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数値と匂い

 翌週テニスのシングルス大会があり、結果は3戦目で敗退した。なんだか視線が痛かった。テオと関わることで社交倶楽部のマナーがいきているけれど、ジュードに好意を寄せる令嬢たちが増えたからだろうか。


とにもかくにも、秋のイベントが終わった!!


「クッポ!」

「はーい」

「いよいよこのときがきたわ!」

「なになに?」


「対象者全員のラブゲージを教えて」

「やっと!」

「もう完全にルートから外れてる相手もいるけど知りたい」


「じゃあ誰から聞く?」

「無難なアーサー兄様から」


「アーサー35!」

「び、微増」


「次は誰にする?」

「ウイリアム」

「33!」

「微増2」


「次はイーサン」

「イーサン45!」

「テニス効果・・」


「ディラン」

「50!」

「なぜ上がる」


「全く興味ないけどルーカス王子」

「5」

「ものすごくほっとする数字だわ」


「では問題のテオ!」

「65!」

「うん、そんな気がしてた」


「そしてジュード!」

「110!」

「・・・」


「ねえ、ジュードは一体どうなってるの?」

「すごいよね!」

「テオとの接触増えてるのに順調に下がっていくのね」

「そうだね!」

「なぜだかわかる?」

「わかんない!」

「だよね☆」


 ジュードは祝福のキスが関係してるのだろう。テオはもしかして・・。


「あれ?」

「どうしたのー?」

「なんか数値を知る意味が行方不明に・・」

「ひ、ひどい!」

「私の数値は今もわからないまま?」

「う、うん」

「・・・」

「冷たい目で見るのやめてー」

「あ、ごめんごめん」クッポは可愛いし触り心地最高だから。


 テオを祝福するために頬にキスしたけれど、なんともいえない気持ちになったのだ。罪悪感みたいなものが混ざった困惑。ジュードにしたときと明らかに気持ちが違う。行動してみないとわからない気持ちもあるのだと知った。


□  □  □


「シャーロット!今日は一緒にランチできる?」

「ええ、大丈夫よ」寒くなってきたので、外に食べに行くことが減り、王子と注目を浴びずに逢瀬を重ねることが難しくなっているようだ。人で賑わう食堂の隅で大事なことを尋ねる。


「この前、私が天使じゃないって言ってたでしょ?」

「ええ」

「あれってどういうことかと思って」

「アリスが目指している天使ってどういうことを指すの?」


「えーっと・・両親が言うには、誰にでも優しくて明るくて・・たぶん臭いとすら感じないような人のこと」

「ちょっと待って。最後になんか変な条件が出てきたわ」

「うーーん・・普通ならイライラしたり怒ったりするようなことでも、マイナスの感情なんて感じずニコニコしていられるような・・」

「臭いに繋がらないんだけど?」

「怒りや他人への批判なんて全く無縁の人って、臭いものに触れても心の中で臭いとさえ思わないんじゃないかと思って」


「以前のアリスは臭いとすら思わなかったんじゃないかと思ってるってこと?」

「まあ、匂いの話ではないけれど・・ピュアで怒りとは無縁ってイメージではあるかな」


「性格は優しくて明るいと思うけれど、誰にも不満を抱かず怒らずってことはなかったわよ」

「え、そうなの?」

「ジュードに近づく女の子がいたら、突き飛ばしてたけど」

「ええっ」

「誰にも怪我をさせたりはしてないけれど、ジュードの手を握って二人で遊ぼうとした女の子を突き飛ばしたり腕を引っ張って邪魔したり、私が知ってるだけで10回ぐらいはやってるわ。まあ小さい頃の話だけどね」

「そ、そのことを私の両親は知らないのかしら?」

「どうかしらね。あなたがジュードを大好きなことは周りの誰もが知っていたから、それに挑んでくる女の子達はなかなか意地悪だったという面もあるしね」


 シャーロットがしばらく考え込む。


「優しいのは飛び抜けていたかもしれないわ」

「優しい子が人を突き飛ばしたりする?」

「街に遊びに行ったとき、転んで泣いてる子がいたら声をかけて親を探してあげたり、怪我をしていたら手当をしてあげたり、そういう優しさね」


「ああ・・それなら記憶にある。特別なことでもないけれど」

「何を言ってるの?」

「え?」

「貴族令嬢でそれをできる人はなかなかいないと思うわ」

「平民なら誰でもすることでしょ?」

「あなたは平民じゃないわ」それはそうだけど、あおいの記憶ならみんながやることでしかない。


「ジュードに関してだけは感情が抑えられなかった・・とか?」

「それはあると思うけれど・・」

「例えばシャーロットは、ルーカス王子が臭かったらどう思う?」

「ルーカス様が臭いわけないじゃない!」

「あ、そうね。例えが悪かったわ。テオが臭かったら?」

「テオ兄様が臭いわけないじゃない!」

「ごめんなさい。じゃあウイリアムが臭かったら?」

「臭いって言うわよ」

「ウ、ウイリアムごめん」


「それは普段ウイリアムが臭くないって知ってるから言えることで、普段から臭いなら言わないわよ」

「一旦臭いとは認識してるってことね?」

「アリス、変な思い込みをしていない?人間である限り、嗅覚の差はあれど臭いと感じたものを臭くないと思い込むのは無理じゃなくて?」

「あ、嗅覚の話になってる!ごめんなさい」


「性格の話に戻すわね。例えばウイリアムの性格でどうしても許せないほどの欠点があるとして、それを受け入れられるか、常にそこが気になって心で批判してしまうかっていうことなの」

「ええ?」

「あ、あれ・・?なにかこんがらがってきたような」


「とにかく、なんでもニコニコ怒らず天使のようってことはなかったわ」

「がっかりしていいのか、喜んでいいのかわからなくなってきた・・」


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