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07 社交会へ

 不思議なことにレティシアが良く笑うようになると周りも変わった。

 最初は義父オスカーだ。レティシアのマナーや態度の悪さに渋い顔をしがちだった彼も彼女の変化に気付くと、何くれとなく、気遣いの声をかけてくれるようになった。


 

 そして、ある日、義母からも声をかけられる。

「ねえ、レティシア、一緒に刺繍をしない? 貴族令嬢のたしなみなのよ」

「はい、ぜひ」

 ここに来た最初の頃はオデットもよく構ってくれたのだが、最近はそれもなかったので、嬉しく思う。それから週に二度は彼女と二人で刺繍をするようになった。

 

 自分が変われば周りも変わる。それならば、やはりミザリーはずっと天使のままでいてくれるはず。


 シュミット家は、レティシアにとってだんだんと気持ちよい居場所になった。礼儀がなっていなくても愛嬌をふりまけば、皆レティシアを温かい目で見守ってくれる。


 ただひとり、義弟だけは変わらず、レティシアに冷たかった。未だに晩餐の時間はレティシアの食器の音がガチャガチャとうるさい。他の家族は何も言わないが、義弟のリーンハルトだけが睨みつけてくる。彼はマナーに厳しい。


 しかし、前回、リーンハルトとはこの家で接触があっただけで、後はかかわりを持たなかった。彼との関係は極めて薄い。

 

 この家でミザリーは家庭教師の元で勉強をしていたが、彼はどこかの学校に通い始めていた。だから彼は例外としてスルーした。全員に好かれるなんて疲れてしまう。放って置くことに決めた。

 彼ににこにこと微笑みかけると、冷たい眼差しを返される。あの冷えきったアイスブルーの瞳で見つめられると凍えそう。


(ほんと、なんでだろう? 他の殿方は喜ぶのに)



 レティシアは茶会や夜会にも積極的に参加するようになった。ミザリーがフォローしてくれるけれど、最初の茶会での失敗が尾を引き相変わらず令嬢達にはろくに口を利いて貰えないし、意地悪だったが、令息たちは次第に親切になって行った。

 

 自分が微笑めば、周りも微笑む、どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのだろう。


 十五歳で社交デビューするとひっきりなしにダンスを申し込まれるようになった。勉強は苦手だったが、ダンスは得意だ。


 そして彼らの話に耳を傾け、微笑んだ。そのうち殿方はほんのちょっと体に触れられると喜ぶことに気が付いた。よろけるふりをして、腕に触れたり、暗い場所で二人きりで話をするのも好きなようだ。

 

 舞踏会で踊り疲れると、誰かしら、甲斐甲斐しく軽食や果実酒を持ってきてくれる。皆がレティシアの世話を焼いてくれた。相変わらず令嬢達に嫌われているけれど、殿方にはほめそやされていい気分だ。

 

 彼らに好かれるのに、何もミザリーのように美しくある必要はない事に気付いた。微笑んで話を聞いてあげればいい。それだけだ。しかし、己の髪色にはコンプレックスがあったので、少しパウダーをかけて色をつける。


「レティシア、忘れないで、君の婚約者は、僕なのだから」

とトレバーが赤くなってやきもちをやく。初めてのことでレティシアは有頂天になった。自分は愛されている。


 舞踏会はレティシアの独壇場となった。



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