厄介な貴人達と厄介な魔物達
さて本日は、大浄化の儀式の日だ。
祭壇が設けられ、浄化の効果がある、エリカの花が沢山供えられていた。
聖人3人、皆じいちゃんだった。
聖女が18人、こっちは老若混合だ。
ちなみに、聖人、聖女は、恋愛も結婚も、禁じられてはいない。
一番若い聖女さんも、旦那と子供がいるらしい。
俺はこっそり、彼らのステータス鑑定した。
皆、平均、魔力90以上ある。
そして幸運度が50以上あった。
うん、幸運度はポポと同じだな。
この特徴って、祝福だと、教会では捉えているらしい。
祭壇の両脇に、聖人、聖女が並び立つ。
後ろには、聖騎士が50人、ガッチリガードを固めてる。
そして、さらにその後ろに、昨日は居なかった、上位の観覧者、貴族が偉そうに座っていた。
席はひな壇になっており、よく見物が出来る様になっていた。
まさか居ないよな?と思ってた人物を見つけ、頭を抱えてしまう。
酷薄そうな面構えの中年の貴族と一緒に居るのは、シャルロッテ様だった。
今日は令嬢らしくドレスタイプのワンピースだった。
わーお、俺、予知しちゃった?
彼らの後ろには、見たことある様な、侍女と騎士達が居るのもデフォだ。
一度アンナさんがこちらを見て、笑ったような気がする、悪寒が…
ただ、ジェミを見て、視線で刺し殺しそうな顔もしている。
ジェミはジェミで、憎しみを込めた目で見返していた。
アケルとセラが、両脇でそっと庇うように立つ。
そう、ジェミは、元グローリア辺境侯爵家の手駒だった。
でも、例の事件でロラン家に捕まった時、グローリア家とロラン家とで、ジェミの件は手打ちになっているので大丈夫なはずだ。
観覧には王族として、あのガキんちょ王子も来ている。
いいのか、こんな危ないとこ、チビすけを連れて来て?
まだ気付いてないようだが、セラに気付くと煩そうなので、頭が痛い。
俺達カフェシナモンパーティーだけでなく、臨時で雇われたらしい冒険者が多々いる。
その臨時護衛は、聖人、聖女、のサイドに陣取っている。
え?俺達最前線なの?
まあ、いいや。
貴族席は殆どが中高年なせいか、シャルロッテ様とガキんちょは、すげー目立つ。
低年齢同士、お喋りでもするかと思えば、そうでもないらしい。
二人揃って、退屈と、顔に書いてある。
相変わらずだな、シャルロッテ様…
おっと、儀式が始まるようだ。
筆頭は聖女ではなく、聖人の一番年取ったじいちゃんだった。
大丈夫か?よろけてるぞ?ポックリ逝くなよ。
じいちゃんが、祭壇の前に立ち、瞑目している。
こんな時、関係ない話だが、この大陸の神と宗教は、一応統一されている。
創造神オリジンが唯一の神であるとされている。
ただ、土着の神様、女神様というのも、一応祀られていて、それらは、オリジンの下に控える神として、ちゃんと、信仰もされている。
まあ、つまり、オリジンさえ、一番尊いとしておけば、後は自由なのだ。
アバウトだな…
俺は悪いけど、神様は特に信仰していない、が、居ないとも言っていない。
大きな声で言えないが、オリジンより、土着の神様の方が、なんとなく親しみが持てる。
まあ、前前世の正志の世界の日本の、あらゆるものに、神が宿るという話の方が好きだ。
その話の根拠や、土着の神々は、精霊の一種ではないかと、ユリウスは分析している。
前世の賢者たるユリウスも、宗教には関心はなかった。
ただ、創造神という言葉から、なんらかの、この世界の成り立ちに関わってる存在かも?と、これまた分析している。
話を戻そう。
筆頭聖人の目が、カッと見開き、両手を掲げている。
魔力が迸るのが分かる。
じいちゃんに習って、聖人、聖女達が、同じように両手を掲げた。
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
『大浄化!!!』
初めて見た。
魔力がキラキラと、光の粒のように目視できる。
それが、魔の森全体を覆うがのごとく、実際は全部ではないのだが、包んでいっている。
それに合わせるかのように、エリカの花からも、光の粒が川の流れの様に森へと流れていく。
大浄化は魔力を70~80程使う呪文だ。
聖人、聖女も、魔力枯渇覚悟でやっているのが分かる、皆、脂汗を浮かべて耐えている。
キツイな、これじゃほんとにポックリいっちまうんじゃないかと心配になる。
森を包んだ光に、森全体が揺れている。
この時点で、消滅する魔物魔獣達も、いるのだろう。
大浄化は、それが目的でもあるのだ。
しかし、それから逃げる為、偶に、飛び出してくる奴が居ると言う。
あ、来た。
這う這うのていの、魔ベアが、数匹飛び出してきて、冒険者達に仕留められている。
その後も、オークや走竜など、飛び出して来ては、討伐されていった。
森を覆う、光の粒が消えた。
これで、大浄化は終わりのはずだ。
ホッとしたのも束の間、とんでもない奴が飛び出して来た。
しかも、2体!
トロルとヒュドラだ。
マジか、やめろ。
トロルは3メル(メートル)の巨体に、恐ろしい程の再生能力で、ダメージが回復してしまう、やっかいな奴だ。
ヒュドラは9つの頭を持つ巨大蛇で、こいつも確かやっかいだった。
聖人、聖女達には、聖騎士が避難誘導しているし、貴人達も、自らも護衛達に誘導されて行った。
うわ、相手するの俺達冒険者だけ?か。
俺のパーティーメンバーはガチガチに防御魔法を掛けているので、問題ない。
とりあえず、他の冒険者達にも幾つか掛けるべき呪文をかけといた。
『エリア全属性耐性』
『エリア状態異常耐性』
『エリア身体強化』
鑑定したら、ヒュドラは毒持ちだし、トロルは恐慌状態になるので、掛けたのだ。
体力はどちらも800近くある。
どっちに行こうかと思ったら、みんなトロルに行ったので、俺達はヒュドラを相手にすることにした。
真っ先に、ジェミが向かった。
ジェミが薙刀で、9つある頭の一つを斬り落とした。
「ひゃあっ、嘘っ」
珍しく悲鳴が上がる。
斬った首から、新たに頭が二つ出て来た。
「キモーい、やだー」
エマがドン引きしてる。
ええと、確か、斬った後焼くと、生えなくなるんだったな?
«そうだよ»
無意識に脳内で尋ねたら、正志が是と答えてくれた、ありがとさん。
「ウィル、今度は俺が頭斬るから、斬った首を、ファイアアローで焼いてくれ!」
「まかせろ!」
ザシュッ!
『ファイアアロー』
うんうん、焼いときゃ、再生しないな。
よし、この調子で首狩るぞー
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
ザシュッ!
『ファイアアロー』
«なんか餅つきみてい»
やめろ…
全部頭斬ったのに、まだ本体ウネウネしてる奴に、俺とウィルがファイヤーボールをブチかました。
はあ、こんがり焼けた蛇… 見たくない。
散り合えず、魔石だけ確保した。
さあ、終わったなあと思ったけど、まだ向こうは、トロルと戦闘中だった。
俺達が駆けつけると、皆ホッとした顔になる。
多分、何度削っても再生するこいつに、疲れたんだろう。
再生か…
うん、難しく考えまい、ヒュドラと同じく焼いてしまおう。
「ウィル、傷を与えたら、ファイアアローで焼いてくれ!」
「お、おう、こいつもか」
セラは、スラッシュをしようと頑張ってるが、上手くできないでいる。
エマは新しい手甲の鍵爪で切り裂いていた。
その後に、ウィルがファイアアローで焼いていく。
俺も、アケルもジェミもそれぞれ切り裂いて、その後ウィルの呪文が飛んでいく。
それも、作業と化していた。
う~~、ちまちまちまちま、持久戦かい。
ダメージ残り435?
きりがないな。
アレは確か、
風の斬撃、風が切り裂く、深く抉る様に、鋭く力強く…
正志の世界の動画のように、あの場面を脳内で再生する…
『スラッシュ!!!』
ズガァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーー!!!
ザンッ
トロルの頭が吹っ飛んだ。
『ファイアアロー』
首に火を叩き込む。
『ファイアアロー』
ウィルが俺の後に続いて焼いていく。
これも作業だ、炭になるまで焼き尽くした。
やれやれ、疲れた。
あ、でも、焼いたのに、魔石は無事だ、ラッキー。
俺が喜々として、魔石を拾ってたら、セラが抱きついてきた。
「アロイス!
素晴らしいわ、スラッシュ、成功しましたのね」
ははは、
照れるなあって、セラさん、なんばしよるとですかー
挙動不審になってまうー
ウィルとエマが笑っとる。
ジェミが、お嬢、ナイス、とかのたまっている、アケルは親指立てとるし、
俺らが仲間うちでほのぼのじゃれていたのだが…
唐突に、厄介はやってきた。
それは、ほんわか天然系可憐な声と、くそ生意気なガキんちょの声だった…
「アロイス?」
「セラフィーネ?」
うわあ、来たか~~




