顛末とその後の行き先
後始末というか、聞き取り、発端など、生き残りの者達に聞くだけ聞いていった。
その後、更にそれらを組み立てるということをすることになる。
まずは、あの年配の女性の話から始まる。
あのガヴァナスという魔法師は、まだ若く賢者の称号を持つ有名な魔法師だったという。
ただ人嫌いで、偏屈で、一人暮らしをしており、家族とも交流もなく、仲が悪かったそうだ。
ある時から、部屋に籠る様になり、あまりにも出て来ないので、使用人が、様子を見に行ったら、死んでいたのだった。
それからは、実家の親達が来て葬儀を終え、この屋敷を片付てけて、使用人達はお役御免になるはずだったのだが…
明日は退去というその晩に、ガタガタと煩い騒音と屋敷中が揺れる怪現象に叩き起こされ、その音のする部屋、元旦那様の部屋を開けると、埋葬したはずの棺桶が部屋の中にあった。
そして、バタンと、蓋が吹っ飛び、旦那様の服を着たリッチが出て来たそうだ。
ここまで聞くと、まるでホラーだな、怪談かよ、って思うんだが、なんとそいつは自らリッチに転身したと誇らしげに語ったという。
そして目撃した使用人達を次々に殺害していった。
腰が抜けて逃げることもできない女中達より先に、我先に逃げる男の使用人達を捕まえ殺していったそうだ。
次は自分達かという時に、末の娘のアリナが突然庇う様に目の前に出てきたという。
だが、
このアリアの母親を始め、女性達は、そこからよく覚えていないそうだ。
この10年のことも曖昧だという。
その後、どういう訳か、リッチに仕えることになった。
更にリッチに隷属され、リッチの命令に逆らえないまま、魔法陣を設置したり、冒険者を誘導したりさせれていたそうだ。
なんとあの部屋は、マールの街の住民区に繋がっており、そこで生活しながら、隷属の契約に縛られ、生きてきたそうだ。
ただ、自分でも、これはいけないと、常に思いながらも、どうにもならなかったそうだ。
自分が誘導した冒険者が亡くなっていくことに薄々感じながらも、逆らえず、だが、強そうに見える相手が来れば、助けを求めてしまう。
あの屋敷は、至る所に転移の罠があり、彼女達が居た、と思わされていたあの部屋に、あの扉から入ると、ただ、死なないでいられるだけの、一生出られない空間に転移してしまうのだ。
今、彼女達は罪悪感に苛まれているが、罪にはならない。
リッチに隷属されていたのだから。
リッチの魔力は500を超えていた。
普通の人間では、隷属を解約できなかっただろう。
この後はアリナの話になるが、彼女自身が自分のことをよく分かっていないので、聞いた話を後から推測するしかない。
母親達が危ないと思った時、自分は飛び出して、リッチにやめてと言ったそうだ。
何故か分からないが、やめてと言ったら、リッチは言うことを聞いてくれたという。
その後も、何度も何度も、命の攻防があり、このままではまずいと思ったアリナは、リッチの大事にしてるものを聞き出し、自分が護ってあげるから渡せと言ったそうだ。
リッチは逆らえず、でも私の自由にすることも許せず、『転移』でアリナの心臓の隣に埋めてしまった。
だが、リッチは後悔することになる。
アリナは、自らに心臓と≪リッチの壺≫を魔力で縛り、逆にリッチを脅すことにしたそうだ。
リッチが隷属の契約を掛けても、≪リッチの壺≫の話をしてきても、見つめていると、やがて引いていったという。
この10年、アリナは≪リッチの壺≫と共にあった。
そして不思議なことに、アリナの時も止まった…
10年経っても、6歳のままだ。
アリナはただ生きていた。
不安がる母親や仲間の女性達は、アリナが見つめると、安心したように笑顔になったそうだ。
だがアリナ自身は、リッチに隷属の魔法を掛けられてから、ずっと頭の中が煙がかかったように曖昧になり、記憶もあやふやになっていったという。
自分が壺を取り込んだのも、ともすると記憶から抜けたという。
これらの話を聞き、前世の賢者たるユリウスが脳内で、推測を語った。
≪あの娘は、稀にみる強力な≪魅了≫スキルの持ち主だ。
ただ、本来は発現することはなかったのかもしれない。
命の危機に瀕して、突発的に力を得たのだろう。
しかも、まだ幼い身、本能の命ずるまま、リッチさえも操り、母親を、仲間を、無意識に救った。
自分が何をしたかの自覚があるのすら怪しい。
あまりにも、強い力ゆえ、これからの人生は、囲われ、管理されるしか術は無い»
そうだよな。
良い子だと思うけど、あの力で、無自覚に人を操ってしまったらまずいよな。
3人の冒険者達は、仮死状態で放置されたのが幸いして、生き延びることができた。
あの空間は、空気はあるようだが、他に何もない。
あそこで亡くなった者を定期的に回収し、アンデットにしていたそうだ。
主にゾンビ。
そう言えば、ゾンビとの戦闘を語ることはなかったな。
何故なら思い出すと腹立つからだ。
あの屋敷の、コウモリやスケルトンは問題なかったのだが、ゾンビが出る部屋に入ったとたん、女子全員が戦闘を拒否してきたんだよ。
セラ、アケル、ジェミ、エマ、汚れるからいや~ってなんだよ。
そりゃないぜ、セニョリータ、それでよくも銀カードになるつもりだったな。
って、ギャグが分からんて?
前前世の正志の祖父の時代のネタ台詞らしい。
その後、マールの冒険者ギルドに行き、ことの顛末を、被害者を連れ、まるっと報告した。
ちなみに、冒険者3人は、命の危機は脱したが、意識のないままなので、神殿に預けたことも報告した。
顛末を報告されたギルドも、今までただの幽霊屋敷にしては、一向に解決しないと首を傾げていたが、まさかリッチが出てくるとは思わなかったのだろう、驚愕の顔になっていた。
しかもリッチになったガヴァナスは、マールの冒険者ギルドの、銀カードの持ち主だった。
そして評判が悪かった。
全属性の魔法スキルがあったが、初級や中級ばかりでたいしたことなかったのに、裕福で力のある実家を盾に、コネで銀カードになった。
そのうえ、称号ばかり鼻にかける嫌な奴だったそうだ。
本人も嫌われているのが分かるのか、段々顔を出さなくなって、その後訃報を聞いたという。
この件は、あまりにも特殊で、しかも被害者が加害者でもあったり、アリナの魅了や、奇怪な状況に、箝口令が敷かれた。
その代わり、ウィルやエマは勿論、セラ達3人も、膨大なポイントを獲得した。
あと、少しで、必ず銀カードになれると聞いて、抱き合って喜んでいた。
被害の冒険者達はあまり記憶がないようで、そのまま、ただ救助されたとだけ伝えられたそうだ。
結局、仮死状態を脱しても、意識が戻ったのはずっと後なので。
ただ、みんな家族持ちだったので、とても感謝された。
そして今日は、あの女性達を、マールの街の神殿に送って行った。
アリナも、神殿預かりになった。
アリナは聖魔法の契約を受け入れて、契約を交わしたそうだ。
『決して、魅了を使わない』
そういう契約だ。
契約により、無意識でも使えなくなるはずだと言うが、それでも、自由の身には出来ないという。
ただ、母親、姉、仲間達に囲まれて、静かに修道女として暮らすという話に嬉しそうにしていた。
ちなみに、神官になれるのは、聖魔法持ちだけだ。
聖魔法が使えない者は、修道士、修道女のままである。
「ハンナさん、アリナは一生神殿から出れない。
あの子の心を護ってあげてほしい」
「勿論ですよ。
アリナに私達は救われました。
あの子と共に健やかにあります。
アロイスさん、皆さん、この度はありがとうございました」
母親のハンナさん始め、女性達も頷き、そして感謝してくれた。
ジェミがアリナに、立派な修道女になるんだぞ、と頭を撫でている。
俺達は、取り合えず、2~3日、ゆっくり休養を取ることにする。
宿[石の上にも三年]に、大部屋を借りたままにしていた。
ここの馬場にシーナを預けているからだ。
借りてた部屋に、異空間収納から、空間をカスタマイズされたテントを出して建てた。
中は普通の家と変わらない広い居住空間になっている。
自室で寝ようかと思ってたのだが、セラ達が打ち上げがしたいと言ってきたので、付き合うことにした。
ありったけの、御馳走とエールやワイン、ジュース、菓子など、出して、ワイワイとお祝いする。
セラとアケルに目で、盛り上げて欲しいと、いうのを感じた俺、ウィル、エマは、例のごとく持ち歌を披露していくのだった。
パーティーが終わる頃、ウィル、エマ、ジェミがソファーで寝てしまっていた。
仕方ないので毛布をかけていく。
だが、ジェミはアケルによって、部屋に戻されていった。
見送るセラが振り向いて、俺に微笑んだ。
「お疲れなのに、パーティーをありがとう、アロイス」
「いや、いいんだ。
ジェミが元気ないからだろ?」
俺の言葉に頷くセラ。
そう、ジェミはずっとアリナを気にかけていた。
それを俺達は見ていた…
セラも詳しい事情は知らないみたいだが、ジェミには大切にしていた死に別れた妹がいて、アリナを見て思い出してしまったという話だ。
と言っても、本当の妹ではないらしいが、姉妹のように育った仲間だったらしい。
死に別れた時期が、あの年頃だったという。
「アロイスとウィルもそうですが、人には色々事情がありますものね」
「ああ、そうだな。
今回のアリナのことは、しょうがないとは言え、後味がちょっと…」
「ふふ、でも彼女は、穏やかでささやかな暮らしこそ、望んでいたのではなくて」
「うん、嬉しそうに笑ってた。
勝手に不幸だと決め付けるのも傲慢かもな」
セラが、正解、というように優しく微笑んでいた。
この後、アケルが戻って来て、3人でお茶を飲み話してたんだが、どうも、疲れてたみたいで、俺もウィル達同様、ソファーで毛布被って寝ていた。
「ジェミの様子はどうです?」
「大丈夫みたいです。
ご心配おかけしました」
「いいのよ。
元気になったのなら嬉しいわ」
「ありがとうございます。
ところでお嬢様、
アロイス殿が寝てる隙に、
チュッと
一発いかがです?」
「ちょ、ま、何を言うの!
そ、そんなこと…
…!!!!」
チュッ!
「あ~、からかっただけなのに、本当にしたよ、デコにちゅっと、お嬢様ったら(小声)」
う~~ん、なんか、デコに柔らかな…むにゃむにゃzzz




