特大元気(愛情)玉
考えている
あれからずっと考えている
なんで律儀に守ったんだろう、俺。
毎日毎日頭の中がシャーロットでいっぱいんなんだが。触れてくるわけでもないのに、いちいち仕草に刺激されて頭の中が妄想でいっぱいになって、このままじゃフラフラと近寄って触れてしまいそうな気がする。絶対わざとやってるよな、あいつ。
今だって、俺の前に座って刺繍してるだけなのに、目が離せない。
時々布から目を上げて、俺を見る。何も言わない、何もしないくせになんかこう・・「ちゃんと『待て』できてるでしょうね」って言われてる気がするのは俺が変態かなんかなのか?
いっそ手を触れてみるか。いや・・でも武器(針)持ってるよな。刺される予感しかしない。すごい冷たい目で刺してくる絶対。もどかしさと針への恐怖が募る。
でも今はサロンで二人きり。じっくり話すチャンスだ。
「俺、シャーロットのこと毎日ずっと考えてるんだよな」
「あら」
「ずるくないか?」
「なにが?」
「俺ばっかお前のこと考えてるの」
「私にもアーサーのことを考えて欲しいの?」
「ああ。どうしたら考える?」
「そうね・・アーサーは私のことどんなふうに考えてるの?」
「それはありとあらゆる妄想を」
「ふふっ。詳しく聞くのは遠慮しておくわ」
・・・あれ?余裕そうに微笑んでるけど、少しだけ赤くないか。
「シャーロットに無理矢理キスしたらどうなるんだろうな」
「さあ」
「キスを返してくれる?それとも俺の唇噛んじゃう?」
「さあ」
「無理な感じ?」
「そんな質問に答えられるわけないでしょう」
「ってことは気持ち悪くはないと受け取る」
「ポジティブの塊ね」
「俺とのキス、想像してみてよ」
「いやよ」
「動揺してる今がチャンスだと思うんだよなあ」
「・・」
「ちょっとその布と針貸して」
「え?」
「武器は遠ざけておかないと」
「武器って」
「で、隣に座る」ストンとシャーロットにくっついて座る。
「近すぎるわ」
「で、俺の唇の感触を覚えてもらう」
「は?」
シャーロットの手を掬い取って手の甲に唇で触れる。
「これが手で感じる俺の感触」
「誰の唇でも一緒だと思うわ」
「だよな。だから次はここ」
手首の内側、血管が透けて見えるところにも唇で触れる。
「くすぐったいわ」
「まだ平気そうだな」
次は腕の関節の内側に唇で触れる
「っ!」
「今、俺のことで頭いっぱい?」
だいぶ余裕がなくなってきたのか、首を横に振って答えるシャーロット。こっちは頭ん中ずっと妄想でいっぱいだったんだからもう少し付き合ってくれ。
「こんなことをしても虫けらを見るような目で見てこないってことは、俺のことそんなに嫌いじゃないよな」次はどこにしようかと考えていたら、シャーロットが俺の頭を両手で掴んできた。
「ん?なんか嫌だったか?」
「まどろっこしいわ」
そう言って、俺にキスした。俺のファーストキスは奪われたのか。唇が離れた瞬間、今度は俺がシャーロットの頭を掴む。
「もっと奪え」
「え?」
シャーロットがどんなに俺から何を奪おうと、俺には特大の愛がある。
「奪いきれないほど、俺にはシャーロットにあげたい気持ちがたくさんある」
「なによ。アーサーのくせにかっこいいじゃない」
「お前、知ってる?」
「何を?」
「顔、すごい嬉しそうだぞ」
「生意気ね、アーサーのくせに」
「毎日、俺のこと考える?」
「そうね、考えてあげてもいいわ」
「もっと奪ってくれよ」
「どうしようかしら」
「え、お預け?」
「そうね!それがいいわ」
「無理。辛い。もっと」
「しょうがないわね。特別にアーサーからしても良くてよ」
「最高だな」
少なくとも今日1日は俺のこと考えるようにいっぱいしておこう。
□ □ □
ひ、ひゃー!
聞こえちゃったんだけど!!
なにあれお兄様がかっこいい上に可愛いんだけど!それにシャーロットとお似合いで嬉しい!だからもう少し二人きりでいさせてあげたい!
興奮が冷めやらないまま、扉をそっと閉め誰も入れないように立っている。気を抜くとつい顔が緩む。このままじゃ、部屋の前でニヤニヤしてる不審令嬢になってしまうわ。どうしよう、あと10分ぐらいしたらノックして入ればいいかしら。
「すごい挙動不審だよ、アリス」
「テオ!」
「なにやってるの?」
「え、ううん。特になにも」
「なんで入らないの?」ジュードもやって来た。
「そ、そろそろ入ろうかなぁ」気持ち大きめの声で答える。お兄様に聞こえていて欲しい。
「あ、でも!シャーロットとお兄様とウイリアムも待つつもりだったの!」
「中で待てばいいじゃないか」
「・・・そうね」
ゴン!と扉にぶつかってみる。
「何やってるの?アリス!」
「ちょっと足がもつれて」さすがに気がついたよね?
「ふうん」テオがなにかに気づいたような目で見てきた。




