたいことがあるのだろう。
だが、言わせない!
気付かない振りして、装備を整えていると、エマが突進して来た。
ドスンッ、痛っ!
とても子供のぶつかる音ではない、俺じゃなかったら、吹っ飛ばされていたぞ?
見掛け7歳児だが、獣人のエマは、体力、筋力、攻撃力は、俺の次に高い。
「エマ、痛かったからね、攻撃はやめて」
「アロイスー、ゾンビやだー」
この子は人の話聞かな…
「アロイス、わたくしも、ゾンビは嫌ですわ!」
「あたしも~、あいつら汚いしやだ」
「アロイス殿、撤退は別に恥ずかしいことではないと思うよ」
こやつらは、エマを皮切りに、畳みかけてきおって。
ウィルの方を見てみたら、首を横に振っている、諦めるな、ネバーギブアップだ!
「うん、君達はつまり、ゾンビと戦いたくない、というか、触れたくないし、飛沫を浴びたくないし、同じ空気を吸うのも嫌だという感じか?」
俺の言葉に頷く4人。
「では君たちは、金カードになるのが5~6年、もしくは10年くらい伸びてもいいにかな?」
「どうしてそんなに…」
「俺がこんなに早く金カードになったのは、推薦人が10人を超えたからだ。
その推薦人は、金カード者が5人、筆頭聖人が1人、高位貴族が2人、王家から1人、ギルド長から1人、騎士爵の金カード者が1人、他にも居たらしいが後は詳細は不明だ。
だが普通は、こんなに早く成れない。
それには俺の様に推薦人を得るか、ひたすらギルドポイントを貯めるかだ。
この階層間を攻略しないと、先には進めないし、チャンスもそんなにない。
それとも、シエラのダンジョン都市に行く?」
しごくまっとうな事を述べたのだが、悩む4人。
ギルドポイントは貯めたい、が、ゾンビには近づきたくない、そんな葛藤か?
ふと気が付くと、4人揃って、ウルウル俺を見ている、やめて、そんな目で見ないで~
うっ……
「 ……分かった、全て、俺とウィルで殲滅させる…だから、行くよ?」
「ちょ、アロイス、それはっ」
「ウィルは黙ってて、やったー、ありがとー」
「アロイス、流石わたくしの婚約者ですわ」
「やり~、さんきゅう、アロイスく~ん」
「ウィル殿、火魔法を使える貴方は逃げられませんからね」
しおしおと項垂れる、俺とウィルを傍目に、元気になる女子4人。
そうして俺達は、13階層へ降りる階段を下って行ったのだった。
覚悟はしていたが、階段を下るにつれて立ち込める臭気…
降りた先は、ほの暗い石の壁、石畳、地下の様な狭く圧迫した通路が続いている。
どこか小綺麗だったミノタウロスの迷路と違い、陰惨な雰囲気にモチベーションもダダ下がりだ。
索敵にポチポチと点灯する赤い点、避けることはしないが、あえて追わないスタンスで、ひたすら14階層へ降りる階段を探すことにした。
ゾンビは意外と早い、ズルッズルッと這う様に歩いていたと思ったら、あっと言う間に間合いを詰めて来る。
いや、別に全然脅威でもないんだけど、しがみつかれると、魔法が掛け辛いんだけど、聞いてる?セラ。
索敵で出るのが分かってるので、片っ端から、聖魔法を掛けていく。
『浄化!』
『浄化!』
『浄化!』
ちょっと広い所に出た途端、ゾンビがわらわらと大量に出て来た。
『大浄化!!!』
ふう、あのデロデロした奴らが、水に溶けた角砂糖の様に崩れて消えていく。
え?ウィルは火魔法を使わないのかって?
いや、さっき使ったんだけどね、火で焼かれたゾンビが、ダンジョンから消えるまでの間の悪臭に、俺達は無言で火魔法を使うのを諦めたんだ。
いいよ、作業は得意だし、聖魔法なら、無臭で退治出来るんだから、やってやるさ!
それからは、聖魔法を掛けては、ゾンビの残した紫水晶を回収していった。
やっと14階層へ降りる階段入口を発見、時刻は真夜中1時過ぎ、疲れた。
仲間も、何もすることはないが、歩き周って疲れたようだ。
皆、無言で、階段踊り場に建てた空間テントの中に入っていく。
この空間テント、パーティーの皆の為に、銭湯のような風呂を、男湯、女湯、みたいな感じで作ってあるので、皆一斉に、風呂に向かう。
うん、なんか身体清めたいよね、タオルを頭に乗せて、熱い湯に入ると疲労が湯に解けていくようだ。
ウィルも無言で、熱い湯に浸っている。
後から聞いたが、セラ達女子も、そんな感じだったとか。
湯でさっぱりし身体も温まった俺達は、以前大将に作って貰ったアマラ料理の肉まんじゅうと、鶏野菜キノコスープ、エマの買い置き、シナモンロールをたっぷり食べて満足した。
で、一日、ダンジョン休むことにするのだった。
◇◇◇
「10階層まで攻略した後、11階層からまた攻略に入ったか」
「はい、イビルフェアリーの魔石をオークションに出すとか」
「妖精の粉は出さないのか?」
「何やら恩師に渡したとのことです」
「そうか… で、何か隙はないのか?」
「無いです、こちらの尾行は気付いている様なので、あまり刺激するのはまずいかと」
「取り込みははやはり無理か。
まあ、ロラン家の娘の婚約者だという話だからな。
ネタがなくてもいい、ルグランで見かけたら、常に監視をつけろ。
ギルドへの監視も続けろ、ただしさり気なくだ」
◇◇◇
真夜中帰りで3時頃寝た俺達は、翌日の夕方頃、起き出した。
その日は一日と言ってもすぐ夜だが、のんびり過ごし、寝たい時に寝て、翌日昼頃起きた。
皆調子がまだ今一だったので、もう一日休むことにする。
そして、また翌日、午前9時頃ゆっくり起きて、万全に装備と魔法掛けを施してから、ダンジョン攻略再スタートといく。
14階層、そこは夜の森だった、ダンジョンなのに、月が見える、綺麗だけどすごくシュールだ。
月明りの中、ガチャガチャと鎧の擦れる音が響く。
やって来たのは、首のない重鎧の騎士だった、首はないが、ヘルメットを小脇に抱えている。
うん、デュラハンも、すげーシュールだ。
デュラハンが、セラを剣で指し示した、まるで決闘の申し込みの様だ。
セラがはっとしたように一瞬見せたが、すぐに落ち着いて、騎士の礼をする。
相手のデュラハンも礼儀正しく、礼をしてから、お互い構え合った。
いや、なんか違うだろ?と思う俺を他所に、白熱の試合をする二人、いや、戦闘だった。
押されている?くっ、デュラハンの癖にやるな、大丈夫かセラ?
結界を掛けているので、斬られても突かれても大丈夫になってるが、心配だ。
激しい打ち合いの末、セラは剣を落とし、デュラハンはヘルメットを落としてしまった。
無手のままでも勝負を捨てず構えるセラに、デュラハンは剣を下に置き礼を取る。
セラが、え?というように、同じく礼を取ると、デュラハンは光るの粒子のように消えていった。
え?どゆこと???
「引き分け?なのかしら?
それとも、ヘルメットは落としてならない物だったのかしら?
わからないわ」
なるほど? 俺も分からん。
「あー、水色の石と、スクロールだー」
エマが、青い輝石ターコイズと、スクロールを持って来たので鑑定する。
【デュラハンからの贈り物】
※デュラハンが認めた相手に贈るスクロール
筋力を100増やすことが出来る
または、
素早さを100増やすことが出来る
または、
火魔法を得ることが出来る
「すごいな、セラ。
これはセラのものだ、どれを選ぶか決めたらいいよ」
みんなもわーわー、盛り上がっている。
う~ん、ウィルの時のスライムのスクロールと似てるな。
あの時は、ウィルは魔法師向きだったから、魔力100より、火魔法を薦めたんだよな。
セラにとっては、どちらがいいか分からないな…
少し悩んでいたセラだったが、意を決した様に、きっぱり選択した。
それは、
「筋力を100上げます」
ちょっと恥ずかしそうにそう言った。
そうだよな、剣技には力がいる、女の子のセラには、元々筋力不足というハンデがあったもんな。
セラに火魔法も、あってもいいと思うけど、今はなにより力だよな。
スクロールから光が放たれセラを包むと、セラから力強さを確かに感じた。
身体強化をしても不足だった力に、新たな力が加わることによって、押し負けることもなくなるだろう。
あれ?ここダンジョンだよな?なんか変だな、まあいいや。
その後も、出て来るデュラハンは、相手を指名すると、タイマン勝負を挑んで来た。
中には首のない馬に乗ったデュラハンもいたのだが、律儀に、馬から降りて勝負するという騎士道振りに、俺は正直ドン引きした、が、セラは感動したようだ。
指名は、俺かセラかジェミで、俺やジェミがちゃんと礼を取らないと、デュラハンとセラの両方から注意や指導が入ってしまうという理不尽…
まあ、いいんだけど、ちゃんと、魔法師のウィルや、どちらかというと魔法師系のアケルは避けてるし、エマはそもそも対象外のようだし、相手をちゃんと選んでるっぽい。
そんな潔くも清い勝負を熟し、スポーツマンシップに…もとい騎士道精神に則った戦いを終え、漸く15階層に降りる階段入口を見つけた。
まあ、清い勝負をしたのはセラだけだが、俺とジェミは、魔法も使うし、フェイントもかます、なんでもありだ。
ジェミに至っては、落ちたデュラハンのヘルメットを蹴飛ばして、セラに怒られていた。
なんだかんだ、青い輝石ターコイズも大量にゲットして、14階層は終わったのだった。
時刻は深夜0時、今宵も空間テントにて風呂と食事を堪能して、ゆっくり眠りについた。
おやすみ zzz




