特技は撹拌もしくは破壊
月曜日、教室にはギリギリに入るように着く。リジーには手紙を出しておいた。ディランが何か行動する前にリジーに説明したい。幸いその日はリジーと私に空き時間があり、その間にサロンでディランの奇行を説明する。
「ディラン様のご乱心です」
「手紙には書いてあったけれど、理解できないし疑問だらけだわ。一体どういうこと?」
「私に好意があると宣言して、何度お断りしても全く聞き入れてもらえません」
「なぜ」
「私にわかるわけないでしょう?近寄ったりしていないもの」
「好意があって近づくまでは理解できるわ。でも断られて引かないって・・」
「リジーに知っておいてもらいたいのは、私は今後どのようなことがあってもディラン様の気持ちに答えることはないということ」
「あなたもどうしてそこまで拒否するの?」
「私は自分の気持ちにきちんと向き合うと決めたの。そこにディラン様が入る余地はないわ」
「・・そう」
「人の気持ちって他人がコントロールできるものではないでしょう?」
「そうね。今はそう思っているわ」前は私のことを押さえつけようとした反省がこめられている。
「だから、ディラン様のお気持ちを変えることはできないかもしれないけれど、私は誠心誠意お断わりします。それを知っていて欲しかったの」
「・・わかったわ」
「ねえ・・参考までに教えて欲しいのだけど」
「何かしら」
「男性を恋愛対象として好きになる気持ちってどんな感じなの?」
「は?」
「わからないの。何がどうなったら恋愛の好きになるのか」
「頭で考えてもわからないと思うわ。・・そうね・・その人のことばかり考えてしまったり、その人に言われた言葉が嬉しくて忘れられなかったり、その人の声が心地良かったり、ただ見た目が好みだったりじゃない?」
「うーん・・それでもよくわからないわ」この際、疑問をぶつけてみることにする。
「ドキドキしたら好きなの?」
「相手を独占したいと思ったら好きなの?」
「かっこいいって思ったら恋なの?」
「恥ずかしいときのドキドキと、照れてドキドキするのとの違いってなに」
「キスを許せる相手なら好意があるの?それに関してはもう悟りの境地なのだけど」
「あなた、完全に頭で恋愛しようとしてるわよ」呆れたようにリジーが言う。
「そうね・・・自分を幸せにしてくれそうだからという基準で選ぶ恋だってあると思うわ」
「どういうこと?」
「女性はどうしても男性の見た目以上に経済力や包容力も求めてしまう生き物だと思うの」
「ふむふむ」
「自分のことを好きだとはっきり言ってくれるから好きになることもあるだろうし、見た目にも経済力にも惹かれて結婚しても、自分だけを見てくれないと辛くて狂ってしまうことだってあるでしょう?この人を幸せにしたいと思う恋もあれば、幸せにしたいと強く思ってくれたから好きになることだってあると思う」
「結局、理屈じゃないのよ。頭で恋愛なんてできない」
「わたくしにわかるのはこの程度よ」そう言って疲れたようにため息をついたけれど、かなり親身になってリジーは答えてくれた。
「私、やっぱりリジーが好きだわ。いっぱい答えてくれてありがとう。結局、恋心はさっぱりわからないけれど」
「わたくしの時間と労力を返して・・」
「じゃあ最後の質問。リジーがディラン様を好きな理由は?」
「そうね・・理由なんてないけれど、まず第一に顔が好み。あとは真面目なところ。家柄もお互い釣り合いが取れているわ。・・ちょっとまって・・・わたくし・・たったこの程度で好きだと騒いでいるのかしら・・混乱してきたわ」
「なんとなく・・ごめんなさい」そう謝ったけれど、リジーはぐったりしてしまいトボトボ歩いて食堂の前で分かれた。
□ □ □
頭で考えないってどういうことかしら?あれこれ法則や理屈を考えるのが好きな私にとって、難しすぎる気がしてついつい考え込んでしまう。
あ!!いいこと思いついた。明日はダンスレッスンの日。ちょっと実験してもいいかしら。
□ □ □
「テオ!私に壁ドンして」
「・・・またおかしなことを考えたな、アリス」
「そ、そんなことないわ」
「まあでもいいよ、面白そうだから」
「じゃあちょっとこの隅の方で。シャーロット、見ていて」
「はいはい」
「で、壁ドンってどうやるの?」
「両手で囲われるとさすがに人の目をごまかせないから、片方の手を壁についてこう・・甘い雰囲気でお願い」
「それを見なきゃいけない私って・・」
「人目のないところでこんなことしたら大問題じゃない!」
「アリスってどうしてこう肝心なところがずれているんだろう」
「駄目よお兄様。アリスは残念モードになるのが面白いんだから」
「残念モードって・・。あ、シャーロットは私の手首で脈を計って」
「はいはい」
「テオ、どうぞ」
ドン




