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48 守るから

 レティシアは討伐隊に参加して、けが人を癒している間にも自分はまた二十歳目前で死んでしまうのかなという思いは頭の片隅にあった。


 結局今回は何もかも放り出して、リーンハルトについてきてしまったので、原因は分からずじまいだ。

 

 前回は呪いではないかと疑ったが、結局レティシアの代わりにリーンハルトがトレバーに殺されてしまった。


 自分なりにいろいろと考えてみた。

 まず、トレバーの言っていた「あの人」とはミザリーのことではないかと推測を立てた。

 それから自分の代わりに誰かが死ぬことで、助かるのだろうかと――あの時レティシアは自死しなけば二十歳の誕生日を迎えていた――そんな考察もした。ただそうまでして生き延びたいと思わない。あんなことは二度とごめんだ。

 


 それに前回はミザリーが関与していたという決定的なものがない。そのうえ、リーンハルトがミザリーは魔力持ちではないといっていた。



 だとしたら、人を操ることが上手いのか? そういえば、黒魔術は精神を操ると前回聞いた覚えがある。しかし、ミザリーは魔力持ちではない……。結局、思考は堂々巡り。


 とりあえず考えるのは討伐隊の任期が終わってからだと思った。


 生き死にを繰り返して来たせいか、恐怖に追われてとか、どうしても助かりたいとかという思う気持ちが希薄になってきている。


 戦場に身を置いているせいかもしれないが、リーンハルトが無事ならばとりあえずはいいと思ってしまう自分がいる。


 ここに来てからの毎日は目が回るほど忙しい。レティシアは休みになると一日寝てしまうこともある。その休みすら、けが人が多いと潰れてしまう事もあった。

 今は目の前にある仕事を一生懸命にこなしていこうと決めていた。

 



「リーンハルト、これ」

 レティシアは食堂にいるリーンハルトにアミュレットを渡した。

「ああ」

 

 リーンハルトは短い返事をして受け取る。きっと彼はアミュレットをレティシアに返したいのだろう。


「気を付けて行ってきてね」

「心配し過ぎだ。レティシア、あまり無理するなよ」


 そう言ってリーンハルトが去ってから十日が過ぎた。


 彼と会えないことは普通で、討伐隊はその名の通りたいてい魔獣狩りで外に出ている。特にリーンハルトは負傷することなく帰って来るので、忙しいと顔を合わせないこともしばしばだ。


 遠くから、リーンハルトの無事な姿を確認して仕事に戻る。そんな事の繰り返し。あまりしつこく付きまとっても彼のストレスになってしまうだろう。


 少なくともここではレティシアが困っていれば手を貸してくれるし、普通に口もきいていくれる。

 


 レティシアが午後の休憩をとっていると、リーンハルトとよく一緒にいるロベルトがやってきた。


「レティシア嬢。君の弟を見なかったかい?」


 彼は伯爵家の出なので、同格のレティシアやリーンハルトに砕けた口調で話しかける。


「見ませんでした。どうかしたんですか?」

「いや、朝、近隣の村に見回りを頼まれて出たんだが、まだ帰ってきていないんだよ」

「え? 村は近くなんですか?」


 心配になり身を乗り出す。


「そのはずなんだが……」


 ロベルトの言葉に不安を覚えた。


「どなたかと一緒に行ったのではないですか?」


 討伐隊は最小でも二人一組と聞いている。


「基本はそうしているのだけれど。生憎、みな出払っていて。ほら、人数が足りないだろう? よくあるんだ」

「それで、どちらの方向へ?」


 レティシアが矢継ぎ早に質問する。


「東の方へ。リーンハルトは強いから、そんな心配しなくても大丈夫だよ。夕方までには帰って来るさ。余計なことを言ってしまったね」


 ロベルトが眉尻を下げる。


「いえ、リーンハルトなら、しっかりしているし強いから大丈夫だと思います」


 レティシアは落ち着いて返事をする。


 しかし、リーンハルトは夕方になっても戻らなかった。


 リーンハルトに渡したアミュレットから自分の魔力をたどればきっと彼を見つけられる。



 ――絶対に私があなたを守るから。





 レティシアはマントを羽織り、剣を携え携帯食料を持って営舎を出た。野宿できるだけの装備は持っている。リーンハルトを探すつもりだ。


 営舎では心配をかけないように。今日は疲れたので早めに休むと夕食もそこそこに、部屋へ引っ込むふりをした。


 そして、営舎を抜け出した。

 この辺境の森は朝晩冷え込む。陽が落ちると風の冷たさが身に染みる。そのときレティシアはかすかな魔力の痕跡を見つけた。


 近くにいるはずなのに……。気持ちばかりが焦る。けがをして動けないのだろうか。最悪のことは考えないようにして、ただひたすら東の村を目指し、自分の魔力の欠片を追う。


 途中、ガルムの遠吠えが聞こえたが、恐ろしいと思う気持ちも麻痺するほどにリーンハルトが心配だった。



 夜も更けて息が白くなるほど冷えた頃、遠くに火影がちらちらちらと見えた。

 きっとリーンハルトだ。レティシアは走った。


「リーンハルト!」


 ガサリと落ち葉がなり、火影に彼の姿が浮かぶ。


「レティシア! どうしてこんなところに」


 駆け寄るとリーンハルトが驚いていた。しかし、彼は立ち上がれないようだ。

 

 どこかケガをしているのだろう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] もう3回読んでます 読み返してみると19.20話の闇魔法で呪って解決しようとして胸が高鳴ってるレティシアが馬鹿可愛くて面白いです クールで冷たかったリーンハルトが、ここにきてレティシア…
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