疑う?
「シャーロット!」
私の部屋から出て、階下の涼しい部屋でお兄様の帰りを待とうと移動していたら、お兄様がちょうど玄関から入って来て、嬉しそうな笑顔でこちらにやって来る。
「お兄様の顔面幸せ力がすごい」
「心臓鷲掴みされてるわ」
ニコニコとシャーロットの前まで来たと思ったら抱き上げてくるくる回りだした。
「アーサー、目が回る!」
「来てると思わなかったから嬉しくてさ」
「私も会えて嬉しいわ。でもアリスの目の前よ」
「アリスはわかってるよな?」
「ええ。お邪魔だってこともわかってるから失礼するわね」
「さすが俺の妹!」
くるくる回るのをやめて、抱き上げたまま階段を上がって行くお兄様を見て、私まで嬉しくなる。お兄様の嬉しい気持ちって伝染力が強い。
□ □ □
ジュードの誕生日、みんながイーストン公爵領に集まった。私とお兄様が着くと、テオが出迎えてくれた。
「なんでお前が出迎えてるんだ?ジュードはどこだ」
「今は休んでるよ。朝早くにしごいてあげたからね」
「そういうことか」
「どういうこと?」
「まあ、ジュードへのプレゼントみたいなことだよ」
「テオの訓練ならジュードが喜びそうね」
「お前本気でそんなことを思ってるなら鬼だな」
「どうして?ジュードは強くなりたいっていつも言ってるじゃない」
「鬼決定」
「?」お兄様が言ってることがわからなくてテオを見ると、にっこり笑顔で「可愛い鬼だね」と言われた。鬼は否定してくれないのね。
客間に通されるとウイリアムとシャーロットがいた。お兄様はもちろんシャーロットへ一直線。ぎゅうっといきなり抱きしめた。それをウイリアムが見てびっくりしている。
「ウイリアムは知らなかった?」
「うん。でも・・なんの違和感もないね」
「そうなのよね」
「僕もアリスを・・」
「はいダメ」
「ぐう・・」
テオが私をじっと見つめてきた。
「な、なに?」
「・・・」
じっと見つめられることに耐えられず、思わず顔を手で覆ってしまう。でもこれだとテオの顔が見えないというジレンマに、少しだけ指を開いて隙間から伺うと、悪い顔で笑うテオがいた。
「何よその顔」
「アリスが・・」
「アリスだめ!!」
叫び声とともにウイリアムが私とテオの間に入り込む。
「ん?なにがダメなのウイリアム」
「テオに集中しちゃだめ!」
「え・・」
「テオを好きになっちゃ駄目だよ、アリス」
「ん?」
「僕、見たんだ。この前女性とデートしてるところを!」
「あら」
「あらって・・反応軽くない?」
「うーん・・何か事情があったのかな?・・なんて」
「相手が遠乗りのときの相手でも?」
「・・・あ」
「テオは駄目だよ。モテすぎるしアリスも心配だろう?」
「・・・心配?・・・うーん」
「僕なら心配ないよ!僕がだめならジュードでもいいぐらいだ」
「ウイリアムもジュードもモテるじゃない」
「テオとはレベルが違う!」
「うーーん・・」
「なんでここで笑い飛ばさないの?!」
「あ、ごめん。ウイリアムもジュードも魅力的よ?テオと比べることないわ」
「そうじゃない!」
「ええ?」
「テオなんて選ばないわって笑うとこだろう?」
「でも、テオはモテるけど浮気はしないと思う・・のよ?」
「なんでそんなに信じられるわけ?」
「テオはいつでも私を見て、助けてくれるから」
「っ!僕だって」
「そうね。ウイリアムも優しい」
「だったら」
「・・私が・・テオに見ていてもらいたいから。テオに助けてもらうのが好きだから・・かな」
「そんなの・・」悔しそうにうつむいてしまったウイリアムの手を握ろうと手を伸ばしたら、テオの手が伸びてきて私の手を掴む。
「アリスが成長してる!」シャーロットの呟きが聞こえた。
「褒めてあげたいけど、手が減点」
「ええっ」
「アリス、こんな浮気疑惑のある男やめとけば?」
「妹が言うと説得力あるわね」
「そうだよ」ウイリアムが盛り返す。
「ヤキモチやいてくれるまで、弁明したくないなあ」
「アーサー兄様、テオに『誠実』とは何かを教えてあげて」
「教える必要ないと思うぞ」
「アーサー」シャーロットの低い声が響いた。
「テオ、すぐに説明しろ」
「お兄様がどんどん調教されて・・」




