無駄な評価
研究所に着いて、ライアンの部屋に通されると、中にウイリアムも居た。意外なことに、テオがウイリアムやライアンと研究についてあれこれ熱心に話している。その間に書類にサインして、いくつかの試作品に興奮していると、テオが「これ、アリスが考えたの?」と尋ねてきた。
「アイデアだけ私で、形にするのはウイリアムや研究所の人たちなの」
「いえ、土台の殆どを提案してくださるので、私たちは物質化しているだけなんですよ」
「そうだよ、アリスの発想はちゃんと実現化できる具体的なものだから」
「まあ・・そのあたりは住んでいた国の素晴らしさよね・・」
「なんて言ったの?」
「ううん、独り言」
なにやらテオにも具体的なアイデアがあるらしく、また来る約束をしているようだった。
□ □ □
「クッポ!」今日は覚悟をきめたわ。自宅についてすぐに呼び出す。
「私のステータスを教えて」
「やっとだね☆」
「あのオブラートに包まない表現の評価を聞くには勇気が必要だったの」
「そんな大げさな」
そう言ってふわふわ飛んでるけれど、あのステータスはなかなか尋ねる気にならなくて当然だわと強く思う。飛び方みたいにふわふわしてないじゃない、ドタドタしてるわ!
「じゃあまず、可愛らしさは・・」
「ちょ、ちょっと待って!最大評価はどのぐらいなの?」
「100だよ☆」
「わかった」
「じゃあいくよ☆可愛いらしさは」
ゴク
「70」
「高いと思うべきか低いと思うべきか絶妙のとこだわ・・・」
「じゃあ次!かしこさ」
「はい!」
「75」
「・・・」
「健康」
「うん」
「100!」
「や、やったー・・健康大事!・・」
「優しさ☆」
「はい」
「50」
「ひっく!・・え、どうしよう・・」
「意地悪!」
「ねえ、なんでこの項目あるの?必要ある?」
「知りたくない?」
「・・知りたいです」願わくばゼロがいい
「20」
「うう、情けない。辛い。恥ずかしい」
「色気!」
「はい!」
「60」
「え、意外と高得点。私のどこにそんな要素が?」
「根性!」
「それもせめてバイタリティとかガッツとか言い方あるのにね」
「80」
「高いわね。え、根性ある?私。精神的に強いとは思うけど」クッポにお菓子をあげながら、言われた数字をメモした紙を眺める。
「優しさは伸ばしたいけど、意地悪は減らしたい」
「アリスは誰かに意地悪したの?」
「うっすら心当たりが。テオに少し。あとディラン様には意地悪したとも言えるかも・・って、そもそもそんなちょっと意地悪したとかじゃなくて、底意地が悪いとかだったらどうしよう!立ち直れないかもしれない」
「大変だねー」
「今、クッポの頬を引っ張りたくてしょうがないんだけど、こういうところが意地悪なのよね、きっと」
「そうだよ!僕をひっぱっちゃダメ」
「・・・こちょこちょならいい?」
「ダメ」
「意地悪しないって難しいかも。辞書があれば意地悪って引くのに!」
「え、引けるよ?」
「え、引けるの?」
「ちょっとまってね・・・うん!えーっとね、悪口を言う、暴力、暴言、無視をする・人の足を引っ張る・困らせるとかだね」
「え・・それっていじめと似てる。私、そんなことしてる?」
「さあ?」
「悪口言ったことないとまで言えないかも・・怒ったら無視とかしちゃうかも・・・でもわざと人の足を引っ張ったり暴力暴言はしてないと胸を張って言えるわ。・・そんなつもりはなくても結果的に人の足を引っ張ったことはあるかもしれないけど」
やっぱり私は天使みたいとはとても言えない。
「はっ!私・・天使を目指してたんだった」
「僕、天使だよ☆」
「はい?」
「だから僕は天使」
「ん?」
「だーかーらー!僕は天使なの!」
「クッポは天使」
「そう!」
「天使ってこう・・赤ちゃんに羽が生えたみたいな・・」
「そんなの人間が考えたイメージでしょ?」
「そうでしょうね」
「僕も人間が考えたイメージだよ」
「・・そうね」
「天使が優しいなんて所詮イメージだよね」
「う・・ん」
「僕って優しいと思う?」
「うーーん・・無邪気だけど、優しいに特化してない気がする」
「優しくいようなんて思ってないもん☆」
「そうなのね」
「でも別に僕のこと嫌いじゃないでしょ?」
「ええ。数値は当てにならないなあとよく思うけど、クッポのことは大好きよ」
「数値教えてお菓子食べてるだけなのに?」
「確かにそうね」
「優しい天使なんて目指さなくて良いと思うよ。僕みたいに自分らしくふわふわしてる天使なら良いけどねー」
「クッポが初めて良さげなことを言った!」
「アリスって失礼だよね☆」
「クッポの数値もなかなか失礼なんだけどね☆」
ヒロインなのに可愛さ70って。100だと評価されても今度は妙にプレッシャーを感じそうな気がするので、やはり数値なんてあてにならないし頼りにするようなものではないと思った。




