手のひらの糸
思い出は
ひとかたまりにあるのに
そこにいたはずの人々は
散り散りとなって
わたしも
だれかの
散り散りとなった一人で
細い糸を手繰る
各々
鈍く光る鋏を握るのを
知りながら
今が過ぎれば
たやすく
断ち切られてしまう
覚悟で
それでも
わたしは
出会えてよかった
あなたに
出会えて
よかった
この糸が
もうどこにも
つづかなくても
それは
わたしの
本当だから
独りよがりだと
笑われても
いつかは
ひとり
ひとり分の出会い
ひとり分の別れ
よかった
あなたに
出会えてよかった
それが
手のひらに
残る
わたしだけの 本当