そっちか
「エドワード様・・」
「私を見てくれないか」
「・・・」
「・・好きなんだ」
「なにを・・」
「おかしいだろう?君を見たときからどうしようもなく惹かれた。君に会いたくてここにも来ていたんだ」
「・・・」
「言えるわけがない。口に出してはだめだと我慢してきた。だけど君が結婚するかもしれない、外国に行って会えなくなると知ったら耐えられなくなった」
・・・ん?
「好きなんだ」
狂おしい恋情がこもった声に、葉っぱから顔を出して確認してみると、バートさんがテオを抱きしめていた。
「だめ!!」
思わず叫んで飛び出す。
引き剥がそうと手を伸ばした瞬間、もしかしてテオもバートさんを好きだったらどうしようと心配になり、動きを止めると
「今、僕の気持ちを疑ったな?」テオが笑う。
「だって・・もしそのほうがテオの幸せなら邪魔しちゃいけないと思って」
「だからアリスは可愛いんだ」ふわりと笑ってバートさんの拘束を解いた。
バートさんのだらんと下がった腕を見て、あの大きな腕をするっと解けるテオの強さを思う。
テオに引き寄せられバートさんに向き合ってから
「僕のかわいいアリスは『僕が本当に幸せなのか』を考えるんです。アリスだけが僕を幸せにしてくれるのに、アリスは決して『自分だけがテオを幸せにできる』とは考えない。僕はアリスだけが欲しい。どんなにアリスが変な勘違いをしておかしな行動をしたとしても、僕にはどうしようもなく愛しい」
「・・・」
「彼女は僕が男性を好きなら応援しようとしたことがあるんですよ。盛大な勘違いですけどね」
「・・・」
「諦めてもらえますか」
「疑問じゃなくて断定なんだな」
「はい。アリスだけが特別なんです」
「あの・・・」
「なに?アリス」
「レイラ様は・・」
少し下がってこちらを眺めているレイラ様を伺うと
「わたくしのことは気にしないで。知りたかったことを知れたから」
何が?とテオをに目線で問うと、人差し指を唇に当てて片目を瞑って合図された。なんという古典的な仕草。なのにときめいてしまう。テオのばか。
□ □ □
テオの誕生日、さっきまでシャーロットとアーサーもいたけれど、今は二人でゆっくり過ごしている。
「えっと・・レイラ様のこと教えてもらえるのかしら?」
「彼女はずっと想いを寄せていたんだよ、エドワードに。だけど、どうしても振り向いてもらえない。悩んでいたときイレーヌ嬢に相談したら「あなたにはいずれ王妃になってほしい」と言われたそうだ」
「イレーヌ様はご存知だったのね」
「両方から相談されていたらしいよ」
「で、愛人にしてって言うのは・・」
「色々はっきりさせたいから協力してほしいと言われてね。後でアリスに話すつもりでいたのに、まさかいるとは思わなかった」
「レイラ様は・・」
「落ち込んでないみたいだよ。気持ちに踏ん切りがついたんだろうね」
「私、つい飛び出しちゃった」
「アリス」
「うん?」
「誕生日プレゼントが欲しいな」
「渡しましょうか?」
「アリスからの特別なプレゼントが欲しい」
「特別・・」
「アリスが考える、僕にとっての特別なプレゼント」
「私が考える・・」
頭の中で口をパクパク開けてる自分が浮かんできて動揺する。で、できない。
「特別」テオがじっと見つめてくる。
テオの唇の両端を掴んで開くようにぎゅっと押してみたけれど、割と口は開かない。
うーん・・唇でこじ開けるのかしら。
必死に考えていると、テオがぷるぷる震えだした。
「え?」
「考えていることが手に取るようにわかって辛い」
「そ、そんなはずは」
「今、唇でこじ開けようか考えてただろう?」
「ええっ」
「唇、動いてた」
笑いすぎて涙が出てきたテオを軽くつねる。笑いすぎだわ。
笑いの発作が収まってからも、私のへそは曲がったままでテオを無視していたら捕まえられて、口の開け方を教わった。
「今度は私が開けてみせるんだから!」と宣言したら、「もっと練習が必要だと思うよ、お互いに」と言われた。
あと何回練習できるのかしら。




