それぞれの再会と虹と願いと
シャルロッテ様とガキんちょに、俺とセラはそれぞれ呼び止められていた…
「……………」
「……………」
が、しかし、俺とセラは、対応に困り、固まっていた。
いや、別に俺はシャルロッテ様が嫌いな訳でではないし、セラも、ガキんちょのことは、弟のように可愛いがっていたのを知っている。
ただ、厄介なのである、彼らの背後が…
そんな逡巡する思いを、全く介さない二人が、元気に駆け寄ってきた。
「アロイス、久しぶりじゃのう。
突然居なくなったから、驚いたぞ」
いや、貴女の凶暴な侍女から、逃亡しただけなんです、はい。
「セラフィーネ、会いたかったぞ。
騎士団に行っても居ないと言われて、つまらなっかった」
セラが困り眉になりながら、しゃがんで、ガキんちょ殿下の相手をしている。
そうこうしてるうちに、ガキんちょの護衛達と、グローリア辺境侯爵家一行も、やってきていた。
王家の護衛達は別に普通なのだが、グローリア家当主は、なんとも尊大で感じの悪い奴だった。
おざなりに、討伐の礼を言われ、俺達パーティーを値踏みするように見据えたあげく、勧誘してきた。
その言葉に、セラと顔を見合わせ、ロラン家に既に席を置いているのでと、断った。
途端に興味を失ったように、去っていく。
父親が去っていったのにも関わらず、シャルロッテ様は、虹の魔法が見たいと言ってきた。
この、なんとも言えない気まずい空気を、分かっているのだろうか。
そうだった、天然で、きままで、空気を読まない人だった…
シャルロッテ様に、早く魔法を見せろとせっつかれていたのだが、ふと気がつくと、セラが俺の腕に、自分の手を掛けて立っていた、コブ付きで。
うん、殿下を反対側の手で抱っこしたまま、俺と腕を組んでいた、器用だ。
シャルロッテ様が、セラに気付いて、ニコーっと笑ってる。
「おお、ロラン伯爵令嬢ではないか」
「ご無沙汰しております。
グローリア辺境侯爵令嬢」
「そなたとアロイスは知り合いか?」
「はい、パーティーの仲間であり、父の認めた大切な方ですわ」
「それは、知らなんだぞ。
アロイスは面白い魔法を使うので、是非見たいのじゃ」
お二人さん、俺を挟んで会話するのはやめて。
シャルロッテ様は、ミルクティーの様な亜麻色の艶やかな髪に、紫色の綺麗な瞳の美少女、可愛い系。
セラは、輝く金色の髪に琥珀に煌めく美しい金の瞳の美少女、綺麗系、と、超絶美少女二人に挟まれて、心臓が持たないのよ~
「面白い魔法じゃと、余もみたいのじゃー」
喧しいわ、ガキんちょは黙っとれー
結局、虹の出来る魔法を披露する羽目になる。
夕日を背にして呪文を放つ。
『ミスティックシャワー』
霧状の水を空にかける。
水魔法の加護が付いたせいか、前よりも美しい虹ができた。
「まあ… 」
感嘆したようなセラの声が響く。
「おお、虹じゃ、前より綺麗じゃな」
シャルロッテ様の目が輝く。
パーティーの仲間達もビックリ仰天している。
そりゃあ驚くよなあ。
「う~む、虹か、今日の所は認めてやろう」
認めんでええわ、ちびすけ~
この魔法は、原理を知らないと、驚く魔法で、目立つから、本当はやりたくなかったのだ。
周りも驚いて目を見張ってるのが分かる。
どうしようと思ってたら、聖人のじいちゃんがやって来た。
「ほっほっほ、面白い魔法じゃのう。
先程は、大物2体の討伐を感謝するぞ」
後ろに控えた聖騎士が討伐料として、金貨2枚を、お納めくださいと、渡された。
ありがたく貰っておく。
筆頭聖人様と、せっかく会えたので、ポポのことを聞いたら、元気にやってると聞き、安心した。
面会とか出来ますか?と聞いたら、いつでも来ればよいと、快諾された、ありがたい。
聖人様はロルフ様といい、俺の名前や、仲間の名前も聞いてくれたので名乗って挨拶をしといた。
その後も、シャルロッテ様、ガキんちょ、ロルフ様、と、ひとしきり俺達は、喋っていたのだが、貴人達の金縁の馬車が何十台もやって来て、皆帰ることになった。
「アロイスとパーティーの諸君よ、来年は、大浄化に、指名護衛依頼を出すやもしれん。
その時は、また頼むぞ」
俺達は、了解して頭を下げて見送った。
「セラフィーネ、必ず夜会に来るのじゃぞー、
お前、アロイスとかいうやつ、連れてくるのじゃぞ、わかったなー」
セラがニッコリ笑って手を振っている。
王家の護衛の中でも一番腕利きな、例の強面が、目礼して、去って行った。
そして、
「アロイス、また、面白い魔法があったら見せてほしいぞ」
俺は引き攣りながら笑って、シャルロッテ様に、手を振って見送った。
シャルロッテ様の背後の者達を警戒していたのだが、流石に人目のある中、何か仕掛ける訳でもなく、何事もなく去って行ってくれた。
ふう、疲れた…
気を抜いていたところに、セラが、俺の腕に手を回しながら、質問をしてきた。
「アロイス、
グローリア辺境侯爵令嬢とは、どういったお知り合いですの?」
え?怒ってる?
あれ、前にちゃんと話したよね?
だから、知り合った経緯や、背後の者達とのこととかを、一応また全部話した。
特にアンナさんを始めとするあの騎士達のヤバさも説明しといた。
「確かに、あの侍女の方はわたくしも苦手ですわ。
あの方達も、確か貴族籍ではあると思うのですが、養子縁組らしく身元がはっきりしません。
多分、≪影≫達なのでしょう」
うん、そんな感じだよね。
ジェミは深入りしてないので、捕まった家に、仕えるのを許されたけど、それに当たって、聖魔法の、契約を交わさせられているんだという。
向こうの情報をこれ以上話さない、ということを。
「アロイスは、グローリア辺境侯爵令嬢を、どう思ってますの?」
「え?う~ん、天然不思議キャラ?」
目を見開いたセラが、呆れた顔をしていたが、安心したように微笑んだ。
「確かに、不思議な方ですわ。
どんなに居心地の悪い所でも、ぽや~っとのんびりしてますわ…」
そう言うと、気が抜けた様に、感心した様に、溜息を吐いた。
うんうん、みんな思う所は同じだな。
ところで俺は、シャルロッテ様や、その一行のステータス鑑定をこっそりしたのだが、シャルロッテ様以外、全員黒く塗り潰されていて、見れなかった。
しかも、シャルロッテ様のステータスも俺が思ってたより高くて、不自然だった。
もしかしたら、俺同様、偽りの書き換えステータスを表示しているのかもしれない。
称号に、ポポと同じく、聖女の卵となっていた。
これも、ホントかどうか分からない。
俺はなんとなく、シャルロッテ様が気の毒になってしまった。
あの家のやってることは、外からあまり良く思われていない。
常に誰かの悪意を感じていても、可笑しくはない。
もしかして、あの鈍感さは、無意識に身を護る術なのかもしれない。
でも、だからこそ、あの家のやっていることを、知ってほしいとも思っている。
「はあ、ふう… 」
「お嬢様?どうなさいましたか?」
「退屈じゃのう… 」
「はっ、申し訳ございません。
何か書物でもお持ちしますか?」
「いや、よいのじゃ。
今日はアロイスにも会えたし、また虹の魔法が見れたし、楽しかった」
「あの者をまた、従者に取り立てますか?」
「それは要らぬ。
アロイスは冒険をして楽しんでおるのじゃ、そこで見知った話や魔法をまた見せて貰えれば、それでよい」
「左様ですか?
もし御入用ならすぐ仰ってくださいませ。
引っ立てて参ります」
「アンナは優しいのう」
「はうっ、お嬢様!
ありがたきお言葉、アンナは幸せでございます~!」
美しい虹じゃった…
あの、怪物を倒した魔法も美しかった。
アロイスは不思議じゃのう。
うんうん、不思議ちゃんじゃ、ふふ。
まさか不思議キャラに、不思議ちゃん呼ばわりされているとは、夢にも思わないアロイスだった。
惜しいな…
思ったより、使えそうな腕だった。
だが、ロラン家の騎士団と、ことを構えるのは得策ではない。
それに、ロラン家の5女は、あの魔法師に御執心のようだしな。
貴族ではないが、あのまま、金カードになれば、誰もが納得して認めるだろう。
だが、シャルロッテは、あの魔法師と親しいようだし、これは色々使えるな。
あやつが有名になれば、引き立て役にできる。
今日の大浄化に供した、浄化の花は、大いに役に立ったはずだ。
グローリアの覚えもめでたくなるだろう。
煩く言う輩は潰せばよい。
それでも、シャルロッテを聖女にするのは難しくなった…
聖魔法の使用は可能だが、魔力は少なく、幸運度のアイテムも今一の物ばかりだった。
ステータスは書き換えたが、今日の様な儀式で能力不足が、露呈してしまう。
だが、筆頭聖女が無理でも、王妃にはしてみせる、グローリアの名にかけて!
「アロイス。
銀カードになったので、約束通り、カフェシナモンパーティーに正式に入れてくださいね」
「うん、勿論だよ、セラ。
ウィルもエマも賛成だろ?」
「ああ、有力な前衛に期待だね」
「セラちゃん、歓迎~」
「ジェミとアケルはどうする?」
「あたしは、このまま続けたいけどさあ…」
「そうだね。
伯爵様次第だね」
「そっか。
でも、一緒にパーティーの仲間でいてくれたら、嬉しいよ」
「わたくしも、同じよ」
「俺もだ」
「あたしもー」
俺達の言葉に二人が嬉しそうに笑った。
半年以上も一緒に頑張ってきたもんな。
どうなるか、分からないが、離れても俺達は大事な仲間だ。
さあ、明日に備えて今夜はゆっくり休もう。
そして今度こそ、ラリックに帰ろう!




