嫌もいろいろ
思い知らされる・・か・・。
息をゆっくり吐き出すと、ドキドキうるさい鼓動が頭にまで響いて、体中の神経が過敏になってしまった気がした。
サンルームに二人で戻る。ジュードとウイリアムが探るような目で見てきたけれど追求されても困る。
「もうすぐジュードの誕生日だね。今年は何か欲しい物ある?」
「今年もアリスと二人きりで過ごしたい」
「い」いいよと答えようとしたら
「二人きりはダメ」テオが言った。
「僕も反対!」ウイリアムが言う。
「なっ・・」信じられないという顔でジュードが固まっている
「さっきアリスと二人きりになってたじゃないか!」
「確かに」
「僕もジュードの誕生日を祝ってあげる。可愛い弟子のため」
「ぐっ」
「じゃあ僕も祝う!」
「俺も祝ってやるよ」
「私は二人きりでもいいのに」
「アリス」強い目線でテオが見つめてくる。
「・・・み、みんなで集まれるの楽しそう!あはは」
「今後、僕以外の男と二人きりになるのやめてね」
「ええっ」
「それって僕も含まれてるの?」と低い声のジュード
「もちろん」
「なんでテオがそんなこと決めるわけ!?」
「決めてない。アリスにお願いしてるだけ。もう二度とアリスを手放したくないからね」
「お願い・・?」
「アリスが幸せならそれで良かったんだけどね。どうやらアリスは僕じゃないと幸せじゃないみたいだし」
「ふぇ?!」変な声が出た。
「わわ私、そんなこと言ったことないわ!」
「じゃあアリス、想像してみて。僕がアリスの世界からいなくなったらどう思う?」
テオがいなくなる?
嫌。そんなの嫌。
「嫌」
「ほらね」そう言って笑う顔が嬉しそうでなんとなく悔しい。
「アリス、涙目になってる・・」ウイリアムが言う
「う、うそ!」
「アリス、僕がいなくなったらどう思う?」
「ジュードがいなくなる?・・・嫌!」
「僕は?」
「ウイリアムも嫌!」
「アリス泣いちゃった」ウイリアムが涙を唇で拭おうとしたのか顔が近くなる。
「待て」テオがウイリアムの首根っこを捕まえた。
「あ、あれ?」
「ちっ。僕の印象が霞むじゃないか」
「ちなみに俺がいなくなったらどう?」
「お兄様がいない世界なんて嫌です無理です寂しすぎます」
「お前、この質問ならここにいる誰でも嫌って言うじゃないか、アリスは」
「バレたか」そう言って口元を隠すようにソファの背もたれに肘をついて横を向いたテオだけど、私の「嫌」には明らかに違いがあった。テオのいない世界は考えただけで心が抉られて世界から色が消えたのだから。
だけど・・まだどこにだって引き返せるしどこにだって向かっていける。・・はず
□ □ □
「さあ!なんとかデートは終えたし、納得はしてないかもしれないけど説得はしたわ!」令嬢に似つかわしくない勢いでリジーに報告した。
「・・・で?」
「次はあなたたちのデートよ!」
「心が弾まないんだけど」
「それは・・困ったわね。・・じゃあやめとく?」
「っ!・・・やめないわ」
「やだ可愛い!」ぼそっと斜めを向いてやめないと言う様子にキュンとする。
「前に進むにしてもやめるにしても、行動あるのみがポリシーよ」
「そういうところが好きなの」
「あなたに好かれてもね・・」
「ディラン様もリジーをちゃんと見たらわかるはず」
「あなたはどうなってるの?」
「思い知らされる予定よ」
「は?」
「テオが私を好きだということを思い知らされるらしいわ」
「え!あ・・あら?そういうことになってるの?」
「色々混線してるの」
「まあ、あなたが原因ならわかる気がするわ」
「で、いつにする?デート」
「今すぐはディラン様もお辛いんじゃなくて?」
「今だからこそ良いかもしれないわよ?」
「・・・夏休み中悩みたくないから、夏休み前がいいわ」
「わかった。じゃあ、会話のきっかけだけ作るからあとは二人で決めて」
「・・・そばにいなさいよ」
「さすがにその図太さは持ち合わせていないけど、善処するわ」
私なりに必死に考えて手紙を書くことにした。大体の日取りと二人が相談する場所と時間を決めてディランに手渡す。あとは相談する日に近くで待機しておけば大丈夫だろう。
今日は研究室に行く予定だけど、ライアンと二人きりになる可能性があるのでテオに話してみることにした。お昼休みにテオに話すと「もちろん僕も行く」と言われる。
「まあ、そう言われるかなとは思っていたんだけどね」
「うん」ニコニコ笑っているテオが不思議だ。
「なに?研究所が楽しみなの?」
「アリスがちゃんと僕のお願いをきいてくれてるのが可愛くて」
「!!」
「・・・きかなくて良かった?」
「きいてくれないなら、きいてくれるまで説得するけど」
「・・・」
「あ、なんか良からぬことを考えてるだろ」
「別に」
「そうだなあ・・僕が何かアリスを怒らせたらお願いを無視しちゃおうかな・・とか?」
「なっ!」
「怒らせないように気をつけるよ」
「ずるい」
「何が?」
「言わない」
「当ててみようか?」
「や・・やめて」
「わかった」
そういってふわりと笑う顔に、強引に見えて私の感情を優先させてくれる優しさがずるいと心で文句をつぶやいておいた。




