フェロモン考察
(テオ)
・・そうきたか。アリスが何をしてくれるのかとワクワクしながら策を弄したが、仲良し推進してきたわけか。ちょっとやりすぎたかな?でももう少し遊びたい。
「まあ、昔からよくある嗜好ではあるよな」
「まっ、まさかお前俺のことをそういう目で」
「ない」
「無駄にドキドキして損したわ」
「あれ?お前、そっちの人?」
「ちっ!違う!」
「怪しい」
「お前さ、自分からフェロモンみたいなの溢れてる自覚あるの?」
「は?」
「無いのか」
「なにそれ」
「お前のフェロモンを採取して媚薬にでもして売ったらかなり儲かる気がする」
「それって、男にも効果あるのかよ」
「その気はないのに謎にクラクラするんだよ。なんなんだよあれ」
「やっぱお前そっちの人なんじゃないの?」
「違うって」
「フェロモンでどうにかできるなら、アリスが僕に落ちてないのおかしくない?」
「アリスはまだ中身が子供だよ」
「それは確かに」
「今はフェロモン出てないな」
「いつ出てるんだ?」
「お前この前からわざと俺のことを見てないか?アリスの前で俺を見つめてくるときは大体出てた」
「へえ?」
「やっぱりお前・・俺のことを」
「ない」
「じゃあアリスの前で出るのか?フェロモンの無駄だな」
「今度ちょっとアリスの前でアーサーを抱きしめていい?」
「アリスがさらに俺たちのカップリングを勧めてきそうなんだが」
「フェロモン出てたら教えて。アリスに試してみるから」
「ほんのり俺が可哀想な感じがするのはなんでだ」
「やっぱりお前、そっち側なんじゃ」
「テオのバカ!」
「ついに認めたか」
□ □ □
さすがに色々問題あるかとアーサーの部屋で実験することにした。実験だということはアリスには内緒にしておく。どうしても少し悪戯したくなるんだよな。
アリスを呼び出しておいて、アーサーを抱きしめながら待つ。
「お前これ完全に誤解されるだろ」
「だな。フェロモン出てる?」
「全然出てない。単なる抱擁」
「じゃあ意味ないか」ノックの音がして、一旦離れる。
アリスが入って来たところで、アリスを見ながらアーサーを抱きしめた。
「テ、テオ?」アリスの驚いてる顔が可愛くてたまらない。
「うわっ!出た」
「人を化け物みたいに言うなよ」
「アリス、ちょっと来て」
「・・・?」首を傾げながらもちゃんとこっちへ来る。
「ごめんね」そう言いながらアリスを抱きしめた。
(アリス)
テオの色香がすごくてクラクラする。熱と香りの両方で脳と神経が揺れる。
「テオ?」
「ちょっとだけ」テオの肩越しにお兄様と目が合う。
お兄様、なんか寂しそう?なんでお兄様とテオが抱き合ってたんだろう。もしかして、二人は想いが通じ合ったのかしら?それならなぜ私が今抱きしめられているの?感極まって私に抱きついちゃったのかしら。頭に浮かぶ色んな疑問でいっぱいになったころ、テオが離してくれた。
「アリス、なんともないか?」
「何が?」
「テオからフェロモンみたいなの出てなかったか?」
「あ、出てた。クラクラしました」
「その割に平気そうだな」
「考え事で忙しかったから」
「アリス」テオが覗き込んでくる。
「僕にドキドキしない?」
「ドキドキする。いつも色香がすごいなあと。それよりも、二人はなぜ抱き合ってたの?」
「実験。僕の色香みたいなのって、どうやらアーサー相手に出ないみたいだよ」
「え・・そうなの?」
「アリスだと出るみたい」
「・・・?」
「これって僕がアリスを好きな証拠かも」
「・・・?」
「根本的に色々間違ってたかも?」
(テオ)
黙り込んで必死に考えているアリスから煙が出そうだ。そろそろ誤解を解く頃合いかな。
アリスで遊ぶの楽しかったんだけどな。
(アリス)
お兄様相手に色香は出ない・・。必死に記憶を手繰り寄せてテオとお兄様の場面を探す。
これといって決定的なものには辿り着けず、自分の推理に自信がなくなった。
でも・・・テニスのときに見せたあの激情は絶対誰かを想ってのはずだもの。
きっとお兄様とはプラトニックな愛なのだ。体の欲を切り離した崇高な愛。
「男性は、好きだという気持ちと肉体を切り離せるのですね」
(アーサー)
今すごいこと言わなかったか、アリス。
(テオ)
そうきたか。やっぱり僕とアーサーをくっつけたがるんだな。
□ □ □
ランチの後の空き時間をどう過ごそうかなと思いながら一人で廊下を歩いていたら、前からハンカチくんが歩いてくる。すれ違うときに会釈をして数歩、「あの!」と声がした。
振り向くと「少しお話できますか?」と言われた。思わず周りを見渡して、本当に私に声をかけたのか確認してしまう。どうやら私のようなので「はい」と答えると、近くの空き教室へと誘われる。
戸惑っていると「僕のこと覚えていませんか?」と訊かれた。
「ハンカチを落とされたときのことですか?」
「いえ、もっと昔のことです」
「いつ頃のことでしょう?」
「9才の頃です」
「・・・」必死に考えても何も出てこない。
「凶暴化した犬に襲われそうになったときのことです」
「・・え?」
「覚えていないのですね」
「私が犬に?」
「はい。僕も含めて数人子供がいて、そこに凶暴化した犬が」
「全く記憶にありません」
「・・そうですか」
「あ、でも・・私・・記憶喪失なんです」
「記憶喪失?」
「はい。一部の記憶が戻っていなくて。もしかして、あなたが助けてくださったんでしょうか?」
「・・いえ」
その後の会話が続かず困ったので「もし思い出したら報告しますね」と言って教室を出た。考え込みながら歩いていると今度はイーサンとばったり出会う。
「アリス!来年もテニスの授業とる?」
「他の授業と組み合わせが悪くなければとるつもり」
「もし一緒ならまたペア組もうよ」
「ぜひ」イーサンとは良い友だちでいられそう。
「あ!そうそう、尋ねようと思ってたんだ」
「何?」
「8歳か9歳ぐらいのとき、犬に襲われなかった?」
「・・え?」




