好き、好き、好き
「アリスは何をしようとしているのかな?」
こめかみに青筋たてたジュードが現れた。
「あはは」アリスは笑って誤魔化そうとした。
「いつもの残念なアリスがお兄様を使って実験をしようとしているのよ」シャーロットが手助けした。
「そうだ、ジュードもやってみろよ」テオが良からぬことを思いついた。
「二人を並べて比較するなんて、極悪外道の所業だわ!」どうせやるつもりだったくせにアリスが良い人ぶった。
「いいよ、やる」ジュードが違う攻め(責め)方に変更した。
・・・って好きだったRPG風に考えるぐらいの余裕はあった。ここまでは。
「どっちが先にやる?」
「僕もやる!」ウイリアムが現れた。
さすがにここまで大人数でコソコソするには無理があり、お昼休みにサロンに集まることになる。
「なんか大事になったから実験中止でいいんだけど」と困っていたら
「あら、面白そうじゃない」とシャーロットが笑うので、
「じゃあ、シャーロットはアーサー兄様で壁ドンね」と言うと、挑戦的な目で「よろしくてよ」と言われた。さすがシャーロット。
□ □ □
ランチを終えたサロンの壁際、まずはウイリアムが「1番目にやりたい」と手を挙げる。
「壁際に追い詰めてアリスに迫れるんだよね?」と確認される。
「ウイリアムが言うと悪い予感しかない。フリだけでいい。軽くでお願い」
「わかった」
ドン
右手を壁に手をついたウイリアムを見上げると、ドン!と今度は左手も壁について私を閉じ込めてしまう。
「と、閉じ込めないで」
「アリスを僕だけのものにしたい」眼の前でささやくウイリアムの顔は真剣で、こんな実験をしたことを激しく後悔する。
「ごめん。ウイリアムの気持ちには答えられない」はっきりそう答えると
「わかってる!でも好きなんだ」と目を潤ませて私にもたれかかってきた。
「ごめんね、ウィル」
「ぼくこそごめん」そう言って私の頬にキスする寸前、みんなに引っ張られてウイリアムが離れた。
「ほんっと犬だな」呆れたようにお兄様がウイリアムを引っ張って席に座らせる。シャーロットが無言で私の脈をとる。
「ごめん、テオに軽くやってもらうだけのつもりだったの。もうやめない?」
「やめない」そう言ってジュードが私のそばに来た。
「次は僕」
ドン
左手を私の顔の横について、私の顎に手をかけた。
「え?」ジュードがこういうことをするなんて
「アリス、好きだ」真剣なジュードの瞳から目が離せない。ジュードの右手が私の顎から離れ、耳からこめかみ近くの髪を撫でる。
「いつもみたいに頬を摘まないの?」
「いつもと同じことをやってもドキドキしないだろ?」
そう言って微笑むジュードに今まで感じたことのない艶っぽさを感じてドキリとする。
どうしていいかわからず固まっていると、シャーロットが近づいてきて脈をとり「アリス、顔が赤いわよ」と言った。
「少しはドキドキした?」いたずらが成功したみたいに笑うジュードに「結構脈がはやいわよ」とシャーロットが答えるので何もごまかせない。
「次は僕だね」
「も、もう充分です・・」断ろうとしたのに
「ちゃんと比較しよ?」と悪い笑顔で手を掴まれる。
ドン
綺麗な顔がすぐそこにある。みんなからは離れているし、テオの影で私は隠れているから見えないだろう。これだけの状況を捉えて判断できている私は「冷静沈着」と言えるのではないだろうか。
冷静の向こう側にはなかなかいけないものだな、なんて思う。実験協力ありがとうと伝えて終わろうと思ったとき、テオが耳元で囁いた。
「アリス、好きだよ」
心臓が痛いほど大きく跳ねる。驚いてテオの顔を見ると、全然ニヤニヤしていなかった。流れがあるとはいえ、テオが「好きだ」なんて言うと思わなかったから。
「いつもの冗談だよね?」テオのことはテオに尋ねなければ。
「本気だよ」そう言いながら私の唇を親指で触れるか触れないかギリギリの間隔で撫でた。
「!!」
シャーロットがいつの間にか脈をとる。「史上最速」「史上最赤」小声でつぶやいているけれど、私は唇がくすぐったくて座り込んでしまいそうになる。
「やっと効果あったな」と私の頬をムニムニ触って満足そうに笑うテオに、いつものように言い返す言葉が浮かばない。指先でムズムズする唇を押さえてうつむいていると、明るい声が響く。
「よし!じゃあ次は俺だな!」
「この空気を読まないアーサーって最高ね」
「シャーロットの脈、ちゃんと取れよアリス」
壁際にシャーロットの手を引いて移動して
ドン




