それぞれの鍛錬とエマの実力
昨夜は早々に寝たので、快適に早朝目覚めることが出来た。
なので、宣言通り、早朝瞑想を行う。
ん?
エマがまた寝そうになっている。
この子は朝でも眠くなって駄目なのか?
まあ、出来ても出来なくても、瞑想は続けていく。
ところで、
瞑想とは心を無にすること…… 出来るかそんなもん! と、
最初ユリウスに逆切れしてしまったんだが、視覚でも聴覚でも触覚でもいい、自分の状態をずっとただひたすら感じ取る、体の五感に意識を集中させ、今この瞬間の心的状況、身体状況を受け入れる、そうすると雑念が消え、深い瞑想に入るということらしい。
最初は座って1分でも2分でも、そのように努力するだけでもいいだろう。
瞑想の後、3人で朝食も済まし、装備を整え、テントの外に出る。
「コボルトは、集団で一斉に襲い掛かってくる。
俺は以前、落とし穴に落としてやったんだが、今は集団で乱戦になっても熟せる自信があるので、剣で対処するつもりだ」
「あたしも大丈夫」
「俺は今までと同じ、風で押して魔法を撃つ。
間に合わなかったら杖で対応する」
「よし、じゃあ行くぞ」
ウィルが3人に、風のエリアシールドを掛ける。
俺は、ウィルにだけ結界を貼り、次に索敵を飛ばした。
敵を示す赤い点の他、人間を示す緑の点も点っていた。
この階はコボルトの武器、武具目当ての冒険者が、あちこちに居るようだ。
なるべくかち合わないように進み、戦闘をこなしていく。
こう言ってはなんだが、練習には丁度いい相手だ。
一応真面目に剣術の鍛錬もしていた甲斐があって、体が自由自在に動く。
剣は収納に入っていた剣で、切れ味のよくなる付与が掛かっているものだ。
体が動くと言えば、エマも凄い、小さな体がゴム毬のように、飛んだり跳ねたり一瞬でも止まらない。
ウィルは集団で押し寄せたコボルトを風で押しやり、ファイアーアローで狙い撃つ。
が、風で押しても押しても襲い掛かって来る敵に、いつしか杖で殴り始めていた。
結界が貼ってあるので、ちょっとやそっとでは、怪我をしないのは分かっているので、安心して見て居られる。
まあ、近距離で倒した方が、魔素をより摂取できるのでいいだろう。
一頻りコボルトを倒した後、大量の武具、武器、魔石が落ちていた。
『回収!』
俺の言葉に、コボルトの落し物が一斉に、空中に集まり消えていく。
行先は、異空間収納の中だ。
「うん、ゴブリンの武器より高く売れそうで嬉しいよ」
俺の言葉に頷く二人。
「ああ、それに、杖の良い鍛錬になったよ」
「あたしも格闘の鍛錬になったー」
「じゃあ、昼飯にして、午後からは4階層に挑戦だ」
「「おおっ!」」
気合ばっちりの俺達は、昼飯、休憩と終えてから、4階層に降りていった。
今までの洞窟の様な場所から、草原へと場は変わる。
「前回も思ってたことだが、ダンジョンって不思議だな、地下のはずなのに空がある」
初めて入った時の俺と同じ感想を、ウィルも持っていたようだ。
「そーだねー、なんかワクワクするね!」
そうだな、俺もワクワクするよ。
「二人は魔獣系との戦闘は慣れてないと思うが大丈夫か?」
「あたしは大丈夫」
「俺には、結界を掛けてくれ」
「分かった『結界』」
ウィルに結界を掛けて、準備万端。
ここも、ちらほら冒険者が方々で戦闘をしてるので、それらを避けて進んで行く。
「魔オオカミの群れが来るぞ!」
数十頭の魔オオカミが視界に迫る。
『『ウィンドブラスト!』』
『『ファイアーアロー』』
俺とウィルはそれぞれ、中級風魔法で全体攻撃を仕掛け、その後に個別に初級の火の矢で狙い撃つ。
魔法から逃れた魔オオカミが接近して来た。
剣で撫で斬る俺と風で押し返し、魔法を撃つウィル。
エマは…
人型には圧倒したエマの身体能力だが、魔オオカミの場合、格闘は不利のようだ。
「エマ!
剣を持て」
エマもアイテムバッグがあるので、いつでも武器はチェンジ出来るはず。
しかし、エマは首を振った。
魔オオカミが小さなエマに狙いを定めたように、集まってくる。
くそっ、エマにも結界を貼るんだった…
取り囲んだ魔オオカミが一斉にエマに襲い掛かる、俺達が駆けつけようとした時、それは起こった。
「ウォオオオオオオオオオ――――――――――ン!!!」
固まった魔オオカミの中心から聞こえたその鳴き声は、
「エマ…」
「あの時と同じだ」
エマの目が赤く輝いていた。
その威嚇の声に怯み、赤い目に射竦められた魔オオカミ達を、エマの手甲武器の鍵爪が切り裂いている。
あれだけ居た魔オオカミ達は皆倒されていた。
凄いな、
そうだ、
俺は慌ててウィルを呼び、エマが倒した魔オオカミの魔素を3人で吸収するべく集まる。
吸収を終え、ドロップ品である、毛皮、牙、魔石が草原に残された頃には、赤かったエマの目が、焦げ茶色に戻っていた。
ウィルの話だと、ルグランのダンジョンで置き去りにされて、腕を喰い千切られた時、
同じように、エマが魔獣を圧倒して、二人で逃げおおせたそうなのだ。
多分、無意識なのだろう。
そして、
俺は勘違いしてたようだ。
エマは、犬獣人ではなく、狼獣人だったんだな。
「エマ、大丈夫か?」
肩で息してるが、表情は明るい。
「平気だよ、楽しかったー」
「「そ、そうか」」
それを聞いて、俺もウィルも思わず、どもってハモってしまった。
「よし、皆大丈夫なら、このまま行くぞ。
倒しまくって、魔素を吸収するんだ」
「「おおっ!」」
魔素の吸収は、能力の上昇に大きく関わりがある。
しかしこれは、世間一般、意外と知られていない。
大抵は、倒してもさっさと立ち去り、せっかくの機会を逃してしまっている。
これは、皆に知らせるべきか?
«やめておけ、察しの良い者なら薄々気付いているはずだ。
気になるなら、親しい者にだけ知らせればいいだろう»
前世の賢者たるユリウスの言葉が脳内に響いた。
うん、見解に従おう。
ザックさん達と、ギルド長にだけ言っておくか。
4階層の魔オオカミも、目に着く限り、他冒険者とかち合わない限り、倒しまくった。
おお、大量の毛皮ゲットだぜ。
俺達3人、取らぬ狸の皮算用とばかりに、頭の中に、チャリン、チャリーンッと、お金の音が響く。
ホクホク顔で今日は引き上げることにした。
明日は5階層のオークだが、ボス部屋入れるかなあ。
このダンジョン唯一のボス部屋だから、みんな狙ってるんだよな。
攻略された後だったら、リポップするまで待たないとならない。
でも、先日、ギルドでボス部屋の噂を一つ聞いた。
今まで、オークキング一頭だけだったのに、キングの他、ジェネラル、メイジ、と3頭が出て来たという。
いつもと違うのに焦ったところで、エスケープボールを投げて、逃げたそうだ。
ただ、ギルドの正式発表にはまだなっていない。
ちなみに、ラリックのダンジョンは、エスケープボール持参推奨だ。
地元民が多いこのダンジョンは、ギルドも多少過保護である。
明日のボス部屋挑戦に控えて、今日は引き上げることにした。
5階層に降りる階段の踊り場にテントを建てる。
疲れて帰った時ほど、このテントのありがたみが分かる。
家の中で寛ぐがごとく、ゆったりと風呂、夕食と済ました。
「「「おやすみ」」」
3人それぞれ部屋に入り就寝に入る。
««おやすみ»»
前世達の声も聞こえる。
うん、おやすみ zzz




