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転生したら天使のように優しい令嬢になったけどごめんなさいそんなに性格良くないので期待しないでください  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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不具合修正

いつまでも同じところで立ち止まっているのは嫌。前に進むために必要ならば、一度後ろに下がったっていい。だから、


「ジュードを傷つけることになっても、失うことが怖くても、婚約解消を選ぶ」


 そして想像してたよりあっさりと婚約解消が成立した。若いから、記憶が戻ってお互いを好きならまた婚約しましょうと両家の親が和やかに話している。ジュードは機嫌が悪くなると心配したけれど、意外にスッキリした様子だった。もしかしたら、婚約はジュードも執着という名の鎖で縛り付けていたのかもしれない。重かった気持ちも少しずつ、日に日に軽くなる。もう少し軽くなったらみんなに報告しよう。


□  □  □


 今日の美術は油絵だ。題材を決めて描き始める。テオと一緒だからか、サウサンク領の湖が浮かび、初夏の陽射しがきらめく湖面を描いていく。何度も何度も丁寧に絵の具を重ねる。小さい頃から何度も訪れているあの湖。完成には程遠い段階で授業が終わる。


 テオと馬車へ向かっていると、ジュードとバッタリ出会った。剣術でけが人が出たらしく、授業が終わったんだと説明するジュードがどんどん歪んでいく。あれ?これ・・私の頭がおかしいのかな・・目の前が真っ暗になる。


 まるで海を漂っているみたいだった。意識が現実ではないところを浮かんでは沈む。あおいの記憶が海の中に見える。歯を食いしばって耐えて頑張ってる、すごい!私こんなに頑張ってたんだ。でもそんなに力入れて頑なに一人で頑張ろうとしないで、ふっと力抜くのも大事だよ。


 ゆらゆら揺れて水から浮上する。空にアリスの記憶が見える。ひたすらで少し強気。

 テオにいちゃまに構って欲しくて後ろを歩いてる。あの日はついてきちゃダメと言われたのに勝手についていったの。気がついたら怖い犬に襲われそうになって、テオにいちゃまが私を背中にかばい助けてくれた。だけど、テオがすごく悲しそうでそのことが辛くてもうテオにいちゃまを追いかけちゃダメだと思った記憶。


 同じ場面でジュードが助けてくれた記憶。2つの記憶はそれぞれの背中を見ている。だからはっきりとはわからないけれど、犬を気絶させたのはテオなんだろう。


 やはり記憶は2つある。これがきっと私のバグ。どちらかの記憶を選ぶのだ。


 ゆらゆら、アリスの記憶とあおいの記憶の境界線が曖昧になる。ああそうか、私はあおいでありアリスなんだ。世界線が違うけれど、どちらも私。あの時、単にあおいの記憶を取り戻しただけなのかもしれないし、別次元、別世界の『私』が接触しただけなのかもしれない。記憶の境界線が溶けるように混ざっていく。海も空も、気がついたら消えていた。意識がゆっくり浮上していくにつれ、誰かの声が聞こえる。この声は・・


「アリス!」

「ジュード」重い瞼をゆっくり持ち上げると、心配そうに私を覗き込んでいるジュードの顔。

「あれ?私・・」

「急に倒れたから保健室に運んだ」反対側から聞こえるテオの声に頭を動かす。こちらも心配そうに覗き込んでいた。


「ごめんね。ありがとう」

「起き上がって大丈夫なのか?」

「うん。少し頭がいたいけど大丈夫」

「倒れる前に受け止めたから頭は打ってないはず」

「アリス?」


「・・思い出したの」

「ん?」

「ジュードのこと、全部思い出したよ」やっと・・やっとジュードのことを全部。

「・・本当に?」

「うん!私、ジュードのことが大好きだったね」


 その瞬間、ジュードに強く抱きしめられた。ジュードの香りに包まれて懐かしさに目眩すら覚える。そっと背中に手を添えると、さらに強く抱きしめられて息が苦しくなってきた。

「く、苦しい」

「あ、ごめん」おでこをくっつけて笑い合う。そう、私たちはいつもこうやって笑っていた。まだまだ幼かったのだ。しばらくその懐かしさに浸る。


「あれ・・テオは?」


(テオ)


 見ていられなかった。可愛いアリスがとびきりの笑顔でジュードを見つめ、ジュードに抱きしめられて、ジュードとおでこを合わせる光景を。何度も何度も見てきたその光景を、なぜ今僕は見ていられないのか。目を逸らし、そっと部屋を出た。


(アリス)


 テオが消えた。いつもいつも私を助けてくれるテオが部屋から黙って出ていくなんて不自然な気がする。心に小さい引っかかりを覚えながらも、目の前のジュードに視線を戻す。

「もう体は大丈夫だから、今日は帰る」

「わかった。送っていくよ」

二人でゆっくり馬車に向かう。時折ジュードを見ると、ジュードも私を見る。


「あ!」あることに気がついた

「どうした?」

「ジュード、嘘付いたね」

「え」

「心当たりあるでしょ?」

「い、いやあ?」

「ほら、目を逸らした」

「あのことかな・・?」

「私達、キスしたことない!」

「ほ、ほぼする予定だったんだ!」

「ジュードが私に嘘つくなんて」

「ごめん!!悔しかったんだ」

「婚約してたとはいえ、私たちは恋愛していたわけじゃなかったんだね」

「え」

「じゃあ、また明日」


 馬車に乗り込み少しでもはやく家に帰りたかった。記憶が戻り、バグが修正されたならきっと・・

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